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 平成も残すところあと半年。「平成最後の○○」という言葉をよく耳にするが、昭和~平成と時代が過ぎゆく中で目にすることが少なくなってきたものの1つが「ヤンキーファッション」だ。爆音を轟かせて走っていた暴走族も見かけることはなくなり、今見かけるのは田舎の成人式ぐらいだろうか。当然ヤンキーが減れば、ヤンキーファッションもなくなる。

 と思いきやここ数年、グッチやサンローランなどの名だたるハイブランドがヤンキーテイストを取り入れたコレクションを発表している。さらに、多くの芸能人がヤンキーファッションに身を包んで踊ったり雑誌の表紙を飾ったりと、ヤンキーファッションがちょっとしたブーム(?)になりつつある。

 横浜のバイクショップでヤンキーファッションに身を包む、現役とは思えない男性たちに理由を聞くと、「なんだろうな…自分たちの存在を示すっつう」「俺らもやっぱ目立ちたいから!俺はこういう思いなんだっていうのも体で表現するため」との回答。昔の栄光をもう1度、ということなのだろうか。最近では旧車會なるものを組んで、元ヤンの方々が走り回ることも多いようだが、「昔はいっぱいいたし。今はもういないから…寂しいっすよね」とさまざまな思いがあるようだ。

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 ヤンキーファッションを愛する親子もいる。お母さんは「BUSTA」の社長でデザイナーの女組(めぐみ)さん。息子の龍儀くんも、8歳にして完璧なヤンキーファッションだ。女組さんは若かりし頃からヤンキーファッションが大好きで、その影響を受けた龍儀くんも「格好良くてすごく気に入っている」という。女組さんは龍儀くんにイケているヤンキーファッションをして欲しいと、自らデザインまで手がけている。「この子の服を選んでいたらかっこいいもの、子どもに着せたいなと思うのがなくて。ないんだったら自分で作っちゃおうかなと思ったのがきっかけ。そうしたら大人の方にも『それかっこいいね』『大人のサイズはないの?』みたいな感じで言われた」。

 女組さんはデザインや洋裁の勉強をしていたわけではなく、やり方はすべてグーグル検索。ヤンキーファッション愛が止まらず、「BUSTA」という専門ショップまでオープンさせた。他のヤンキーファッションとの違いについては、「ありきたりな『天上天下』『喧嘩上等』とかはあまり使わないようにしていて、自分で造語を作ったりして普通にはないものを作っている」と語る。

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 女組さんはこの辺りでは有名人だといい、「BUSTA」の洋服は地元のスタンダードファッションとして人気があるそうだ。「BUSTA」着用者にデザインの魅力を聞くと、「やっぱこのキラキラと文字の濃さと、全体的に誰が見ても分かるところ」という声があがった。

■ヤンキーファッションに及ぶ“多様化”

 ヤンキーファッションをさらに深く知るため、伝説のヤンキーバイブル雑誌『チャンプロード』の広告でお馴染み、業界最大手のプロス株式会社を訪れた。

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 一代で「プロス」を築いた、ヤンキー業界で知らない人はいないという社長の米澤章雄さん。一番いい時の売上げを尋ねると、「東京で3億~4億ぐらい売り上げていたけど、特殊衣料になってからは大したことない。今はもう食べるのがやっと」だという。ヤンキーファッション界の現状については、「もう全然ですよね。今の若い子はどっちかというと草食系の男の子が増えちゃった。注文で電話をかけてくるのは本人だけど、『ちょっと待ってー』と言って(電話を)代わったのが母親で、横にいる息子の声を聞きながら商品を発注するというようなこともある。自分から進んで自分の作りたいものをアピールするということをなかなかできない男の子が増えているような感じがする」と嘆いた。若者のあり方も変わり、本家本元の「プロス」もそこまで潤っているわけではないようだ。

 ヤンキーも普段は普通の格好で、体育祭、卒業式などのイベントに着ていくのが現在のスタンダード。その他に、結婚式の余興やアイドルの応援衣装、ハロウィーンなど、ネタ的に使われるようになってきたという。

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 米澤さんいわく“ヤンキーファッションの多様化”。売上は少々厳しそうだ。

