ビッグマウス――。その言葉の意味を調べると、大口を叩くこと、口の軽い人、ホラ吹きなどネガティブな要素が強い。しかしスポーツの世界ではあえて「ビッグマウス」を貫くことで自らの退路を断ち困難に挑む場合が多い。まず思い浮かぶのは本田圭佑だろう。
これまでも数々の言動で話題を集めてきた本田。4年に一度のワールドカップで常に「優勝」を口にしてきた。それは本気でW杯優勝を信じているからであり、自分にプレッシャーをかけるためでもある。彼が発する真実味のある言葉に周囲は引き上げられ、そして彼自身もまた、それによって大きく成長してきたことは間違いない。
フットサル界にも本田と同じように、自分自身の言葉でプレッシャーをかけ、大きく成長しようとしている選手がいる。それがエスポラーダ北海道の木村優太、19歳だ。
日本代表として結果を残すために
「ゲームが崩れれば自分のせい。逆にうまくいけば自分のお陰」
Fリーグ1年目だが、木村はそうやって自分にプレッシャーをかけてプレーしている。
Fリーグでは高校までサッカーをプレーしてその後フットサルを選択する選手が多いが、木村は中学まで続けていたサッカーを辞めて高校からフットサルをするために旭川へ移住。部活動も行わず、高校卒業までの3年間はフットサル社会人リーグのディヴェルティード旭川で大人に混ざってフットサルをプレーしていた。
多くの選手たちよりも3年も早くフットサルをプレーしてきた木村は、セレクションを経て北海道へ入団。同期入団の誰よりもフットサルを熟知しており、すぐにチームの主力となって活躍。そのパフォーマンスが認められてU-19フットサル日本代表のメンバーに選出されるなど、これからの日本のフットサル界を背負って立つ存在としても期待されている。
北海道の入団コメントで「日本代表を目指せる選手になる」と語るなど、早くから日本代表として世界と戦うビジョンを持っていた木村にとって、アンダーカテゴリーでのプレーは大事な一歩。チームの主力として戦いつつ、U-19日本代表としてプレーすることでより自信を深めているからこそ、「ゲームが崩れれば自分のせい。逆にうまくいけば自分のお陰」という“ビッグマウス”が、ただの強がりではなく、真実味を帯びた言葉に聞こえてくるのだ。
そうした自信の表れから「日本代表を目指す選手」ではなく「日本代表で活躍する選手」へと目標を上方修正した。
「日本代表は常に目指しています。そして代表に選ばれるだけではなくて、そこで結果を残す。U-19でも代表のユニフォームを着ていますが、一番上のカテゴリーでもまた着られるように頑張りたいです。代表のユニフォームの重みは違いますから」
あえて自分にプレッシャーをかけることで退路を断ち、前だけを見据えて突き進む。世界を舞台に戦ってきた本田圭佑のように、木村はこれからも、着実に階段を上っていく――。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
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