![「テレビ番組は編集速度をアップしてみては」革命児・明石ガクト氏が提唱する「動画2.0」](https://times-abema.ismcdn.jp/mwimgs/a/7/724w/img_a7bcf3eb41df8e8ab6ee49744384a76f235859.jpg)
今年6月にはInstagramが「IGTV」で動画に参入、流行語大賞に「Tik Tok」がノミネートされるなど、誰もが"映像クリエイター"になれる時代がやってきた。テレビにとっては、1950年代にお茶の間に登場して以来の危機なのか。"動画業界の革命児"明石ガクト氏と動画の未来に迫った。
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ネット上にはタレントやアイドルから普通の高校生まで、自分で撮影・編集した動画がズラリと並ぶ時代。その到来を見越して「若者が欲するのは素人がつくる動画だ」と提唱してきたのが、明石氏率いる「ONE MEDIA」だ。独自の世界観で日々配信される動画は、若年層から圧倒的な支持を獲得する。
1982年生まれの明石氏は、学生時代から趣味で動画を制作、将来は動画クリエイターを夢見ていたという。「作った動画をDVDに焼いて配っていたが、就活時期にちょうどYouTubeができた。自分が作った動画を上げると、海外の人が"awesome"とコメントしてくれた。当時、映像産業は斜陽と言われていたが、やべえサイトができたぞ、これはもう世の中変わるぞと思った。もうDVDを焼いている場合でも、電波に乗っけている場合でもないかもしれないと思って、インターネット業界に行くことにした。でも、インターネット業界に動画という波が来るまで、えらい時間がかかった(笑)」。
そして2014年「いよいよ来るな、ここでやらないと後悔するな」と脱サラ。ミレニアル世代をターゲットに動画表現を追求する「ONE MEDIA」を創業。以来、独自の動画論で業界を牽引してきた。
■小川彩佳アナが「Premiere Rush」初挑戦
明石氏が「昔はテレビ局や編集所にある1000万円くらいの専用機器じゃないとできなかったことが、僕が学生の頃には50万円くらいの性能の良いパソコンを買えばでできるようになった時代だった。今はスマホでそれができてしまう。すごい。うらやましい」と話すとおり、家電量販店を覗けば様々な種類のスマホ用撮影機材が並び、映像制作業界とは無縁の人たちでも使える編集ソフトやアプリが数多く販売されている。
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「Photoshop」「Illustrator」などのクリエイター向けソフトで知られるAdobeも先月、新商品「Premiere Rush」を投入した。スマホやタブレットのカメラで撮影した映像をすぐさま編集、SNSへの投稿もシームレスに行える。「note」に投稿されたクリエイターたちからも、「とにかく操作が直感的でストレスフリー」「タイトルやキャプションは入れやすくてオプションも豊富。でも、動画切り替えのトランジションは種類少なくない?」と、なかなか好評のようだ。
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番組VTRを「Premiere Rush」で編集した安東ディレクターは「今までのクリエイター向けソフトに比べれば、あれが足りないこれが足りないという部分はあるものの、長尺の凝ったVTRではなく、数秒、数十秒の簡単なVTRを作るにはちょうど良いと思った」と話す。
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司会進行の小川彩佳アナウンサーも、竹内由恵アナウンサーらとスマホで動画を撮影。「Premiere Rush」を使って編集に挑戦した。「慣れないことだったので肩が凝ったが、だんだんコツがつかめてくると、"あれやってみよう!これもやってみよう!"と欲が出てきて、楽しくなってきた。慣ればサクサク作ることができた」と話す。
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■「インフォメーション・パー・タイム」が重要
小川アナが編集した動画を見た明石氏は、「最後の竹内アナを最初の3秒に持ってきたほうが良かった(笑)。ちょっと"インフォメーション・パー・タイム"が薄い」とコメント。一般人が出演、発言と発言の間をカットして情報を詰め込んだ「ONE MEDIA」の動画を元に、次のように説明する。
