
“アイドル戦国時代”と言われてきた平成。そんな平成の最後に、アイドルの卒業、グループの解散が止まらない。
AKBグループからは指原莉乃や山本彩、坂道シリーズの「乃木坂46」からは西野七瀬など、グループの人気メンバーが次々と卒業を発表。グループ単位では、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の劇中に登場する『暦の上ではディセンバー』を歌った「ベイビーレイズJAPAN」、2009年から活動していた「PASSPO☆」(活動当初は「ぱすぽ☆」として結成)などの解散が昨年発表され、アイドル史の節目を迎えている。
卒業や解散を経験したアイドルたちは、どこへ向かうのか。人気バラエティ番組『アメトーーク!』を担当するテレビ朝日・小山テリハさんは、自身もアイドル活動の経験があり、その経験を元に『悩める前職:アイドルちゃん~アイドルやめて何するの?~』を企画。「今アイドルは、時代の変化とともに多様化していて、自称アイドルから地上まで含めると1万人以上いるといわれています」と“アイドル人口”の多さを語る小山さん。番組に込めた思いを聞いた。
▼【バラステ】『悩める前職:アイドルちゃん~アイドルやめて何するの?~』放送
1月27日(日) 20:00 ~ 21:00
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――小山さんが企画担当した『悩める前職:アイドルちゃん~アイドルやめて何するの?~』は、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか?
小山:もともと私はモーニング娘。さん世代のど真ん中で、アイドルのファンなんです。「卒業した推し(アイドル)って、その後何をしているんだろう?」って疑問に思ったことがきっかけですね。昨年は特にたくさんのアイドルグループが解散して「これは事件だ!」って思いました。セカンドキャリアを歩み出そうとするアイドルさんたちと「一緒に何かできないかな」と考えた結果、この企画が生まれました。
――小山さんご自身もアイドル活動のご経験があるそうですね。
小山:当時、私は本当に地下(アイドル)の深いところにいて。地下アイドルブームはその少し後に来たので、大学生時代、細々と秋葉原や渋谷を中心に活動していました。
活動の中では、ファンの方とチェキを撮ったり、ライブを行ったり。私はそれだけでは全然食べていけなかったので、大学に通いつつ、家庭教師のアルバイトもやりながらアイドル活動をしていました。
――大学と家庭教師とアイドル活動って相当忙しい毎日ですよね。
小山:忙しい毎日でしたが、本当に幸せでした。私は歌も下手で、ダンスも習ったことがありませんでしたが、イチから手探りで活動して。今やりたいと思ってもできないことですし、人生は1度きりなので、やって良かったと思っています。
当時はまだ『SHOWROOM』(ライブ配信ができるストリーミングサービス)がまだここまで広まっていなくて、主流はTwitter、配信をするならニコ生(ニコニコ生放送)でした。
「今回こうやってみたけどダメだったから、次はこうやってみよう」というトライ&エラーの連続でした。今思えば、成功か失敗かなんて自分でははっきりとわからないですし、常に模索していましたね。
――当時と比べて時代の流れは感じますか?
小山:今は配信サービスが増えて、ファンとの時間をより作りやすくなりました。
ライブや物販っていうとステージの上の時間を思い浮かべがちですが、移動やリハーサル、対バンの中空きの時間を含めると見えない時間がかなりあります。そういった時間を、配信サービスに充てたりすると現場に来られない地方ファンの方とも交流できますし、支えたいファンと支えられたいアイドルが結びつけられることは、win winですよね。
――そもそもアイドルをやられたきっかけは?
小山:私は元々アイドルが大好きで、小さい頃、お小遣いの全てをモーニング娘。さんのグッズにつぎ込むような子だったんです。ハロショまで親に連れてきてもらって、どの生写真を買うか真剣に悩んでいましたし、コンサートは何公演もファミリー席を申し込んで、「お母さん飽きちゃうよ」って怒られたり。いわゆるアイドルオタクですね。
アイドル活動は、仲の良かったオタク友達に誘われて「この子とやるならいいかな」って始めました。事務所も私が一期生というか、すごくこじんまりとしていて、手探りで「どんなライブにしようか」「どんな物販にしようか」と、ゼロイチで考えるものが多かったんです。逆に裁量権が自分たちにもあるという状況は、楽しかったです。
当時、一緒に活動していた友達が今も「ゆるめるモ!」のメンバーとして活躍していますし、別の場所にいてもお互い頑張っているなぁと元気をもらいます。
普段は『アメトーーク!』の制作ADとして活躍 小山テリハさん「番組はどこまでも出演者ファースト」

――アイドル活動が、なぜテレビ局への入社につながったのでしょうか?
