若者の間で、SNSと医療が切っても切れない関係になっている。街で「体調が悪くなったらまず何をしているか」と尋ねてみると、「Yahoo!とかGoogleで調べる。」「Twitterで」といった声のほか、とりわけ若い女性を中心に、「インスタで調べる。写真がついていると分かりやすい」「何があってもとりあえずインスタ」と、Instagramを挙げる人が多かった。
「お腹が痛くなったりしたらハッシュタグで調べれば出てくる。薬の画像とか自撮りで載せている人とか結構いる」。
「冷え性にならないように。半身浴みたいなやつがイラストで描いてある」。
ファッションやグルメなど、おしゃれな情報を写真や動画で発信するイメージの強かったInstagramだが、文字だけでは分かりにくい検索結果も、画像が多く一目瞭然であることから、最近では"検索ツール"として用いられることも多いようだ。
内科医で作家のおおたわ史絵医師は「私たちがインフルエンザや風邪のこと、ノロウイルスのことを正しく伝えたいと思っても、直接喋れる人は100人くらいがやっとだ。それがインスタグラムに限らずSNSを使えば、あっという間に何十万人、何百万人に伝わる。正しい情報を載せさえすれば、非常に有用なツールだ」と話す。
その一方、出回っている情報の中には、嘘か本当なのか、医療関係者でなければ判別できない情報も少なくない。実際、「しゃっくりの時に塩水を飲むとか。コップに割りばしをバッテンにして1個ずつ飲むと止まるとか。全部やったが効果がなかった」「ニキビをつぶしたらきれいに治るとか」「歯磨き粉を塗ったらニキビが治る。すごいスースーした」「芸能人とかフォロワーが多かったら信じちゃうかも」「いいね!がいっぱいあったら信じる」と、昔から言われてきた民間療法も含め、様々な情報が流布していることがわかる。Instagram上でも「ワクチンの毒素は体中のプルプルした組織に溜まり癌の原因になる」「紅茶はインフルエンザウイルスを無力化する」といった情報も拡散していた。
おおたわ医師は"ワクチンの毒素"情報について「これは一文字もあっていないので忘れてもらった方がいい」と断言、さらに紅茶に関する情報についても「最近これはものすごく言われている説だが、出どころがよく分からない。色素成分は非常に抗酸化作用が強く、免疫能力にも関わるだろうと言われているが、紅茶でなければいけないのかというのは分からないところだ。色々な論文も出ているが、それらも"紅茶推しをしたいのでこの論文を何とか""今年は抹茶でいきたいのでこの論文を"という"メーカーありき"の側面もあるので、100%鵜呑みにする必要はない。"熱もあって水分をとりたいんだったら"紅茶をお飲みになればいい、というくらいだ」と説明した。
そんな現状に懸念を抱き、小児科医として勤務する傍ら、SNSで「ぱぱしょー(papa_syo)」の名前で医療情報を発信しているのが大阪南医療センターの加納友環医師だ。「誰でも自由に投稿できるので、根拠のない情報も入ってきてしまうことは認識してもらいたい。インスタグラムの場合はリツイートの機能はないので、間違っていても修正されずにそのまま残ってしまう可能性がある」。加納氏ら医療関係者は、昨年11月から自主的に「#インスタ医療団」としてInstagram上をパトロール、子供が嘔吐してしまった際の対処法など、医学的根拠に基づく情報をイラスト付きで分かりやすくまとめて発信している。
加納氏やインスタ医療団の活動を当初から知るBuzzFeed Japanで医療記者の朽木誠一郎氏は「私が知っている人だけでも5、6人の方が関わっている。今はそれ以上に広がっていると思う。診療で忙しい中、イラストも作られていて、本当に頭が下がる。専門家の方は自身で情報発信できるが、私たちメディアの場合、専門家に取材をし、作った画像や文章を見て頂く。それが戻ってきてようやく発信できるので、情報発信のための手数が多くなってしまう。メディアの人間としてはもっと頑張らないといけないなと思う」と話す。
朽木氏によると、不正確な記事や著作権を無視した記事が炎上、運営元のDeNAが謝罪しサイトが無期限休止に追い込まれた「WELQ」騒動以降、Googleの検索エンジンは医療機関や行政の情報が上位に表示される仕組みに改善されたのだという。また、SNS上の誤った情報についても、ファクトチェックの機運が高まり、正しい情報が拡散するようになりつつあるという。
「ただ、それがInstagramのように、よりクローズドで、自分の知り合いに向かって発信できるSNSがこの先問題になっていくのではないかという気がしている。一つは、自分たちが使っているサービスがどういう構造で運用されているのかを知ること。特性を知ることで危険を防げる。もう一つ大事なことが、"人は信じたいことを信じる"ということ。特にInstagramはファンを作りやすいSNSだと思う。ハッシュタグを検索し、能動的に見たいものを見にいっているので、信じ込みやすくなっているということに自覚的になれたら良いと思う」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


















