サッカーを見ていて「このプレー、フットサルだ!」と感じることが何度もある。

 一瞬の駆け引きで相手の裏を取る、呼吸の合った連係で局面を打開する、ボールがないところでフリーになる、細かいパスワークで相手を翻弄する、戦略的な守備で相手を囲い込む……。

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 たとえば“フットサル大国”ブラジルのサッカー選手を見れば、“フットサル的な”プレーが偶然ではないことに気がつく。サッカーもフットサルも「ゴールを奪う」、「ゴールを守る」という目的は変わらない。

 つまり、フットサルの戦術を知れば、サッカー観戦の見どころが増えて、今まで以上に興味深く試合を見ることができるはず。サッカー好きに伝えたいフットサルが、そこにはある――。

サッカーもフットサルも目的は同じ

 中盤からの縦パスをFWがキープして、走り込む仲間に預ける。

 「くさびのパス」と「ポストプレー」は、サッカーにおいて前線に起点を作って、敵深くに切り込む常套手段。一方でフットサルには「ピヴォ当て」という基本戦術がある。現代フットサルの定番プレーだ。

 ピヴォとは、いわゆるFWのこと。シュートや得点力だけではなく、前線で起点となる。中央やサイドの味方からピヴォに出されるパスは「ピヴォ当て」と呼ばれ、それを合図に他の選手たちが一気に前線に攻め込んでいく。フットサルにおいて約半数がピヴォ当てからのゴールといわれるほどポピュラーなものだ。

 ピヴォがダイレクトにパスを出す形、ボールをキープしている間に3人目が関わる形、パサーがそのまま寄っていく形、3人目がファーポストに走り込む形、3人目のオーバーラップ、ピヴォがそのままターンする形……バリエーションも豊富で、タイミングやパスの種類などによってその数は無数に増える。

 サッカーでもフットサルでも「中央を攻略すること」は大きなテーマ。中央はゴールに近づく最短ルートであることと同時に、中を使うことで外が空くことなど、ピヴォ当てのメリットは大きい。

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 Fリーグを9連覇した王者・名古屋オーシャンズから、2016シーズンに王座を奪い取ったシュライカー大阪のアルトゥール(パスの出し手)、チアゴ(ピヴォ/受け手)はそのプレーで得点を量産してリーグ制覇を手繰り寄せた。日本で一番ピヴォ当てがうまいコンビであり、その連係はわかっていても止められない。

 サイドからのクロスでゴールに迫る形は、フットサルでは「ファー詰め」と呼ばれる。オフサイドがないため、相手守備を気にする必要もなく、体ごとゴールに滑り込んでしまうシーンもよくある。枠内からプラス1メートルほどシュートコースが増えるため、攻撃側は「シュート」と「シュートパス」を選べる。一方でGKを含めた守備側からすると、ケアしないといけないコースが増えるためにやっかいなのだ。

 ゴールシーン以外でも、多くのプレーがフットサルとリンクする。例えば「ワン・ツー」はポルトガル語で「ウン・ドイス」ともいわれるが、そのパターンは多彩。サイドの選手がタッチライン際と平行に出すアウトサイドを使ったパスは「パラレラ」と呼ばれ、相手の裏を取って一気に抜け出せる。

 サッカーとは違った意味で使われるものもある。「ボランチ」とはポジションではなく、最近のFリーグでトレンドのチーム戦術。一瞬にして相手との数的有利を作り出してプレスを回避してしまうものだ。

 あとは「パワープレー」。

 ビハインドを負うチームの「最後の頼みの綱」の意味は同じだが、方法はまったく異なる。サッカーでは前線にロングボールを蹴り込む形が一般的だが、フットサルの場合は、「5人対4人」の数的有利な状況を作り出して攻め込む戦術のこと。フットサルは交代が自由であるため、GKのユニフォームを着たフィールドプレーヤーがGKと交代して、相手陣内に入って攻撃を組み立てる。焦って攻めるのではなく、優位な状態でパスを回しながら相手を焦らして、マークやコースのズレを作り出して一撃必殺でゴールを奪うのだ。

 一方で、攻撃側のゴールはガラ空き。奪われたら無人のゴールに蹴り込まれる「パワープレー返し」のリスクがあるため「諸刃の剣」。その攻防は白熱して、フットサルの醍醐味の一つとされている。

 こうした一連のフットサル戦術は、一方で非常にサッカー的でもある。ゴールを奪うため、ゴールを守るために、選手たちはどんな駆け引きをしているのか。ある意味でサッカーのプレーが凝縮したフットサルの戦術・戦略を知れば、サッカーへの興味が倍増するに違いないだろう。

 フットサルにおいてブラジルと双璧を成すもう一つの大国はスペイン。FIFAフットサルワールドカップが始まった1989年以来、ブラジルとスペインの2強がしのぎを削り合う中で研ぎ澄まされてきた戦略・戦術は、フットボールの原理原則が詰まっている。サッカーを楽しむためにも、フットサルをぜひ、深くまで知ってもらいたい。

文・本田好伸(SAL編集部)

(C)AbemaTV

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