今シーズンの名古屋オーシャンズはFリーグ開幕節から負けなしで2位との勝ち点差は16。その圧倒的な実力でリーグ1位通過を決めてみせた。まさに“銀河系軍団”と称されるに相応しい名古屋には今シーズン、1人の新加入選手がいた。バルドラール浦安で絶対的存在だった星翔太だ。
この移籍で名古屋のキャプテンで弟の星龍太とアマチュア時代からさかのぼり9年ぶりの兄弟での共闘も実現した。彼らはチームメイトとして「名古屋オーシャンズの強さ」をどう捉え、そして選手として互いにどんな存在なのだろうか。
星兄弟が考える名古屋・最強の理由とは
「よく“王者のメンタリティ”、“勝者のメンタリティ”があるという言われ方もしますが、ここにいることで、みんながそれを身につけていく。一歩(でも相手に踏み込んだり、前に)出る強さや、リーグで1位をキープし続けられる強さこそが、そうしたメンタリティだと思います」(龍太)
名古屋オーシャンズはFリーグで唯一のプロクラブ。充実した環境が故に、どのチームよりも勝利に対する責任感が強い。その雰囲気は練習から常にピリピリし、選手たちはどこか近寄りがたいというイメージがあるかもしれない。
「僕が名古屋に入ったときは『体育会系』という感じだったんです。上下関係が厳しいというわけではないですけど、先輩を立てるところはしっかり立てるという関係でうまく成り立っていた。でも今はもうそういう時代でもないですし、下が上をイジったりとか(笑)。プロとして生活を懸けて仕事としてやっていますが、その中には家族のような一体感といった空気があって、それは7、8年前よりも今の方が上乗せされているのかなと」(龍太)
そんな名古屋でキャプテンを務める龍太の働きを、前所属チームのバルドラール浦安でキャプテンを務めてきた兄・翔太はどのように感じているのだろうか。
「龍太はクラブの文化を自然に変えつつ、キャプテンとして『こうありたい』というのを伝えているので、新しい時代のキャプテンだなと。上下の壁を作らず、それぞれの(性格や個性、プレーの特徴などの)スタイルを馴染みやすいようにするキャプテンなのかなと思います」(翔太)
外国人選手から若手選手まで全員がプレーしやすく、試合中でも助け合える関係性を築き上げた。それでも、チームが劣勢に立たされ顔が下がってしまうような時は龍太が先頭になって鼓舞する。
「失点した時に雰囲気が落ちてしまうことはあるんですが、そういう時は『気が抜けている』じゃないですけど、怒ることも大事なんですよね。監督はよく『ショックを与える』と言うんですけど、ちょっと気が抜けてるなという時は怒るぐらい言います」(龍太)
龍太のそんな取り組みもありビハインドの状態でも同点や逆転に成功し、今シーズン28戦無敗という偉大な記録を打ち立てた。そして翔太はこれまでスペインなどのクラブも渡り歩き、経験も豊富。「フットサルを知っている」ことに関しては日本人の中でもトップ5に入ると自負する。ピッチ外でも若手選手をはじめ、チームメイトと積極的にコミュニケーションを取り自分の知識を還元することでベテラン選手として頼もしい存在でもある。
さらに翔太のポジションはピヴォ(=サッカーでいうFW)、龍太のポジションはフィクソ(=サッカーでいうDF)で、いわゆる「縦の関係」の2人は選手としての相性もいい。
「翔太のポジションに一番パスを出すので、そういう意味ではどの選手よりも見ているし、安心感があります。あと、僕がミスしてもほかの選手よりも助けてくれます。“兄弟でピヴォとフィクソのライン”というのはいいと思いますね」(龍太)
「ゴールに直結するプレーを求められているので名古屋の戦術にも合っていると思います。“兄弟でピヴォとフィクソ”はほかのチームにもないですし、お互いに助け合える関係性はチームにも貢献しやすいです」(翔太)
名古屋は今、2度目の無敗優勝が目前というところまできた。その先頭には間違いなく星兄弟の存在がある。チームのキャプテンと33歳の頼もしい新戦力が道しるべとなり、偉大な記録を成し遂げようとしている。
文・舞野隼大(SAL編集部)
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