誰もが予想していなかったスーパーカードだ。11月5日、RIZIN大晦日大会の記者会見が開催された。そこで発表されたのがフロイド・メイウェザーJr.対那須川天心である。
(対戦が決まったメイウェザーと那須川。ほとんどシュールと言ってもいい2ショットだ)
メイウェザーは現在のボクシング界で最大のビッグネーム。キャリア50戦無敗、5階級制覇を成し遂げ、またスポーツ界で最も稼ぐ男でもある。
昨年、復帰するとMMAファイターのコナー・マクレガーとボクシングで対戦。そして今回、プロとして初めてのアメリカ以外での試合に日本のRIZINを選んだ。そこでRIZINが「この男しかいない」と用意した相手が“神童”那須川天心だったのである。
会見で配布された資料には「スペシャルチャレンジバウト」とだけ記されており、ルールや契約体重はまだ未定。
この点に関して、メイウェザーは「これから数週間かけて話し合う。RIZINがいい考えを持ってるはずだ」とコメント。対する那須川は「ボクシングでもいいです」と語っている。
榊原信行実行委員長によると、MMAでの対戦はないとのこと。あくまで立ち技、打撃ルールでの対戦で、その中でたとえば蹴りが有効か禁止か、有効だとしてどこまで認めるかなどをこれから詰めていくことになる。
パンチのみで闘うルールになる可能性もあるが、それも「ボクシングルール」とはならないようだ。コミッションが認可した公式戦ではないし、バックブローを有効とした時点で、それは厳密な意味での「ボクシングルール」ではなくなるというのが榊原氏の見解。また体重差もあるため、グローブハンデなども考えているようだ。
とにかく何から何まで未知数。ただし「ヘッドギアをつけて、大きなグローブでとはならない」と榊原氏は断言。RIZINが目指すのはあくまで“果たし合い”だ。
当然、この試合は世界中のボクシングファンからも注目されることになるだけに、那須川は「拳ひとつで世界を変える」と意気込む。さらにメイウェザーの印象を聞かれ、オーラを感じるとしながらも「パンチは当たりそうだなと思います」。
この言葉にメイウェザーは笑いながら拍手。あくまで余裕を見せたが、心理戦が始まっているとも取れる。
「ナメられてるのは分かってます。でも気負わずいける」と那須川。パンチという相手の土俵で闘い、その上でキックボクサーとして「ボクサーにはないタイミングや打ち方、軌道を使って」勝ちにいくという。スポーツの常識で考えれば、これは無茶なカード。しかし那須川は本気で世界を変えようとしている。
文・橋本宗洋