「負けるって大事だなって思いましたよ。負けることがこんなにも身になるのかって」。俳優として多忙な日々を過ごし、その上で10月からプロ麻雀リーグ「Mリーグ」の選手として活躍する萩原聖人は2018年、とにかく負けた。「去年、たくさん麻雀で負けたんですよ。もしかしたら人生で一番負けたっていうくらい」。俳優・プロ雀士の二刀流に、様々な声が浴びせられる中で、とにかく忙しく苦しい日々に耐え、ようやく12月に麻雀の調子が上向きになった。2019年、二刀流2年目を迎えた男に、心境を聞いた。
舞台、テレビの連続ドラマと、それだけで十分忙しい萩原だが、もう1つ増えた肩書き「プロ雀士」の責務は、しっかり果たしている。参加しているMリーグは7チーム、21選手が激しい戦いを週4日に渡り繰り広げている。1日2試合で、1人が2試合出ることもあるため、必ずしも萩原が試合会場となるスタジオに向かう必要はないが、芸能仕事を終えた後でも、可能な限り足を運び、ロッカールームでチームメイトや関係者と、チームの戦いを見守り、勝利すれば満面の笑みで出迎える。昨年のチーム最終戦が12月20日だったこともあり、再開する1月7日まで半月、間隔が空いた。「Mリーグロスみたいになりますよね。チームメイトに会えない寂しさもありましたから。リーグがない期間も、時間の使い方によって、プロとしての厚みも変わってくると思うんです」と、リーグ初年度で試行錯誤の中、プロ雀士として年末年始の休みの過ごし方に思いをめぐらせた。
インタビューで真っ先に「たくさん負けた」と話したとおり、とにかく苦しんだ。Mリーグの初勝利は、10月1日の開幕から2週間以上が経過した10月18日、さらに2勝目までに50日かかった。リーグの日程上、試合間隔にはばらつきがあり、前日負けたからといって、すぐ翌日に雪辱できるというものでもない。また、俳優としてのスケジュールも埋まっているため、奥歯をかみ締める敗北の味を抱えたまま、役者の仕事をしてきた。ただ、それをプラスに転じることができるから、二刀流が成立している。「負けることによって、麻雀に対する思い入れも強くなるし、俳優としてももっと頑張らなきゃなと思える。自分を磨くことで、美学が磨かれて、麻雀にも俳優としての表現にもつながるんです」。役者とプロ雀士。2人の自分をあえて分けることなく、一人の“萩原聖人”を、麻雀の敗戦で研ぐことで、より輝かせる方法を見つけた2018年だった。
インタビュー取材を受けたのは、Mリーグのチェアマンを務めるサイバーエージェント・藤田晋社長と自身がまとめている「藤田・萩原リーグ」と呼ばれる芸能人麻雀リーグから派生した、対局番組の最中だった。「そういえば、Mリーグに参戦したいと藤田さんにお話ししたのも、藤田・萩原リーグでしたね。すごく喜んでくださった。(俳優とプロ雀士の両立は)簡単にできると思っていなかったから、誰かに反対されたらやめようと思っていたんですけど、これがびっくりするくらい誰も反対しなくて(笑)Mリーグの最初の1年は待ってと言われるかと思ったら、事務所の社長にも『やるなら最初からやれ』と言われましたよ」。その後、舞台やドラマの会見でも、毎回コメントに麻雀を入れ込み、Mリーグを徹底してPRしたのは、麻雀業界では誰もが知る話だ。
Mリーグは明日1月7日から再開。所属するTEAM雷電も出場するため、ここが萩原の新年初戦となる可能性もある。「去年の12月、調子がいいところで終わってしまって、果たして自分がどうなっているのか不安もありますけどね。でも、たくさん泣いて、たくさん笑える年にしたいですね」と力強く語った。負けた分だけ強くなる。麻雀に限らず、人生にも通じるそんな戦いの舞台に、萩原がまた戻っていく。【小松正明】
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