路上プロレスをはじめとするDDTの名物企画の中でも、とりわけバカバカしさで群を抜くのが「野郎Z」だ。
(キャメルクラッチにかかったまなせに、レフェリー今成はローアングルで「ギブアップ?」。凄まじい目の輝きだった)
これは男性客限定イベントで、11月14日に新木場1st RINGで7回目の大会が開催された。昨今は女性ファンが増えているプロレス界だが、異性の存在を気にせずにプロレスを楽しもうという趣向だ。ちなみにDDTには女性客限定大会もある。
女性の目を気にしなくてもいい大会となると、不思議なことにイベントの知能指数とでも呼ぶべきものがどんどん低くなっていく。それもまたDDTらしさなのか。
オープニングでは「夕やけ」「ニャンニャン!」「鶴ちゃんの」「プッツン5!」といった、男性限定というより世代限定のコール&レスポンスが展開。また今大会では高木三四郎&アブドーラ・小林vsトランザム★ヒロシ&飯野雄貴のFFFマッチも。なんの略かというと「Fundoshi For Future」で、要は全員ふんどし着用である。
(男の祭りには欠かせないのがふんどし。カレー攻撃で勝った高木とアブ小は会心のガッツポーズ。試合後のアブ小はカレーを食べに行ったという)
この試合、速攻で両者リングアウトに終わると再試合を実施することに。しかもエニウェアフォール、公認凶器としてカレーの使用が認められた。というわけで敗れた飯野はふんどしを巻いた尻がカレーまみれとなり「なんか漏らしたみたいだろ!」とツッコミが入る地獄絵図。
そんなスパイスの効いた試合で会場の温度も上がっていったわけだが、「野郎Z」にもう一つ欠かせないのが女子レスラーとグラビアアイドルだ。「プ女子を気にせず男だけで盛り上がろうぜ!」と言いつつ、やっぱり女性にいてほしい。そんな男の哀しさも感じさせるのが「野郎Z」なのだった。
まなせゆうなvs有田ひめかは注目の初対決だったが、特別レフェリーに名乗りをあげた今成夢人(DDT映像班、ガンバレ☆プロレス所属レスラー、デブカワNIGHT審査員)が選手の胸を凝視し、ストンピングには自ら踏まれにいき、投げ技のブリッジの下に潜り込むセクハラレフェリングを展開。「ぽっちゃりの女性はどこを触ってもおっぱいの感触なんだ!」と熱弁を振るったが、最終的にはのの子(元・東京女子プロレス)も加わってボコボコにされる。
(急にラウンド制が取り入れられるのも「野郎Z」恒例。ラウンドガール・橘花凜をとにかく下から見上げたがる男たち)
グラビアアイドルがラウンドガールを務め、ラウンドが進むごとに着ているものを脱いで水着になっていくのも恒例の試合形式。今回のラウンドガールは橘花凛だったが、やはりいつものように大石真翔ら「モテモテ軍」に捕われてしまう。
メインの6人タッグマッチで樋口和貞&大鷲透&SAGATの野郎Z軍がモテモテ軍に勝利。大石の妻である大畠美咲が「ウチの主人がすいません」と橘花を救出したものの、エンディングでは女性陣が揃って「モテモテ軍の彰人さんがタイプ」と言い出し、野郎Zたちはギャグ漫画レベルの大ズッコケ。
「いくら頑張ってもさぁ、結局は顔なんだろ?」
(「ただしイケメンに限る」と思い込む非モテの悪い癖をのの子が一喝。全員に張り手を見舞って大団円)
途方にくれるしかない野郎Zたちだったが、そんな彼らを「だからモテないんだ!」と一喝したのがのの子。「顔じゃない、心だろ! 愛だろ!」ということで、のの子が東京女子プロレス時代に組んでいたユニット「婚勝軍」のテーマ曲でもある「愛は勝つ」大合唱で強引な大団円となったのだった。
のの子の言葉を冷静に省みると、野郎Zたちの見た目よりもむしろ内面のほうが問題にせされているのだが、ともあれそんなダメさをさらけ出せるのも「野郎Z」の会場だけということでご容赦いただきたい。毎度バカバカしく切ない、男騒ぎの大会であった。
文・橋本宗洋