12月16日、ガンバレ☆プロレスが旗揚げ以来2度目の後楽園ホール大会を開催する。

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(11.17新木場大会で藤田に対戦要求したものの、ド迫力の反論を食らってしまった大家。ガンプロユニバースも静まり返った)

(C)DDTプロレスリング

ガンバレ☆プロレス、通称ガンプロはDDT系列の団体で、2013年に大家健が設立。といってもDDTグループから弾き出された形だった。旗揚げ資金は1万5000円。それも人から借りた金である。

たった1人の団体、観客100人程度の極小・弱小・どインディー。しかし、なりふり構わず泣いて叫んで暴れまくる、感情むき出しの大家の姿はカルト的な人気を呼ぶことになった。

DDT映像班スタッフ兼レスラーの今成夢人はじめ、ガンプロには過去に紆余曲折あった者たちが集結。その人間模様が最大の魅力だ。大雑把に見れば「うだつの上がらないダメレスラー」でも、一人ひとりにドラマがある。そこにユニバース(ファン)は感情移入する。

一昨年10月、初の“聖地”後楽園進出は無謀にも思えたが超満員に。そこから2年経っての今回は、団体の様相が大きく変わっている。

“大家の右腕”的な存在だった今成がひとり立ち。ガンプロは大家健だけじゃないと“今成革命”を掲げ、夏のトーナメント「ガンバレ☆クライマックス」では優勝を果たしている。今回の後楽園再進出も、今成のアピールから実現したものだ。

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(大会後にも、抗争中のユニット「戦闘民族」(藤田、関根龍一、下村大樹)の襲撃を受け、テーブルに沈められた大家)

(C)DDTプロレスリング

この春にはレギュラー参戦していた翔太が正式入団。夏にはDDTの若手ブランド・DNA解散を経て岩崎孝樹が入ってきた。さらにDDTの中心選手の1人・石井慧介もレンタル移籍でガンプロを主戦場に。DDTグループの中でも実力派と言える2人の加入は、ガンプロのイメージそのものを変える可能性もある。

そうした状況の中、団体代表である大家は夏に失踪騒動を起こすなど絶不調。後楽園は代表として引っ張るというより、失地回復を目指す舞台だ。

対戦相手は、自ら指名した藤田ミノル。かつてガンプロで抗争を展開してきた仇敵との“再会”となる。試合形式はノーロープ有刺鉄線デスマッチ。藤田はデスマッチでも活躍しているだけに、大家にとっては大きな挑戦だ。

2015年当時、福岡在住だった藤田はガンプロに参戦すると、プロレスラーだった妻と離婚したことをはじめプライベートを赤裸々に告白。前回のガンプロ後楽園大会では、その元妻とタッグマッチで対戦している。さらけ出しっぷりで言えば、“場末のミスタープロレス”藤田も大家に負けていない。

現在は関東を拠点にレスラーとして本格的に活動している藤田。2年前、後楽園のリングで元妻に(そして娘たちの前で)言われた言葉は「お前は一生プロレスやってろ!」だった。

大家はそんな藤田を「人生をかけてプロレスやってる」と評したが、藤田は「違います」と言う。「人生を犠牲にしてプロレスをやっているのです」。

大家から対戦要求された藤田は、このところガンプロのリングから遠ざかっていた理由も語っている。

「1年前、この新木場に一流芸能人来たよな。その時、(ガンプロ勢)お前もお前もお前も、浮かれて踊ってたよな。その時に俺は気付いたんだ。お前らとは目指すところが一緒でも、方法が全然違う。だからこのガンプロを去ったんだ」

昨年、AbemaTVの特番企画で稲垣吾郎草なぎ剛香取慎吾がガンプロのリングにサプライズ登場。大家と今成は急遽「男色ディーノ&ユーチューバー草なぎ」と対戦し、今成が草なぎにフォール負けしている。

それは話題性、メディアを通じてのアピールという点で重要なことだったのだが、藤田にはプロレスラーとしてのプライドを捨てる行為にしか見えなかったのだろう。ましてその後、ガンプロの人気が急騰したかといえば、そんなこともない。「ユーチューバー草なぎ」登場の1年後である11.17ガンプロ新木場1st RING大会で、藤田は言った。

「なんだこのザマは。あの時よりお客さん減ってねえか? 俺は自分の気持ちに嘘をつくようなプロレスはしてない。お前の正義をぶつけてみろ、俺の正義を後楽園ホールでぶつけてやる」

後日、行なわれた記者会見では、藤田が声明文を送りつけている。そこにあったのが「人生を犠牲にしている」であり、またこんな言葉も。

「前回のガンプロの後楽園で元奥さんに言われました。お前は死ぬまでプロレスやってろ。すべての幸せは誰かの不幸せの上で成り立っていると思います。元奥さんにも胸を張ってプロレスやってるといいたいので、後楽園でワタシが思い違いをしてたあなたと向き合います。お互いの正義の比べっこしましょう。ワタシの正義で責任をもって叩きのめします。丁寧な言い方が続きましたが最後に一言。今のワタシは大家健をプロレスラーとして認めない。トドメを刺します。では後楽園で」

藤田の鋭すぎる舌鋒に、大家はうまく反論できていない。新木場のリングでは「浮かれてたよ俺は、それは認めます! でも浮かれてダメになったらそれで終わりか? 俺がダメになっても、他の選手が育ったと思う! 1人じゃねえんだ!」と語ったものの、結局それでは大家自身がダメであることに変わりはない。生来の人のよさなのか、大家は批判されると、とりあえず受け入れてしまうところがある。

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(12月7日の会見でも、藤田の圧倒的正論に劣勢。今成夢人にも厳しい言葉を投げかけられた)

会見では同席した今成に「アンタより藤田選手のほうがかけてるものが大きいなって思うよ!」、「これまったく正論だろうが!」と詰め寄られてしまった。さらに「前回の後楽園を背負って今プロレスやってんのは大家健じゃなく藤田ミノルだろうが!」と言われると、思わず「おぉ、そうだな!」と答えてしまう大家なのだった。

大家に単独取材してみると、藤田のような生き方をしてみたいと思う自分もいるという。だけどそれを認めるわけにはいかない、とも。今の大家には妻も子もいる。団体の代表であり、フリーで活動する藤田とは立場、境遇がまったく違うのだ。「たぶんお互いに“お前に言われたくねえ!”って思ってるんですよ」と大家。

その生き方の違い、立場の違い、藤田の言葉を借りれば「正義」のぶつけ合いをするのが後楽園のリング。デスマッチであることは偶然ではない。これは間違いなく“遺恨マッチ”なのだ。

藤田は人生を犠牲にしてプロレスをしているという。大家はこれまで何度も「俺はプロレスに救われてきた。だからプロレスに恩返しがしたい」と語っている。

前回の後楽園、大家は「満員にならなかったら引退」と宣言して臨んだ。今回はそうした形でかけているものはないのだが、実は“追い込まれ度”は過去最大級ではないか。逆ギレ、あるいは暴発、どんな形であれ、大家は藤田を上回るものを見せなければならない。

闘いで、そして試合後の言葉で、プロレスに救われた男・大家は自分の“正義”に説得力を持たせることができるだろうか。人生を犠牲にしてプロレスにのめり込む男・藤田ミノルに勝つことができるだろうか。

文・橋本宗洋

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