■作った服が棺桶に…人生に触れる服づくり

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 なぜヤンキーファッション商売を続けるのか。答えを求めてやってきたのは、大阪堺市にある翔企画。ここではコンピューター刺繍を導入しており、店長の加納信一さんは「こんな形で入れて欲しいと言われたら、そのデータをパソコンで作って、入力して色を変えて位置を合わせれば画像と同じものがずっと打てる」と話す。

 以前は匠の技が活かされていた刺繍だが、今ではそのほとんどがコンピューター制御。しかし、技術が変わっても変わらないものがあるといい、それこそがヤンキーファッションを作り続けている理由だという。

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 「印象に残っているのは、ウチで(服を)作ってくれたお兄ちゃんが亡くなって、お葬式とお通夜にも行かせてもらったら棺桶にその卒業式の服が掛けてあった。『うわ、そこまで思って着てる子らもおるんや』と、思ってるより責任重大やぞと思った」(狩野さん)

 単なる“洋服”ではなく強い“想い”がある。だからこそ、加納さんは日々心をこめてヤンキーファッションを作っている。

 そしてこの日も想いを持った若者が1人。デザインについてはかなり悩んだといい、背中には学校の名前と昇り龍、詩には親への感謝を入れるという。

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 人の人生に触れることができる服づくり。たとえ商売が厳しくとも、やめることはできないという。加納さんは「まだこんな店あんのとかこんな刺繍まだあんのとか、こんな服着ている子まだいてんのとか言われるけど、やっぱり続けな。あっても良かったなって後からなるよりも、伝統芸能になるまでやろかなと。外人の人とか着たら『かっこいい、かっこいい』ってすごく褒めてくれる」とヤンキー服作りへの思いを語った。

 様々な想いが込められているヤンキーファッション。なぜここまで人々を魅了するのだろうか。

■「ヤンキーは悪で単純。だから見たくなる」

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 ヤンキーファッションの歴史を振り返ってみると、それぞれの時代を象徴するものがある。

【60年代】番長:バンカラスタイル。

【70年代】暴走族:右翼団体が着ていた隊服を取り入れる。右翼系が主流

【80年代】ツッパリ時代:『ビー・バップ・ハイスクール』大流行。ボンタン・短ラン・リーゼント

【90年代】チーマー登場:アメカジファッション

【00年代】カラーギャング:チームカラーで統一したファッション ビーボーイ:『Men’s egg』モデルのような派手ファッション。ストリート系

【現在】悪羅悪羅(おらおら)系:エグザイルが筆頭。短髪、黒髪、肌はしっかり焼く。ブランド物ジャージにハイブランドアクセ

 現在、あからさまなヤンキーを目にすることはなかなかないが、青少年不良文化評論家の岩橋健一郎氏によると「ヤンキーファッションをしている連中は少ないが、そもそもヤンキー=悪、不良少年。不良ファッションは一般化してないけど、不良少年、ヤンキーの気質を持っているやつはうじゃうじゃいる。格好は普通の方々と変わらない。わからない」という。

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 ヤンキーがファッションを統一することには、チームや徒党を組んできた流れがある。今もアーティストやアイドルのファンが特攻服を着る姿も見られるが、そうした“親衛隊”について岩橋氏は「本当にアイドルを守る。昔の時代でいうと横浜銀蝿とかアナーキー、中森明菜とか小泉今日子とかには、特攻服を着た現役暴走族が行って『俺たちが守るぞ』と。その辺りから始まっている」と経緯を語った。

 また、ヤンキー文化のリバイバルは経済効果も伴い、題材とした作品は数多い。映画は『クローズZERO』『HiGH & LOW THE MOVIE』、ドラマは『今日から俺は!!』『クローバー』、漫画は『ドルフィン』『デメキン』などがある。

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 なぜヤンキーを題材にしたものが売れるのか?岩橋氏は「不良ってまず目立つ。確実に数字を持っている。だから結果を出しやすい。部数ないし視聴率ないし、根強い物を持っている。『悪』が基本にあって、悪いものをなんで見たがるかって言うと、自分の警戒心を高めるため。明日は我が身にならないためっていうことで常に意識している」と指摘。時代が変わっても愛される理由については「要は単純。やったら捕まることが分かっていても、『やりたい』っていう欲求が先に出ている。でもそういう人間って周りにいないから、見たくなるし、みんな注目する」と述べた。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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