
NHK連続ドラマ『半分、青い。』のブッチャーこと西園寺龍之介役や、現在放送中の日本テレビ系列のドラマ『今日から俺は!!』で太賀演じる今井の子分役を演じるなど、話題作に続々と出演し強烈な印象を残しているブレイク中の俳優・矢本悠馬。そんな彼の最新作が11月23日より公開中の映画『レディinホワイト』だ。
そんな彼は、今回生意気な新入社員・如月彩花(吉本実憂)には舐められ、パワハラ全開の上司・松山翔平(波岡一喜)からは罵られ、常にオドオドしながら他人の顔色をうかがい、損な役回りばかり引き受けてしまう従属性毒社員・猪瀬康太を演じる。猪瀬役に共感しつつも実際は「間逆の性格」と語る矢本、そんな彼に作品について、今年の活躍について話を聞いた。
求められたのは「嘘がない芝居」

――最初に台本を読んだ印象はいかがですか?
矢本: 脚本を初めて読んだときは、この作品のテンポとリズムがハリウッド女優のレイチェル・マクアダムスのようなキュートでポップな女の子が、仕事につまずきながらも成長していく、頑張る女の子のサクセスコメディのようなものを想像していました。ただ大塚(裕吉)監督が、「そうはしたくない」と。コメディよりもリアルさを求めていたので、そこのギャップはありましたね。そのギャップを埋める作業から始めました。
――具体的にはどうやって埋めていったのですか?
矢本: 僕は、長らくストレートプレイ(台詞に音楽などを用いない会話劇、いわゆる一般的な舞台演劇)をしてこなくて、役のキャラクターをもっと引き出していくこと、矢本悠馬にしかできない表現を出すことを目標にしてきました。ストレートプレイであっても、その上に矢本悠馬の個性を乗っけて、その役を面白くしていく。いわゆる足し算方式で役を演じてきたのですが、今回はどちらかと言うと、個性というよりもう少し基礎的な部分を求められていたので、芝居に嘘が付けなかったですね。
こういう言い方すると誤解を受けるかもしれませんが、誤解を恐れずに言うと、ある程度役者をやっていると、現場によっては多少芝居をごまかせるところもあって(笑)。でも今回はとても基礎的な部分が大事だったので、手が抜けない、嘘がつけない、そんな緊張感がありました。
銀杏ボーイズの『青春時代』に影響を受けた青春時代

――矢本さんが演じられた猪瀬というキャラクターは、新人にも舐められ、上司からもパワハラを受け、とにかく謝ってばかりいる中間管理職のような役柄で観ていて辛い部分もあったのですが、観客からすると一番共感できそうなキャラクターだと思いました。
矢本: そうですね。ただ、僕はもともと性格的には猪瀬くんとは対極にいるタイプだと思います。中高生のときに、銀杏ボーイズの『青春時代』という曲に「なにかをやらかしてみたい」という歌詞があるんですが、この言葉に影響を受けて、今思えば「何かでかいことをやらかしたい!」という根拠のない自信に満ち溢れている青春時代だったと思います(笑)。
僕は会社に勤めたことがないので、猪瀬くんの気持ちがわからなくて、だって役者の現場は、自分が間違えれば自分で謝りますが、他の人がミスしたら僕は謝ったりはしないので。でも猪瀬くんは真面目に淡々と仕事をしているのに、上司のミスも新人のミスも自ら謝りにいって、でも大っぴらに不満を言うこともなく、置かれている環境にまるで疑いを持っていないんです。でもふと、昔こういう人クラスにもいたな、と。意外と身近にそんな人たちがいるなと思って、そこに気付いてから猪瀬くんのこと少し分かるようになって共感ができました。
友人の柳楽優弥に結婚相談!?

――今年、朝ドラ含め多くの作品に出演されましたが、今年を振り返ってみていかがですか?
矢本: 今年は、『半分、青い。』のブッチャー役も来年公開が控えている映画も、父親役をやり始めましたね。実は子供が少し苦手だったのですが、現場では意外と楽しく遊んだりして、そんな新しい自分を発見したりして…、家族が欲しくなりましたね(笑)。
僕はずっと自分をパワーアップさせるようなものが必要だと思っていて、若いときはそれこそ守るものが何もないので、わりと尖っていたところもあって。23~24歳くらいのときかな。でもそのおかげで、ひとつ自分の芝居のレベルが、グッと上がった瞬間というのが確実にあったんです。
でも今は、ちょっと階段がゆるやかになってきて、今自分自身をパワーアップさせるためには、何がか必要なんだろう?て考えて、それは何かを守るための強さなのかな、と。仲の良い役者で柳楽優弥くんがいるんですけど、彼はもう結婚して家庭がある。 そんな彼を見ていると、僕と圧倒的に違うのが、ここぞ!というときの勇気というか、彼の後ろに彼の家族が見えるんですよ。「この仕事で絶対稼いで食わさなきゃ」みたいなすごいパワーがあって、このパワーには僕は勝てないんじゃないかなと思いました。そういう意味でも結婚して、守るものが欲しいと思いました。
制服役にも意欲「説得力がある間は演じ続けたい」

――年齢的なところでも結婚を意識されたりは?
矢本: それはありますね。それこそ2年前までは、結婚なんて想像できなくてまだ遠い未来の話だと思っていたんですが、今年になった瞬間に、「今年28歳になるのかー」て実家でふと声に出して呟いたんですよ。その時、にちょっとびっくりして!「え? 28!?」みたいな(笑)。28は27とは違う、もう30歳に近いので「もう30歳か」みたいな感覚になりましたね。それで父親役のオファーがきたり、柳楽くんから影響を受けたりして、結婚したいなと。柳楽くんも「結婚しないの?」とかめっちゃ煽ってくるし、でもたまに僕からも「そもそもどういう経由で結婚するの?」って相談もします。(笑)。
――そうなんですね(笑)。今後の父親役、楽しみにしています!
矢本: でもありがたいことに制服役もまだオファーをいただけるんです。制服役はもうさすがにキツいかな?と思ったこともあったのですが、twitterとかで「もう無理」とか言われたらやめようかな(笑)。説得力がある間だけは制服役も演じ続けたいと思います。
――そちらも楽しみにしています!ありがとうございました。

映画『レディin ホワイト』はユナイテッド・シネマ アクアシティお台場、ミッドランドスクエアシネマほか全国順次公開中
(C)テレビ大阪サービス
取材・テキスト:編集部
撮影:野原誠治
スタイリスト:市野沢祐大(TEN10)
シャツ/バージスブルック(プーオフィス) vintageのダメージニット/キャロル ラインパンツ/ラッピンノット(HEMT PR) スニーカー/スタジオ ニコルソン(キーロ) ソックス/スタイリスト私物
ストーリー

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