「赤、緑、黄色と多彩な色を使っている」「すごく西洋っぽくてかわいいな」。
 捨てられたボロボロの段ボールを前に熱い口調で語る男性、島津冬樹さん(30)だ。段ボールを愛しすぎた男として、密着ドキュメンタリー映画『旅するダンボール』が制作されるほど注目を集めている。作中、「あれもかわいいですね。これって頂けたりします?」と段ボールを収集していく様子は、まるでおもちゃを前にした子どものようだ。
 都内にあるアトリエを訪ねてみると、そこには島津さんが収集した、およそ500種類もの段ボールがあった。 「段ボールって、農家のおじさんがデザインしていたりする。だから"なんでこんな色使ったんだろう"とか、感性として僕にはできない、突拍子もないデザインもたくさんある。プロが敵わない"ゆるさ"も魅力。すごくオシャレだなと思いつつも、捨てられてしまうのはもったいないなと感じていた。湘南の生まれなので、貝や拾って標本を作ったり、粗大ごみを拾ったりはしていた。コレクションするというのは昔から好きだった」。そんな島津さんが段ボール財布の制作を始めたのは美術大学に通っていた2009年、2年生の時だという。お金がなく財布が買えなかったため、目の前にあった段ボールで間に合わせの財布を作ったところ、意外にも"1年間使えてしまった"。面白いと感じた島津さんは、「Carton」という活動名で財布づくりを本格的に始めた。現在使っているものは、もう2年も使っているという。