11月15日、アクトレスガールズ「Beginning」初の後楽園ホール大会が開催された。コンセプトは女優たちがプロレスで闘うリング。アクトレスガールズは選手たちの総称、Beginningは団体名となる。
(団体を牽引してきた安納が初代王者に。試合内容もファンを熱狂させるものだった)
「女優がプロレス」というと色眼鏡で見られそうだが、主催者発表で1380人の観客を集めたことは無視できない。後楽園初進出の記念大会ということはあるが、人気選手の引退(卒業)興行などではなく、ましてや平日にごくわずかな空席のみという集客は異例。それだけ、アクトレスガールズはファンに支持されているのだ。
実際、トップ選手たちの試合ぶりはどこに出しても恥ずかしくないものだと言える。中心選手の安納サオリをはじめ、選手たちは積極的に他団体に参戦して顔と名前を売り、また経験を積んできた。男子団体の興行にゲスト、提供試合で参加することもある。
女優、タレントとしての活動は文字通り“舞台度胸”を磨くことにもつながるだろう。技や体力はもちろんだが、選手たちが見せる表情や目の表現力も大きな武器だ。
(場外戦では観客が青ざめるレベルでイスを投げつけていった安納。華麗さだけでなく激しさもある試合になった)
この日のメインイベントでは初代王者決定トーナメントの決勝戦が行なわれ、安納が沙紀に勝利。雪崩式フランケンシュタイナーからのドラゴンスープレックスというフィニッシュの鮮やかさだけでなく、場外戦や張り手の打ち合いで見せた迫力も印象に残った。
大会のエンディングでは、沙紀を中心とした新団体「Color’s」の旗揚げも発表に。アクトレスガールズは今後「Beginning」と「Color’s」の2団体で活動していくことになる。
「(所属が)5人の時もあったのに、今日も新人がデビューして20人。団体も2つになります。もっと大きくしていきたいし、そのセンターは私でありたい」
自身のデビューと団体スタートから約3年半。“聖地”でベルトを巻いた安納はそう語った。彼女だけでなく、選手全員が未来を見据えて新たなスタートを切ったと言っていいだろう。
(セミでは高瀬と有田が未来につながる勝利)
大会ベストバウトにあげるファンも多かったセミファイナルでは、高瀬みゆき&有田ひめかが万喜なつみ&関口翔に勝利。退団が決まっている先輩の万喜から高瀬が3カウントを奪う、価値ある勝利だった。王者決定トーナメントで安納、沙紀に敗れた4人によるセミファイナルがメインに負けない盛り上がりとなったことも大きな意味がある。
万喜に影響を受け、プロとしての姿勢を見習ってきたという高瀬は、直接勝利に「恩返しができた」。敗れた万喜も「負けたのは悔しいですけど、このセミこそ未来のアクトレスじゃないかと思います」と手応えを語っている。他団体でも活躍中の高瀬はキャリア2年弱、関口と有田も同じく昨年デビューで、そんな“新人”たちが20分以上の大激闘を展開したのである。
(エンディングでは全選手がリングへ。来年から2団体制でさらに躍進を狙う。中央はプレーイングマネジャーの堀田祐美子)
「芸能人のプロレス」にも一流から五流まである。それが現在の女子プロレス界だ。アイスリボンや東京女子プロレスも含め、ビューティ・ペア、クラッシュギャルズの時代とも、90年代の対抗戦時代とも違う新しい流れが生まれている。アクトレスガールズ後楽園初進出は、新潮流を大きく加速させた大会としてファンの記憶に残るのではないか。
文・橋本宗洋