小山:正直、学生時代には誇れるようなことがなくて、いわゆる就活は自分に向いていないと思っていたので、全部ダメだったら自分でできることをしようと思っていました。
面接官の女性の方に、「生誕祭で、ファンはどのくらい来てくれたの?」と聞かれて、恥ずかしすぎて言えなくて、ボソッと答えたのですが、それを「すごいじゃない」と言ってもらえて。
自分の活動を外の世界の誰かに肯定されたのが初めてだったので、泣きそうになったのを今でも覚えています。もう落ちてもいいから、その言葉をいただけでよかった、救われたと思いました。
そんなこんなでご縁があり、テレビ朝日に入社しました。
――小山さんの話から「アイドルの皆に幸せになって欲しい」という気持ちが伝わってきます。
小山:今ADとして担当している『アメトーーク!』はとにかく“出演者ファースト”で、エグゼクティブ・プロデューサーである加地さんが、出演する芸人さんの面白さを最大限に引き出す、愛のある番組作りをされています。私もいつのまにか、出演者に寄り添った“出演者ファースト”の番組作りが身に着いたのかもしれません。
――“出演者ファースト”ってすごく素敵ですね。そして、小山さんなら“アイドルファースト”な番組を作ってくれると期待しちゃいます。
小山:私はまだ入社3年目で出演者のアイドルさんとも年齢が近いので、打ち合わせでも「話しやすい」と思ってくれたらうれしいですね。アイドルさんたちそれぞれの魅力を少しでも引き出せたら。
今アイドル人口は1万人と言われていて、前職がアイドルの方、そうなっていく現役の方々を含めると、本当にたくさんいます。今回の『悩める前職:アイドルちゃん~アイドルやめて何するの?~』の企画では叶わなかったのですが、アイドルさんたちに企業のインターンで働いてもらうなど、アイドル以外も経験できるような“職業体験”もやりたいと思っています。第2弾の企画が通れば……(笑)。
――そのほか番組では、アイドル卒業後のキャリアを考えたプロジェクト「Stand-Up! Project」を紹介するシーンもありました。
小山:番組で紹介させていただいた株式会社MAGES.さんの「Stand-Up! Project」は、代表取締役会長の志倉千代丸さんが立ち上げたプロジェクトで、アイドル卒業後に関連企業への就職をサポートしています。
実際にMAGES.さんに就職したアイドルの2人は、社内でもしっかり仕事をしていて、良い評価を受けています。アイドルのときも充分魅力的でしたが、アイドル経験が次のキャリアに活かせていて、本当に素晴らしいと思いました。
――アイドル活動が人生の糧(かて)になるような、そんな子たちが増えるといいですね。
小山:アイドル活動はやっている中で「つらい」と思ってしまうこともありますし、極論、本気だからこそ悩んでいる時間の方が多いかもしれません。でも、結果として「アイドルやってよかった」と思っていてくれていたらいいなと願っています。
例えば、結婚して娘ができたとき「お母さんはね、昔アイドルをやっていたんだよ」って見せられるのってすごく素敵だと思っていて。
今後も、今しかないこの時間を自分の表現のため、待っているファンのため、命をかけて活動している人達にスポットライトを当てられるような番組を作っていきたいと思っています。

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「“推し”が卒業しても地球のどこかで幸せに暮らして欲しい。今日もどこかで生きていて、おいしいご飯を食べていてくれればそれで良い」と“アイドル愛”を語る小山さん。今後“やってみたいこと”として「私にだから引き出せる、その人の魅力が詰まったアイドルバラエティー番組を作りたいです」と明かした。
地上波でも人気を博した『悩める前職:アイドルちゃん~アイドルやめて何するの?~』は、AbemaTVで1月27日・よる8時から、地上波未公開シーンを入れて特別放送。
(C)テレビ朝日
(テキスト:中村梢/写真:You Ishii)