連日熱戦が繰り広げられている新日本プロレス「WORLD TAG LEAGUE 2018」。12月9日に優勝決定戦が開催されるが、追加カードとして、後藤洋央紀vs飯伏幸太のNEVER無差別級選手権が行われることが決定した。

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考えれば考えるほど奇妙なカードだ。ウィル・オスプレイの欠場により後藤とタイチのリマッチがなし崩し的に実現。再びNEVER無差別級タイトルを奪還し第21代王者に再び君臨した後藤が、王者としての明確な方向性も無いままに唐突に飯伏を次期挑戦者に指名。しかし、飯伏が全くこのタイトル戦線に興味を示さず、リングやツイッターを通して「却下します」と再三拒否する異常事態となった。タイトルマッチを挑戦者に拒否される王者はあとにも先にも記憶にない、珍現象といえるだろう。

本来、後藤洋央紀には、怪我で戦線を離れた柴田勝頼がかつて保持していたNEVERを継承するという大義名分があった。だからこそ鈴木みのる、マイケル・エルガンにタイトルを一度は奪われるが後藤が取り戻すという一連の流れにも一定のドラマ性を帯びつつ成立していたが、繰り返すうちにその大義が薄れていった。

そんな中、タイチが戴冠、そして自身の防衛街道から来年のG1へのエントリーのためだけにベルトを保持し「ジュニアとしか防衛戦をしない」と宣言。無差別級タイトル本来の流れとして門戸を開いたタイチの発言に希望を見出したファンも少なくなかった訳で、オスプレイや田口隆祐との防衛戦への期待値も高くNEVERに再び活気を取り戻すカンフル剤になり得ただけに、後藤の動向は、賛否両論はらみつつ次の一手が注目されることとなる。

しかしながら次期挑戦者指名に失敗。あとがない後藤が選んだのはツイッターを介した飯伏へのラブコールだ。本来ありえないチャンピオンが挑戦者候補にお願いするという奇妙なやり取りのなかで分かったことは、後藤がG1で飯伏に敗れたリベンジとして位置づけていること、これも全くもって伝わりにくい。

何度も飯伏に断られる中で元王者タイチのキツいコメントにも「初めてフラれたぜ。こんな俺に情けをかけるというのか?さすが同じベルトを愛した男よ」と、聖帝キャラのタイチに『北斗の拳』ネタで返す、これもまた全くもって細かすぎて伝わりにくいネタも織り交ぜ、ファンのネット上の暴言も意に介さず、ネットを覚えた荒武者が覚醒しはじめたのだった。

フラれ続ける後藤にチャチャを入れるタイチとのやり取りがリツイートされると、鳴り止まない通知音に逆上する後藤に、タイチが「通知オフにしろや!」とスマホの操作を教えるという謎の連帯感が生まれ、リング内でもバックステージでもないところでバズりはじめ静かな盛り上がりをみせるようになる。

一時は再三の要請を断られストーカー呼ばわりされ元気を失っていた後藤だが、11月18日後楽園大会の6人タッグで飯伏と対戦すると奇策にでる。試合後に「次のNEVER無差別級タイトルマッチ諦めるよ」「却下ばっかされちまって、俺わかったよ。悪かったな」と謝罪。あまりにも意外すぎる反応に飯伏が「ちょっと、ちょっと待って下さい。なんで、なんで諦めるんですか?やりましょう。」と試合を承諾してしまうこととなる。

後藤は「押してダメなら引いてみなって言葉があるけどね。こうもうまくいくとは思ってなかったですよ」と自身満々に語るが、この姑息さには荒武者キャラをかなぐり捨てた自由すぎる後藤の変化の予兆なのではないかと予想する。

ある意味、悲壮感すら漂わせながら飯伏幸太に挑戦者になってもらった後藤だが、初防衛戦にも向けた意気込みひとつなく、カルロス・ゴーン氏逮捕の報に「連日のニュースでミスタービーンが見たくなる。」「トレーニング後は温泉。これが俺の日課」と、天真爛漫なコメントを続けている。

後藤は飯伏へのラブコールを断られ続ける中でNEVERのあり方をこのように語っている、

「今やNEVERは誰がチャンピオンになっても、誰がチャレンジャーになっても不思議ではない。他のベルトとの差別化に成功したベルトだ。飯伏選手が何をしたいのか、他に戦いたい奴がいるのか?それはわからないが自由にやりたいんだろ?自由にやればやるほどNEVERの価値は上がる。他に無いぞ」

1.4東京ドームに向けIWGP戦線は、ケニー・オメガと棚橋弘至の「イデオロギー対決」と意気込む中、「自由にやりたい」という後藤洋央紀の戦いへのスタンス。大勢には全く伝わる気配はないが、モヤモヤっとした中にキラリと光る、通好みの価値を提供しつつあるのは確かだ。

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