東京女子プロレスの1.4後楽園大会でメインに登場、山下実優のTOKYOプリンセス・オブ・プリンセス王座に挑戦する“クビドル”伊藤麻希が戴冠に向け大事な1勝をあげた。

(山下の蹴りに耐え、頭突きを叩き込む伊藤。やはりこの技が勝負のカギになりそうだ)
(C)DDTプロレスリング
11月24日の成増大会、伊藤は愛野ユキと組み、山下&ヒカリと対戦。これは前哨戦第2ラウンドとなる試合で、前回のタッグマッチでは山下が伊藤に逆エビ固めで直接勝利している。逆エビ固めは、伊藤の得意技にほかならない。
山下はこの試合後、「一番悔しい負け方でしょうね。ここから伊藤がどう奮起するか」と伊藤の状況を冷静に分析している。成増でも伊藤が結果を出せなければ、タイトルマッチに向けての流れは完全に山下に傾く。実績では既に相当な差があるだけに、伊藤にとって正念場だった。
そしてここで、伊藤が3カウントを奪取。ヒカリにダイビング・ヘッドバットを決めての勝利だったが、山下とも真っ向からやり合い、前回苦しめられた蹴りに対処する場面も。
「山下実優が頭突きであれだけダメージ食らうと思ってなかった。やっぱりアイツの蹴りに対抗できるのは伊藤の頭しかない」と伊藤。山下は「DDTは強いというか、入り方がうまい」と振り返った。
また伊藤は「良くも悪くも過去を振り返らないタイプで、いつも“終わったことは仕方ない”で済ませてたんですけど、それだけじゃ通用しない話になってきたので。今回初めて、過去を振り返って試合しました」とタイトルマッチに向けた精神面での変化も。
それだけ、前回の負けが悔しかったということだ。伊藤曰く「口では絶対勝ってやるって言ったけど、あんな屈辱的な負け方して、実は自信なくしてた」。そして「どん底に落ちてから這い上がった人間は強いんだってことをリングで証明してやろうと思う!」とファンに宣言してみせた。

(ユキとともにメインで勝利した伊藤。「まだ安心はできない」としながらも、王座戦への手応えは得たようだ)
(C)DDTプロレスリング
こうなると一気に勢いに乗るのが伊藤である。タッグを組んだユキを「お前もこの前(タッグ)タイトルマッチで負けてただろ。お前もどん底。伊藤と愛野ユキはどん底仲間だよ」と強引に巻き込み、あげく観客にも「お前らも笑ってんじゃねえ! どん底仲間を見て笑ってるヤツもどん底だ。お前ら這い上がりたいか!」。
気が付けば会場全体を“伊藤陣営”に染め上げて、最後は「世界一可愛いのは?」「伊藤ちゃん!」のコール&レスポンス。成長を見せつつ、伊藤らしさも全開にして大会を締めたのだった。
ド新人の頃からどれだけ負けても強気一辺倒、へこたれるということを知らない伊藤だったが、王座戦を前に「自信をなくした」とファンの前で言えたのは大きい。自分の弱さを認めることは、強くなければできないこと。王者・山下との差を埋める作業は、差を認めるところからしか始まらない。
伊藤が前哨戦の中で強くなっているのは間違いない。山下の実力が、それを引き出しているとも言える。1月4日の時点で伊藤がどこまで成長しているか、期待のしがいがあるというものだ。仮に山下を脅かすほどに成長していれば、チャンピオンもこれまでにないほどの“怖さ”を見せつけてくるだろう。
文・橋本宗洋
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