1月19日(土)インドネシア・ジャカルタで開催された総合格闘技「ONE Championship」。2019年の初戦となる「ONE: ETERNAL GLORY」のメインイベントに登場した猿田洋祐が王者・ジョシュア・パシオに2-1の判定で勝利、日本人では2人目となるONE世界ストロー級タイトルを奪取した。
5Rフルでの判定にもつれ込む大接戦だった。1Rパシオの右のハイキックが猿田の側頭部をかすめるが、果敢に飛び込んだ猿田が序盤にテイクダウンに成功。押さえ込むも決定打に欠き、寝技の攻防のスキをつきスタンドでの攻防へ。パシオの強烈なローをもらうが、距離感を探りながらラウンドを終えた。
2Rゴングと同時に一歩踏み込み伸びる左ストレートを一発叩きこんだ猿田は、振り回すような右フックと打撃のバリエーションを見せる。一方のパシオも回転蹴りなど派手な動きもみせて距離を取った。ケージ際に追い込んで再び猿田がテイクダウンを仕掛けるも、パシオの粘り腰に阻まれる。スタンドでも攻防でも猿田が左右を打ち分け優位に進める。手数足数をみせる猿田に対しパシオは強烈な右ハイなど一発で打開を狙う展開となった。後半も猿田の手数が勝るが、若い王者もバックブローなど危険な一撃で対抗。終了間際、猿田も2度目のテイクダウン、さらにボディへ左を叩き込むなどインパクトを残した。
3R序盤に早々とテイクダウンを取ったのは猿田だが、パシオも下からのフロントチョークで応戦。スタンドの攻防では、両者互角の攻防から残り30秒でのあわやというパシオのスピンキック、2段蹴りぎみの左ハイと見せ場を作る。4Rは猿田の高速タックルによるテイクダウンからスタートし、まだまだ余力を残すパシオを振りほどく。しかしさらにしつこく猿田が、崩されながらも2度、3度とタックルでテイクダウン。ケージ際で押し込み相手のスタミナを削り、後半に再び片足タックルを仕掛けた。
最終となる5Rは前ラウンドから一転、打撃による激しい攻防。4ラウンドフルで戦いながらも前に出ることも止めない猿田。下がり気味に一撃を狙うパシオ。振り回わす右フック2発、テイクダウンからパウンドと攻めるが、パシオも体を入れ替え余力がまだあることを示し王者としての意地を見せる。最後はテイクダウンから猿田のパウンドで25分のフルラウンドを終了した。
新王者となった猿田は「ONEと契約して1カ月半、アレックス・シウバ選手とパシオ選手という世界のトップと対戦して勝つことができました。これで自分が世界一ということが証明できたと思います」とコメント。「両足のタックルを切られても何度も何度もいきましたが、パシオ選手には驚かされましたか?」という質問には「組ワザの力が伸びていると感じました。自分も途中から戦略を変えて、ハイクラッチのシングルレッグに切り替えて上手く行きました」と、両足タックルから片足タックルへの途中での戦略変更が、試合後半のテイクダウンに成功した要因であることを振り返った。
今回の猿田の勝利からは、昨年多くの日本人選手が挑戦し、苦労したONE FCの戦い方への対応もうかがえる。昨年、パシオにタイトルを奪われた内藤のび太は殆どのラウンドで上になりながらも判定負けとなってしまった例もある。猿田の今回の勝利で印象的だったのは、テイクダウン後の寝技の攻防で、強弱ありながらも拳や肘と打撃を止めなかったこと。スタンドでも積極的に前に出ながら、終始パシオが下がる場面を作ったことが要因に挙げられる。単発の強い攻撃を狙う相手に対し同じくスタンドでも手数やパンチの上下の打ち分けなども目立っていた。試合内容だけ見ると猿田の圧倒的な手数とテイクダウン数だが、ジャッジは2-1の僅差。タイトル奪取に成功したとはいえONEのルールの難しさを再認識する試合でもあった。
本人のコメントどおり先月の緊急参戦から僅か2戦でストロー級王座に駆け上がった猿田だが、今後のチャンピオンロードはより厳しくなることが予想される。今回の大会でメディカルチェックの結果を受け、惜しくも挑戦権を失い欠場となった鈴木隼人。そしてパシオを圧倒しながらも判定負けを喫した内藤のび太と日本人の強豪がひしめく階級でもある。さらに試合後のインタビューでの発言を受けDEEPストロー級王者の越智晴雄も「世界一は自分です」と挑戦に名乗りを挙げた。
数カ月前の予想どおり、ONEストロー級は文字通り「日本人がひしめき合う激戦の階級」となった。話題は早くも3月31日に両国国技館で初開催される「ONE:A NEW ERA -新時代-」での猿田の挑戦者をめぐる駆け引きに移行している。戴冠間もない新王者だが「飛猿(猿田のニックネーム)包囲網」は、すでにはじまっているのだ。
(C)AbemaTV