2019年1月4日の大一番、東京女子プロレス後楽園ホール大会のメインイベントは、山下実優vs伊藤麻希のTOKYOプリンセス・オブ・プリンセス選手権試合に決定している。“クビドル”伊藤がキャリア2年で迎えた最大のチャンスだ。
(王者・山下の蹴りでボコボコにされた伊藤。この時点でかなりのダメージを負っていた)
(C)DDTプロレスリング
挑戦者決定ランブルで生き残った伊藤は、山下に「お前の時代は終わりだ」と言い放つなど自信満々。勢いだけでなく実力面でも上回っていると感じていたようだ。
だが、伊藤はいきなり壁にぶち当たることとなってしまった。11月17日の新木場1st RING大会、ここで山下&天満のどかvs伊藤&ハイパーミサヲのタッグ戦が行なわれた。タイトルマッチに向けての前哨戦となる闘いだ。
ここで伊藤は、いつものように「世界一可愛いのは?」「伊藤ちゃん!」のコール&レスポンスとともに相手を殴る「世界一可愛いナックル」や頭突きなどを見せていった。動きのスピードや力強さは成長を感じさせるものだったと言える。
(フィニッシュは角度のきつい逆エビ固め。伊藤にとってはギブアップ=自ら負けを認めることも屈辱だ)
(C)DDTプロレスリング
しかし初代王者であり、今年1月に2度目の戴冠を果たすとベルトを守り続けてきた山下は、差を見せつけるようなファイトを展開。余裕を崩さないまま伊藤を弄ぶように蹴りまくる。そしてほぼKO状態となった伊藤に、山下は自分の得意技ではなく「あえて使いました」という逆エビ固め。
伊藤はギブアップするとしばらく立ち上がれず、インタビュースペースでも涙を見せていた。逆エビは伊藤の得意技であり、また新人の試合でフィニッシュになることが多い技でもある。「あえての逆エビ」は、伊藤に対する挑発であり、なおかつ「見下し」でもあったのだろう。
(のどかも実力を見せつけての勝利。山下は伊藤からアイアンマンヘビーメタル級王座を奪い、二冠王に(翌日、辰巳リカに奪われる))
(C)DDTプロレスリング
「伊藤に私のポテンシャルを見せつけることができた」という山下は、フィニッシュについて「一番悔しい負け方ですよね」。そして「伊藤がここからどう奮起するか。引き下がられたら面白くない」とも。1.4後楽園のタイトルマッチを充実したものにするためにも、ここで伊藤に現実を見せておく必要があったということか。この辺りは王者らしい大局的な見方だ。
(伊藤はリング上で悔し泣き。ここからどう巻き返すか)
(C)DDTプロレスリング
一方の伊藤は「今までにないくらい悔しい。山下実優のことが冗談抜きで大嫌いです。試合以外では顔も見ないようにします」と凄まじい落ち込みぶり。山下のパートナーだったのどかに対して充分な攻めができなかったのも悔しかったという。
「今日を最低(ライン)にして、あとは上に行くしかない」と伊藤。タイトル奪取の糸口を掴むことができるか、ここからが本当のタイトル奪取ロードのスタートとなる。王者・山下の壁はあまりにも強大だが、その前提からしか闘いを始めることはできない。
文・橋本宗洋