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 5日、民間の団体が主催する「ブラック企業大賞2018」のノミネートが発表され、パワハラや残業代未払いなどの問題で9社がその不名誉な賞に名を連ねた。

 最近のニュースを見ても、芸能事務所の社長が社員の顔を熱い鍋に突っ込ませたり、テーマパークキャストに「ババアはいらない」と発言したりするなど、数えたらきりがないほどのハラスメントが起こっている。

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 こうしたことがあたかも普通のことのようにまかり通ってしまう企業のことを指す「ブラック企業」。ネット上には「気に入らない社員だけ遅刻すると罰金」「『妊娠したら席はないぞ』と言われた」「深夜労働をカメラで監視」などの驚きの体験談があがっている。

 しかし、会社に入る前にブラック企業かどうかを見抜くことは難しい。そんな中、AbemaTV『AbemaPrime』では、ブラック企業を体験できるイベント「THE BLACK HOLIDAY」に潜入。柴田阿弥が“新入社員”となってその現状を取材した。

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 取材前は「人に怒鳴られたことがない…」と不安を覗かせていた柴田。入社早々、大きな声での挨拶と始業前の掃除が言い渡され、その迫力と威圧感に顔がこわばる。

 今回のイベントは上司や社長を役者が演じ、参加者がブラック企業を疑似体験できるというもの。壁一面には「プリント1日3枚まで 4枚以上有料」「残業なき労働に価値なし」などの言葉が貼られ、新入社員のデスクにはすでに退職届が置かれている。

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 大声で社訓を読まされると、「ダメだ!お前らの声、全然分かんない」と1人ずつ声出しの自己紹介。男性2人に隠れその場を逃れようとした柴田だが、「なんで来ないんだよ!おかしいだろお前!クビにするぞ」と早くもブラック企業の洗礼を受ける。

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 次から次へと起こるブラック企業ならではの出来事は、ほとんどが実話ベースだという。生年月日による相性占いで「星回りが最悪」だという理由から、社長がクビを宣言。その後引き止められ、「星回りは改善できる」と水晶で作ったというお守りを渡されるが、代金4万円は給料からの天引きだ。さらには、罵倒・暴力・モラハラ行為の強要。営業研修を受けるものの、なかなかうまく話せない新入社員の男性に対し、「モノを売るとかっていうのは感情をさらけ出せなきゃダメなの。今こいつ閉じこもっちゃってるから、みんなで感情を引き出してあげよう」と言い出す先輩社員。その男性を怒らせるため、「クズ」という言葉で罵倒することを強要される。

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 その後も次々と繰り広げられる衝撃の展開。1時間半の体験を耐え抜いた柴田だったが、終わってみると最初の笑顔はどこにもなかった。「正直、『逃げちゃえばいいんじゃないか』とか『そんなに追いつめられるのかな?』と思っていたけど、確かにこれが毎日続いて、社訓とか読まされたりしていたら、これは確かに洗脳の一種だなと。逃げられなくなってしまう人もいるのかもしれないなって思った」。

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 体験者をも追い込むこのイベント。企画の意図について、主催者である株式会社人間の花岡洋一さんは「去年あたりから働き方改革とかが国会で叫ばれているが、実際何が起こっているかはよく分からない。今回思いついたのが、(ブラック企業を)体験できるイベントにしたら、体験した人が働き方を見つめ直せるんじゃないかと。(企業の)代表の方が中心だけど、参加していただいて、それを通して(ブラック企業からの)離れ方というか自分の会社を見つめ直すきっかけになればいいなと思う」と話した。

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■“自称ブラック企業”の正体は

 さらに、実際のブラック企業を取材するため、企業に交渉することに。ことごとく断られる中、ブラック企業を自称している会社が取材に応じてくれた。

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 訪れたのは、閑静な住宅街にたたずむ一軒家。出迎えてくれた緒方勇祐さんに中を案内してもらうと、壁には「社畜」とプリントされたTシャツが掛けられているが、「あれはうちで販売している『社畜ポロシャツ』。ブラック企業としてやっているので、PRするための夏用の衣装」だという。

 この“自称ブラック企業”、株式会社セブンコード代表の濱野秀昭さんは、ブラック企業である理由として「いつでも仕事ができるように住みながら働いたほうがいいなということで、シェアハウス兼作業場となっている」と説明する。

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 一軒家の2階はオフィスで、1階がシェアハウス。社長と会社役員(緒方さん)が一緒に暮らしているという。いつでも働くことができる=究極の長時間労働かと思ってしまうが、濱野さんによると定時は「19時」。「20時くらいにご飯を食べて。あとは会社でネット番組を持っているので放送しているが、それは仕事なのかプライベートなのか境目はあいまい」だそうだ。

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 働く時間があいまいということは、やはりブラック企業なのか。ブラック企業を謳うにはそう感じる社員の存在が必要だが、このオフィスに社員はいない。

 実はここに至るまでには濱野社長の悲しい物語があったという。以前、社長は働きやすいホワイト企業を目指し、社員を第一に考え、飲み会にも誘い、海外への社員旅行を企画。それなのに、「後輩を育てたくない」「やりたいことと違う」など理由は様々だが、社員が次々と退職してしまった。社長としては一生懸命社員を育てようとしたつもりだったが、ブラック企業的な扱いをされるぐらいならと選んだ道が、人との関りをなるべくなくし、人を育てない道だった。

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 結果、現在東京オフィスで働いているのは、社長と役員(緒方さん)の2人だけだという。ウェブデザインなどの本業以外は外部の専門スタッフやフリーランスに委託して、社員として雇うことを止めた。

 濱野さんは、「これから(社員として)雇用する人よりも、フリーランスは仕事に対して成果報酬で日頃稼いでいる人なので、いちいち『仕事とは…』って話をしなくても噛み合う確率が高い。昔は経済がよかったので我慢していればお金ももらえていた時代だったが、いま終身雇用も終わって会社に対するメリットが少なくなった。我慢を強いられると『ブラックだ』と。我慢の先にもそんなにたくさんもらえないと知ったということだと思う」と語った。

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 ブラック企業体験をした柴田は改めて、「本当に地獄でした。謎のことで罰を与えられて、その中の1つに反省文を書かされるということがあった。これを書いている時に思ったのは、『いかにこの人たちの機嫌を悪くしないか』ということに意識を注いでいるなと。これが毎日続いて、もし抜けられる知恵がなかったら会社に搾取されてしまうんだろうなと思った」とコメント。知識だけが自分を守る方法だとし、「ちゃんと学校とか周りの人が伝えることで身を守る方法を知ってほしい」と語った。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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