沖縄県のアメリカ軍普天間基地の移設に伴う、辺野古の海への土砂導入から5日。トランプ政権に工事停止を求める電子署名が、目標である10万筆に達した。
この署名は、ホワイトハウスの請願サイト「WE the PEOPLE」で今月8日に開始されたもの。オバマ政権時に世界中の人が政府に直接請願できるように導入され、30日以内に10万筆が集まればアメリカ政府が内容を検討、回答する仕組みになっている。13歳以上であれば、移住地や国籍に問わず誰でも署名ができる。
今回の署名は、2019年2月24日に行われる沖縄県民投票の日まで移設工事を停止するよう求めたもので、タレントでモデルのローラがInstagramで署名を呼びかけ、沖縄出身のりゅうちぇるやラサール石井、芥川賞作家の平野啓一郎氏らも協力を呼びかけていた。そして、開始から10日後の18日午後、目標の10万筆を達成した。
この署名の発案者で、ハワイ在住で沖縄にルーツを持つ日系4世のロブ・カジワラさんは「10日間で10万筆を達成したという事実は、いかに沖縄をサポートする人が多いか、いかに辺野古に基地を移設してほしくないかという強いサイン。沖縄で何が起きているのか世界に知らせよう。特にアメリカに知らせるべき。これはまだ始まりに過ぎない。私たちが歩む第1章にすぎないのです」と述べている。
10万筆に到達したことで、ホワイトハウスから60日以内に何らかの返答が届くことになるが、はたして今回の署名に意味はあるのか。テレビ朝日元アメリカ総局長の名村晃一氏は次のように話す。
「トランプ大統領は、海外に展開しているアメリカ軍を少しでも減らしたい、海外で使う国防費を減らしたいと考えている。そういう意味では、トランプ大統領の考え方に対して『沖縄にいる米軍を減らしたい』と訴えかける狙いは必ずしも的外れではない。トランプ大統領はつまずきの連続で心ここにあらずという状況で、これをきっかけに大きく展開するかというと未知数。あまり大きな期待をかけるものではないかもしれない」
一方、日本政府はこの署名について「他国が行っている施策に関すること」とコメントを控えている。
沖縄県民投票については、産経新聞が「沖縄県民投票に宮古島市が不参加を表明」と報じている。宮古島市は、辺野古移設の賛否を問う県民投票について関連予算を執行しない方針を固めたとのことで、沖縄県内の41市町村で不参加を表明したのは初。玉城デニー沖縄県知事は「住んでいる地域によって県民投票の機会が失われることはあってはならない」と述べたという。
政治学者で東京大学先端科学技術研究センター助教の佐藤信氏は、署名に関して「アメリカ政府に訴えかけるということで、実現性に関しては疑問符がつく」とし、沖縄県民投票についても「政府は玉城知事が当選した時点で民意が反対側にあるのはわかっていて、県民投票で反対の声が強くあがっても状況が変わることは難しい」とコメント。「沖縄の現状に共感する人たちが何とか道を探したうえでこういう手立てを使っているという、日本政府が真摯に対応できていないことが形になっているのが重要なポイント」だと指摘する。
一方、宮古島市が県民投票の不参加を表明したことで、「オール沖縄ではなくなっている」という見方もある。佐藤氏はこれを否定し、「不参加に決めた理由は、県民の意思は『反対』で明らかだから。外から見ていると『オール沖縄ではない』と思われるかもしれないが、そうではない。意見を聞いてもらえないためにいろいろな手立てを使わざるを得ない状況になっていることを認識した上で、沖縄から遠い本土の人や関心が薄い人たちは向き合う必要がある」とした。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)