日韓の火種は徴用工問題だけではない。先月、韓国政府が「国民の意見を広く聞き、財団の解散を決定した」として、3年前の合意に基づき日本政府が10億円を拠出して設立した、元慰安婦を支援する「和解・癒やし財団」を解散すると一方的に表明した。
1か月ほど遡る10月25日の外務次官協議で日本側は「解散という言葉だけは使わないでほしい」「解散なら日韓関係は取り返しがつかない状態になる」と警告、財団の名前を変える案や、解散後も慰安婦への支給を続ける案を水面下では検討したが折り合わなかったという。
財団からはすでに元慰安婦34人に約1000万円ずつ、遺族58人に約200万円ずつを支給しているが、5億円余りが残っているというが、日本政府は返還を求めない方針だ。この事態に、安倍総理は「国際約束が守られないのであれば、国と国との関係が成り立たなくなってしまう。韓国には国際社会の一員として責任ある対応を望みたいと思う」と強い言葉で抗議を表明している。
一方、韓国外務省は財団の解散発表の日、「2015年の日韓合意の破棄や再交渉を求めない立場に変化はない」とわざわざ表明。大統領選で慰安婦問題についての日韓合意の再交渉を公約にしていた文在寅大統領も沈黙を守っており、重視する南北問題に集中するため、日本との本格的な外交紛争を避けようとしているものとみられている。
さらに11月26日には韓国の国会議員らが竹島への上陸を強行。菅官房長官は「我が国による事前の抗議・中止の申し入れにも関わらず強行されたものであり、竹島の領有権に関する我が国の立場に照らし、到底受け入れることはできない」と述べた。竹島には10月にも別の議員らが上陸しており、日本政府が抗議していた。
■元駐日韓国大使館公使「日韓関係を分断させる北の工作だ」
1日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した元駐日韓国大使館公使の洪熒氏は「文在寅政権はもうコントロールが効かなくなっている。数年前に朴槿恵政権の要人に会った時、"慰安婦や徴用工の問題で両国関係がダメになる。日韓関係を放置するな。大きな未来ビジョンを打ち出せ"と伝えたが、その人も今は政治犯として刑務所に入っている。朴槿恵政権は金正恩政権のレジームチェンジを本気でやろうとしたが、それを平壌に知られて先にやられ、韓国がレジームチェンジされてしまった。釜山の総領事館の前に慰安婦像を建てたのは、地元の国会議員だった時の文在寅だ。慰安婦の挺対協の核心メンバーは北の工作員に関係している。日韓関係を分断させる北の工作だ。毎年、韓国国民の16、7%が日本に来る中、"反日"の正体というのは曖昧だ。文政権に反対する意見が多くても、報道もそれを無視する。いわゆる"ポリコレ"だ"」と持論を展開。
「私が過激なことを言っていると思う人も多いだろうが、文政権はサムスンを3000個の会社に解体すると言っている。つまり本主義経済の解体が目的で、それは中国と同じだ。さらに、私の発言のようなものが流れないようにするため、YouTubeを規制したいもと言っているだから大人たちは"韓国の敵は中国共産党だ"と思っている。最終的にアメリカと日本との関係を断つ場合、韓国は中国に行く」。
■コリア・レポート辺真一氏「文大統領の支持率低下は"自業自得"」
コリア・レポート編集長の辺真一氏は洪氏の話を受けて、辺氏は「愚か極まりない選択だと思うが、朴槿恵政権を倒したのは韓国の政治家であり、蝋燭デモに象徴される国民の"ノーだ"った」とした上で、「慰安婦問題にしても徴用工問題にしても、日本の大使館や領事館前でデモを行っているのはほんの数十人で一般国民は関心がないが、政治レベル、外交レベルになるとそうはいかなくなる。特にマスコミ、雇うは政権を叩くために、北朝鮮や日本を政争の材料に使う。朴槿恵政権下で与党だった自由韓国党も今回の徴用工の判決を支持しているように、こと対日の問題に関しては与党も野党もない。さらに世論調査でも、7割が慰安婦の合意見直し、徴用工問題の判決を支持しているという結果が出ている」と指摘する。
「私は1965年の日韓条約に関する本でデビューしたので、当時の韓国と日本の国会の議事録を嫌というほど読んだし、その後もずっと追いかけてきた。1992年に慰安婦の問題が沸騰して以来、宮沢政権から安倍政権に至るまで、再三に渡り"心のこもった謝罪"をしてきたにも関わらず"ノーだ"と言うなら、どうすればいいんだと思う。日韓関係が悪化すれば経済に跳ね返り、支持率が下がるというのが文大統領のジレンマだ。左派といわれる金命洙氏のような人を最高裁長官に抜擢すれば今回のような判決が出ることは百も承知でやったので、自業自得だと思う。文大統領はそのツケを払わなくてはならなくなる」。
さらに辺氏は日本側の姿勢について「日本にもジレンマがある。安倍政権は竹島の問題も国際司法裁判所に提訴する準備をしているといってきたが、かれこれ5年経ってもやらないし、今回もちらつかせてはいるが実際にはできないだろう。それは外交的な配慮もあるし、やれば決定的な亀裂を生みかねないというようなリスクを考えて踏み込めないからだ。韓国に"できれば再考を"というのが政府の基本的な姿勢。今後、日韓関係の残念ながら悪くはなっても良くなる可能性は低いと個人的に見ている。ただ、1910年~1945年まで朝鮮半島を植民地統治下に置いてきたのは事実だし、された側としては色々な複雑な思いを持っている。日本人には歴史をしっかりと学んだ上で、歴史を忘れないでもらいたいし、韓国人には寛容な精神で対応してもらいたい。そういうお付き合いの仕方が望ましいと思う」との考えを示した。
■佐藤正久外務副大臣「我々は本当に怒っている」
佐藤正久・外務副大臣は「そもそも慰安婦に関する日韓合意の中心は財団だが、「日本大使館前の慰安婦像を撤去する」というのも含まれている。韓国側はそれもまだやっていない。日本政府は合意に基づいて、やれることは全部やってきたので、今回の件について我々は本当に怒っている。だから徴用工問題では河野大臣も"対抗措置も考える"と、かなりきついことを言った。総理ですら"国と国との関係が保てない"と。相当強い言葉だ。我々もずっと待っているわけではないし、日本企業に影響が出るなら手を打たなければいけない」と話す。
「経済問題で文大統領の支持率が下がっているのは間違いない。5兆円以上を使って経済対策をするとして、最低賃金の引き上げをやった。その結果、小さい企業が持たなくなり、逆に失業者がどんどん増えてしまった。文政権は北朝鮮との関係が外交上最優先だ。対日関係よりも対北関係の方が最優先で動いている。すでに3万人の韓国の方が離籍、ほとんどがアメリカに行っている。慰安婦財団の解散については女性家族相が突っ走ったし、海洋調査なども国会議員が自分たちで動いている。洪さんが言われたように、韓国外務省が統制できていないのかもしれない。ただ、我々も日韓併合条約に至る歴史を勉強しないといけない。日本はいいこともしたが悪いこともしたということを含めて、近現代史をもっと勉強しないと、竹島問題、慰安婦問題、今回の徴用工問題も分からない」と指摘した。
国交回復後"最悪"とも言われる日韓関係。これからさらに悪化の一途をたどってしまうのだろうか。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)