アジアカップを戦う森保ジャパンを、キャプテンとして引っ張っているのが吉田麻也だ。
イングランド・プレミアリーグでプレーするDFリーダーが、左腕に腕章を巻くようになったのはロシアW杯後。偉大なキャプテンだった長谷部誠の後を継ぎ、日本代表のまとめ役を任された。
フットサル界には、吉田のように未来の日本のリーダーと目される選手がいる。Fリーグ選抜のキャプテン、三笠貴史だ。
チームをコントロールできる中心選手へ
Fリーグ選抜は若い選手に出場機会を与え、フットサル界の底上げを計るという目的で結成されたチームだ。Fリーグの各クラブに所属する23歳以下の若手選手を対象にセレクションを行い、14人のメンバーが集められた。
経験のない選手だけでトップリーグを戦うという実験的な試みに、「1勝もできないんじゃないか」「まともに戦えるはずがない」と見る向きは少なくなかった。だが、蓋を開けてみればFリーグ選抜はいい意味で予想を裏切った。
開幕から3連敗を喫したものの、第4節でアグレミーナ浜松から初勝利を挙げると、第5節では優勝候補のペスカドーラ町田に3-0で完勝。日本中のフットサルファンを驚かせたのだ。100%フットサルに専念できる生活と、コンスタントに試合に出られる環境によって、若い選手たちは飛躍的に伸びていく。
台風の目となったチームで、吉田麻也のごとく大黒柱になっているのが三笠貴史だ。シーズン開幕前、三笠は自分からキャプテンをやりたいと申し出た。あえて、ほかの選手よりもプレッシャーのかかる立場に身を置くことで、さまざまな面で成長したいという思いがあったのだ。
「日本代表に選ばれているフィクソ(=サッカーでいうDF)の選手はゲームをコントロールしなければいけないですし、チームのことも分かっていないといけない。役割的にもキャプテンとかぶっていると思いました」
相手のピヴォ(=サッカーでいうFW)を抑えるのはもちろん、周りの選手を生かすゲームメイク、持ち味である中長距離のシュートでゴールを積極的に狙う。
Fリーグ選抜で確固たるポジションを築いた三笠。だが、本当に重要なのは同年代の選手の中心選手なることではなく、所属元であるフウガドールすみだで中心選手としてプレーすることだ。
「もしも、次の1年で結果を出せなかったら消えてしまうんじゃないかなと思っています。今は『Fリーグ選抜』にいるということで取り上げてもらえますが、クラブ(すみだ)に戻って活躍できなかったら忘れられてしまうんだろうなと思っています」
チームの中心選手として必要なものや、勝敗を背負って戦うことの大変さをこの1年で学んだ。若手をまとめ上げる存在から、1つのクラブをまとめ上げる存在へ――。貪欲なキャプテンは、Fリーグ選抜を勝利に導くために、最後まで戦い続ける。
文・舞野隼大(SAL編集部)
(C)AbemaTV