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「インフォメーション・パー・タイムと呼んでいるが、時間あたりの情報量を多くしている。同じ尺なのに情報量が多いと感じるのは、"えー"とか"うー"という間を極端に削ぎ落とす編集をしているから。"ジャンプカット"といって、YouTuberが活用する編集方法の一つ。テレビは現実の会話と同じペースでリラックス感を得られるように作るが、スマホで動画を見る場合は電車を待つ2分間とか、トイレで踏ん張っている1分。そういう隙間に見るものを普通のペースで作ってしまうと、内容が追いつかない。また、喋りの速さだけではなくて、ビジュアルの情報量も多くしている。マッチングアプリのTinderで、"この人あり・なし"を判断する時間は平均0.7秒だと言われている。0.7秒で将来の恋人を判断する時代なので、テロップをテンポ良くどんどん早く出しても若い子の処理スピードだったら追いつける」。
さらに「ONE MEDIA」では、ミレニアル世代の共感ポイントとして"当事者性"を重視しているという。
「アナウンサーは読みのプロフェッショナルかもしれないけれど、当事者ではない。どんどん個人の情報発言力が強くなり、メディア化している中で、たとえば教育問題の話をするとき、その人が本当に関心を持っているのか、若い子は見抜く。だから就活の真っ只中にいる子とか、恋愛に悩んでいる子が話している」と話す。
■テレビは"お客様の声"みたいなものに惑わされているのではないか
「ONE MEDIA」の発想とは違い、視聴者数の多い高齢者に合わせるため、テロップは見やすく長く、カット、ナレーションはゆっくりを心がけている今のテレビ。明石氏の理論に基づけば、若者のテレビ離れはさらに進むのではないか。
明石氏は「僕はテレビ番組を1.2倍の速度で見ているが、そうすると日テレは速すぎて追いつけない。ということは元々の編集が速いとうこと。そうすると、日テレが好調なのはスピードも影響しているのかもしれないし、高齢者の情報処理速度はこのくらいだろうとか、"お客様の声"みたいなものに惑わされているのではないか。そういうのを一度捨てて、今の時代に合わせたスピードでやってみてもいいのではないか。俺のオカンも60歳を過ぎているが、iPhoneを使って情報を摂取しているうちに、情報処理速度が上がっていると感じる。鶏が先か、卵が先かの話なので、こうだと決めつけず、ガンガン実験をやっていくことも必要なのでは」と提言。「たとえばAbemaTVはテレビ的な長いコンテンツ作っているが、『格闘代理戦争』で青木真也さんが急にタックルしかける場面があった。AbemaTVは放送後にそこだけを切り取ってYouTubeにアップ、30万回くらい再生されている。長い尺であれば、そういう動画的なフッテージも作れる。つまり、メディアを作る上で一番大切な、素材の調達もどんどんできるという意味で魅力的だ」と指摘した。
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さらに、映像制作業界のプロの存在価値についても「アマチュアでも動画が作れるんだったら、プロの仕事がなくなるとか言われているが、そんなことはない」と断言。「たとえばライターの人たちの待遇が良くなってきている。昔はものを書く人が発表できる媒体は限られていたし、仕事がコネクションで埋まってしまっていたから。それがインターネットのおかげで自由競争になったし、いいプレイヤーというのは限られているので争奪戦になってくる。つまり、裾野が広い方が頂点が高くなる。動画もアマチュアが大量に現れるが、相対的にプロ中のプロの価値は上がっていく。逆に言えば、"なんちゃってプロ"の仕事がなくなるかもしれない」との見方を示した。
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動画とテレビの未来について"バラ色だ"と話す明石氏。「今から5G、8Kになって、人が場所に縛られない時代も来る。そうすると、みんな暇になる。暇になった時に必要になるのはコンテンツだ。みんなでいいものを作っていけば、いい時代が来るはずだ」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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