11月9日、年間屈指のインパクトとともに「ALL DOIN」なる大会が新木場1st RINGで開催された。
(メカながら抜群のカリスマ性を誇るメカマミー)
これはDDTの高木三四郎大社長が「最近のDDTには“どインディー”が足りない!」として、総選挙用ユニット「豚ing2018」の新メンバーを募集したことからスタートしたもの。
現在、全国各地に学生プロレス、社会人プロレス、草プロレスといった、「プロではないプロレス」の舞台が数多くあり、選手がいる。学生プロレスから本当のプロになる選手も多いが、それぞれの地方で独自の個性を発揮している団体も。分かりやすい正統派、実力派ではなくとも、プロレスではさまざまな形で個性、アイディアを披露することができる。話題のアンドレザ・ジャイアントパンダを輩出した新根室プロレスも、北海道のアマチュア社会人プロレス団体だ。
“文化系プロレス”と呼ばれるDDTも学生プロレス出身者が多く、どインディーとは切っても切れない縁がある。インディー最大規模の団体となり、サイバーエージェントグループ入りしてさらに世間にアピールしようという今だからこそ、どインディー魂を失ってはいけない。そんな思いから実行委員会が組織され「ALL DOIN」の開催となった。ちなみにアメリカの興行「ALL IN」との関係は定かではない。
好事家としか言いようがない人々で埋まった新木場1st RING。そこで展開されたのは、プロ、学生、社会人が混在する闘いだった。セミファイナルはMEN'Sテイオー&HARASHIMA&&翔太のプロチームvsエリリン高木&ONAKIN&モンスターハロウィン。実行委員長でもあるテイオーは学生プロレスからプロ団体への道を開拓した先駆者であり、HARASHIMAも翔太も学生プロレス出身だ。
しかもエリリン高木とHARASHIMAは学生時代の先輩、後輩の仲。同時期にリングに上がっている。またONAKINは彼らの後輩で、現役の学生。それぞれ立場は違うが、この大会では「現役学生も加えた同窓会マッチ」が実現できてしまうのだ。DDTのトップ選手と現役の学生プロレスラーが対戦するのも「アリ」だと考えるのが大社長。曰く「草プロレスでも社会人プロレスでも学生プロレスでも、プロレスと名がついてお客さんがいれば、それはプロレス」。
(サイリウムマッチでは観客が配られたサイリウムを投げ込み「映(ば)える」光景を演出)
どインディー選手が大挙登場したのは「サイリウム100本無電流無爆破時間差入場バトルロイヤル」だ。ロープに蛍光灯のごとくサイリウムが括り付けられ、選手がロープに振られると折れて発光。サイリウムチャンバラ、観客席からリングへのサイリウム投げ込みなど異様にテンションが高い「出し物」が展開されていった。メントスコーラ攻撃、大量のサイリウムを釘状に立てたサイリウムボードと、体以上に何かを張った試合っぷりで、高木が呪殺される場面も(その後、何事もなかったかのように復活)。
(サイリウムボードに打ち付けられるヘン・チーナ。この道数十年のレジェンドだ)
メインイベントでは、西荻おざしきプロレスのぺろぺろ親方と5代目タイガーマスク(自称)が激突。筆舌に尽くしがたい、徹頭徹尾くらだらない中に異様なまでのアイディアが盛り込まれた闘いから、親方の「1、2、3、よーん!」で締め。今思えば親方の「ぺろぺろしちゃうぞ」というセリフがなぜああも面白かったのか、残念ながら説明ができない。これがどインディーの魔法なのか。
(5代目タイガー(自称)をペロペロするペロペロ親方。物販ブースで「アントーニオ本多選手」と呼ばれるも「アントーニオじゃない!」と否定)
また今大会では、インディープロレス史に残る名レスラー、2006年のプロレス大賞で話題賞を獲得したメカマミーが復活。サバイバル飛田に快勝している。
古典的怪奇派・マミー(ミイラ男)のメカ版というプロレス心とロボット愛、特撮魂のこもった存在であるメカマミー。序盤からドリル、ジェットスクランダー、ロケットパンチと「メカ」部分を存分に活かしつつ、勝負どころでは怪奇派らしくパウダー攻撃。そして最後は新兵器、磁石の力を使った「マッハドリル」を突き刺して勝利。察しのいい観客からは「ジーグ!」コールも発生していた。
この興行を「各勢力の頭のおかしい人たちが集まってきた」と表現した大社長は「久しぶりにデタラメなことができた。僕らは“誰一人まともじゃない”って世界で育ってきてるんで」と満足気。へそで茶を沸かした結果、沸騰してこぼれたような熱さのある興行はクセになること確実で、定期開催されていけば新たなカルトスターが世に出るきっかけにもなっていくだろう。
そしてその背景には、どんな形であれプロレスから離れられない者たちの人生そのものがある。それが熱を生み出す燃料なのだ。
文・橋本宗洋