「ライザップを信じてご期待をいただいた皆様の期待を大きく裏切る結果となってしまいました。この場をお借りしてお詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした」
RIZAPグループのトップ・瀬戸健社長は14日、都内で行われた決算説明会で深々と頭を下げた。ライザップといえば、肉体改造に成功したタレントのビフォーアフター映像に「結果にコミットする」というキャッチコピーを使用したCMでおなじみの企業。瀬戸社長は24歳の若さで会社を立ち上げ、RIZAPグループを売上1000億円超の巨大グループへと成長させたが、この日は今期業績予想を下方修正し赤字転落を発表した。
赤字転落の大きな要因として瀬戸社長が語ったのは、M&A(合併・買収)。「この1年2年は、本業に加えて成長のための手段としてM&Aを積極的に行ってまいりました。大きく社数を増やしましたが、見通しが甘く、大きく下方修正を出す結果となってしまいました」。積極的なM&Aで業容を拡大してきた経営手法が裏目に出た形となった。
今後の方針として瀬戸社長は、「新規M&Aの原則凍結」「グループ企業の経営再建の早期完遂」「成長事業への経営資源集中」などを明らかにしている。赤字転落の見通しが発表された翌日、RIZAPグループの株には売り注文が殺到し、株価は2日連続でストップ安をつけた。
会見では、同席したナンバー2の松本晃代表取締役が瀬戸社長に苦言を呈する一幕もあった。「面白そうなおもちゃなんだけどちょっと壊れてるんじゃないの。壊れてるやつはちゃんと修繕していかないとこのあと困るんじゃないかと。会社の経営が順調とか、良いとか悪いに関わらず、違う会社を一緒に入れてしまうというのは、それはおかしいんじゃないのと」。
前カルビー最高経営責任者で“プロ経営者”として知られる松本氏は、今年6月にライザップに迎え入れられた。この日の会見では、一部メディアで報じられた経営陣と松本氏の対立についても触れ、「私と瀬戸さんが対立というのは一回もないです。私と経営者との対立というのは存在します。ただこの対立というのは『健全な対立』で、会社の中で対立というのは必要です」と述べた。
成長のためのM&Aが、なぜ赤字の要因になってしまったのか。社会起業家の牧浦土雅氏は、同グループが多くの企業を買収してきた経緯について、「結果より買収にコミットしすぎた。企業が買収をする目的のひとつに『時間を買いたい』ということがある。同業者を買うことですぐに競合を取り入れることができるが、RIZAPの場合は本業の健康産業とはバラバラな企業を買収していて、それが仇になった」と指摘する。
また、通常のM&Aでは良い会社を買収するがRIZAPは違ったといい、「良い会社を買収する時は、その企業が本来持っている価値よりも高値で買う。その差額は“のれん代”といって、一時的に買収する企業の経営を圧迫する。RIZAPの場合はその逆の“負ののれん”といって、買収額がその企業の価値を下回るケース。国際財務報告基準(IFRS)ではその差額が営業利益として上乗せされるので、M&Aをした分だけ経営がうまくいっているように見えていた。今期の営業利益の6割ぐらいが負ののれんによるもの。M&Aのスピードに再建が追いつかなかった」と説明した。
では、今後RIZAPグループは変わるのだろうか。それには松本氏の存在が重要だとし、「ようやくこういう人が来たなという印象。ナンバー2としてコンサルあがりのイケイケな30代みたいな人がきたら、今の経営陣とはもっと対立していたと思う。反対意見を言えるアウトサイダーの松本さんが入ったことは大きくて、ライドシェア世界1位のウーバーもオバマ政権で顧問を務めたプロフさんが上級副社長に座って、政府との間に立ったことで規制緩和が進んだ」と説明。松本氏が語った「健全な対立」については、「会社でも国でも、イエスマンだけがいたらそれが成功だと思い込んでしまう。そこで『ちょっと立ち止まって考えた方がいいんじゃないか』と言える人が現れる方が健全で、こういうケースが今後日本で増えていくべきだと思う」と訴えた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)