新日本プロレス「WORLD TAG LEAGUE 2018」、1月の東京ドーム参戦メンバーがエントリーされていないことからも、大混戦となっており、激戦に次ぐ激戦が繰り広げられている。そんな中、14チーム中もっとも下馬評が低いであろう海野翔太、吉田綾斗というフレッシュな若手によるタッグコンビに注目したい。
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海野は現在21歳、レフェリーの「レッドシューズ海野の息子」というプレッシャーに負けずにキャリア2年を駆け抜けてきた。一方の吉田は26歳と5歳年齢は上、キャリアも3年と先輩だが、KAIENTAI DOJOに所属しホープとして期待される中、新日本の若手登竜門イベント「LION’S GATE」でジュース・ロビンソンや永田裕志とのシングル戦などで一目される存在となった。
今年の6月に開催された「LION'S GATE」メインイベントで海野vs吉田は直接のシングル対決。この試合で外様の吉田に惜敗した海野は「絶対に負けてはいけない相手に負けた」と悔しさを滲ませた。そんな2人にタッグリーグ参戦というミッションを課した新日本プロレス。ヤングライオンとK-DOJOの次世代エースというプロレス界を今後背負って立つ2人の化学反応を期待しての起用だろう。
「ほとんど口を聞いたこともない」という海野と吉田だが、そのケミストリーの兆候は開幕戦で早くも見られた。11月17日の藤沢大会ではジュース・ロビンソンとデビッド・フィンレイの新日本留学生コンビとの対戦。海野がジュースへ高角度のドロップキックや垂直落下フロントスープレックス、吉田の気迫溢れる打撃戦、連携からジュースとフィンレーを相手に翻弄する場面が多くみられた。
最大の見所は、フィンレイへの逆エビを決めた海野をカットすべく仁王立ちするジュースに、静かに背後から忍び寄り脇固めと狡猾さをみせた吉田の好サポート。最大のチャンスだった海野の逆さ押さえ込み~ラ・マヒストラルをかわしたフィンレイのブラックジャックからの波状攻撃に、結果的に海野がカウントスリーと非常に惜しい敗戦。
続く、11月21日新潟大会では「越えなければならない壁」として立ちはだかる第3世代・天山広吉、小島聡のテンコジが相手だ。海野が防戦一方の場面で、全シリーズまでライバルだった吉田が大声で激を飛ばし、その声に海野が奮起する場面などタッグチームとしての絆も芽生えはじめた。
この試合では吉田がテンコジ相手に1人で奮闘、小島のチョップの連打からの「いっちゃうぞバカヤロー!」に速攻で立ち上がるタフな一面や、変わる海野がと吉田の流れるような波状攻撃から、海野の高角度ドロップキックという、1戦目と同じ連携の形も確立するなど、急激な進化を遂げた。
この試合でも海野が逆十字で小島からあわや一本という場面もありながらも、最後は小島のラリアットに撃沈。若手急増タッグのタッグリーグ公式戦初勝利とはならなかったものの、2試合連続で見応えある試合を見せてくれた。
試合後に海野は「必ず台風の目になってやる」、吉田は「良くも悪くも注目されていて、でも実際は予想通りかもしれないけど、結果がついてきてない。自分たちはこのままで終わるつもりないんで、ここからでも巻き返して優勝してやります」とあくまで強気な姿勢を貫いた。
一方対戦した小島も「すごくいい刺激をもらったなと思っている。はっきり言ってもっと当たり前に勝てると思っていた。全然当たり前じゃないよ、俺たち超ギリギリじゃないか。はっきりいって危ねえよ。あいつら一番強いチームかもしれないよ。」と2人を称え、天山も「若手だと思ってちょっと舐めた部分があったけど、あいつら若い割にやるよね。あいつらを足して俺らひとりの年にもならないけれど、でも若さというのは武器ですよ。いいコンビだと思うね。お互いが切磋琢磨してライバル関係でいいんじゃないですか。」十分すぎるほどヤングライオンたちの晴れの舞台でのポテンシャルを評価した。
対戦する全チームにとっては「単なる消化試合」「負けたら恥」ともいえるキャリアも経験も少ない2人だが、今後も次々と強豪ぞろいの総当り戦に挑むこととなる。まずは1勝に注目だが、試合ごとに急激に進化する最年少チームがリーグ戦をかき回す存在になることを期待したい。プロレスファンには連日強豪たちに立ち向かう海野翔太と吉田綾斗のコンビを覚えて応援してほしいところだ。