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 10日に会期末を迎えた国会で、最大の焦点だった入管法改正案。OECD(経済協力開発機構)によれば、すでに日本は年間約40万人以上が移住する世界有数の“移民大国”だ。そんな中、日本に移住する外国人が直面する課題をAbemaTV『けやきヒルズ』は取材した。

■子育てに立ちはだかる、宗教の壁

 神奈川県・横浜市で、インド料理店を営むビマル・ギミレさん。ネパールから9年前に留学生として来日した。2014年、28歳の時に母国・ネパールの女性と結婚。日本に呼び寄せた。

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 妻と1歳4カ月の息子に囲まれ、幸せいっぱいのビマルさんだが、実はいま困っていることがある。日本語がほとんど話せない妻のギータさん。働きに出たいと思っているが、保育園への申し込みにも手間取っているという。

 「(日本語は)うーん、難しいです。言葉ができないから問題はたくさんあって、外出しても全部日本語なので。自分で子どもを連れてどこかへ行くのも困ります。書類の書き方とか手続きが難しくて、(日本での生活の)スタートラインにも立てていない状態です」(ギータさん)

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 唯一の息抜きは、同じ市に住む先輩ネパール人ママのエソダ・バスネットさんとの会話だ。1歳半になるジヤスくんを育てるエソダさん。来日14年目、ネパール人コミュニティーのリーダー的存在だが、彼女たちも子を預ける保育園での悩みがあるという。

 「ネパールは宗教的にヒンドゥー教が多いんです。ヒンドゥー教は『牛肉はダメ』って言われているんですけど、そういったところは保育園にどこまで言ったらいいのか。(保育園に)迷惑をかけちゃうので言うのはどうしようかなと迷いながら、『できれば牛肉を避けていただきたい』と。でも“(牛肉)エキス”とかまで考えたら大変なので」(エソダさん)

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 エソダさんの夫・ジギャンさんも「私たち(夫婦)は食べないし、食べさせない。保育園では(牛肉を)極力出さないでほしいけど、あとは知らないみたいな。大事にしてきたそういう文化的なものもどこかに置いとかないと、この社会でやっていくのは難しいなというところはあります」と話す。

 子育てに立ちはだかる、宗教の壁。時には、些細な文化の違いにさえも戸惑うことがある。遠足時の弁当をコンビニで買って行ったというエソダさん。「お弁当を自分たちで作っていくっていうのが、日本は普通みたいですけどそれも分からないので、普通にコンビニで買っていったらすごく恥ずかしい感じになっちゃって…。やっぱりそこを、細かいところを外国人は分からないので」。

■「パパがいるとママは3歩どころか10歩、20歩ぐらい下がる」

 神奈川県では、2014年の1812人から2018年には5523人と、ここ5年間でネパール人が急増している。来日時は単身でやってきた人たちの結婚も相次ぎ、いまベビーラッシュとなっているという。

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 そうした中、外国人ママたちをサポートする取り組みも始まっている。神奈川県で外国人住民の子育て支援をする団体「かながわ国際交流財団」が、ネパール人ママを対象としたワークショップを開催。エソダさんも、ネパール人ママが何に困っているか団体の“架け橋”となって生の声を届けている。

 小児科のかかり方について、エソダさんから質問を受けるかながわ国際交流財団の福田久美子さんは「本当にこういう(エソダさんのような)方がいないと私たちもわからない。いろんな国の言葉も分からないので」と話す。また、乳幼児健診では、増加するイスラム教徒のエピソードも。

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 「宗教のことから、パパがいるとママは3歩下がるどころか10歩、20歩ぐらい下がって、検診会場とかにも入ってこないんです。保健師さんとパパが話しているんですが、『毎日どうですか?』と聞いても『うーん分からない』となって。(保健師たちは)『ママに聞きたいのに』みたいな」(福田さん)

 そんな思いからイスラム教徒の女性限定のワークショップを開いたところ、乳幼児健診では一言もしゃべらなかった女性たちがきゃあきゃあと盛り上がる、予想以上の大盛況だったという。ワークショップでは、栄養士が日本の食材での栄養の摂り方などを解説。「ビタミンDを作るのに日光浴もいいですよ」というアドバイスに「ヒジャブをかぶっているのでどうやって日を浴びればいいの?」といった疑問や、「きんぴらごぼうってイスラム教徒は食べられる?」「女性だけで運動できる場所はある?」などの質問が盛りだくさん。

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 さらに、ネパール語をはじめ7つの言語で、妊娠から出産、小学校入学までをまとめたチャート図や動画などを配信している。取り組みは始まったばかりだというが、すでに広がりも見せている。

 「東京都の大田区や神奈川に近い地域とかも、ネパール人が増えているという話があって、『チャートを使わせてください』という話があり、県をまたいで使っていただいている。内容は全国で使えるものなので、今後全国で使ってほしいと思います」(福田さん)

■海外では泣くは「感情表現」、学校の問題も「自立」に?

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 2019年4月から施行される改正出入国管理法では、「特定技能1号」として認められれば、家族帯同は認められないが在留上限5年(1年ごとに更新)まで日本にいることができる。さらに、試験に合格し「特定技能2号」として認められれば、在留更新で事実上の永住となり、家族帯同も認められる。建設や外食、介護、農業など14業種での受け入れを想定している。

 新たに移民が増えると文化の違いが出てくるが、臨床心理士で明星大学准教授の藤井靖氏は「食べ物は多民族共生を考えると配慮する必要があるし、実際に公立学校で子どもに配慮している給食は段々増えている」と話す。

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 また、教育や医療の現場でも文化の違いはあるとし、「例えば、保育園・幼稚園から小学校低学年までの子が公共の場で泣いていると、日本人は敏感でなんとかなだめようとする。でも海外では『泣いているのも感情表現のひとつだから何でやめさせる必要があるんだ』と考える人もいる。小中高校で子どもが学校で問題を起こすとすぐ親に連絡がいくけど、海外だと自分の子どもに対して『I’m proud of you』、つまり誇りを持っていると伝えていて、その中には自立という意味も含まれている。子どもが自立している状態を促進させていきたい思いがあって、学校から連絡があっても対応しなかったり行かなかったりする。それがダメだとは言い切れないと思う」と説明。日本の教育文化は独特だとしたうえで、「(海外に)アジャストしていかなければいけないのではないか」と述べた。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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