
自他ともに認める“絶世のブス”でウェディングプランナーとして働く香澄と、ブス好きを自称するイケメン上司・久世の恋模様を描いた『Bの戦場』(3月15日全国ロードショー/配給:KATSU-do)。ゆきた志旗の同名シリーズの小説を、お笑いコンビ「ガンバレルーヤ」のよしこの初主演で映画化したラブコメディだ。よしこ演じる香澄に対して好意を込めて「どブス」呼ばわりし、突然プロポーズまでしてしまう上司の久世課長を速水もこみち、香澄の友達で好意を寄せるフラワーコーディネイターの武内を大野拓朗が演じ、監督はドラマ「最高の離婚」「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」などの並木道子。数々のヒットドラマを演出してきた気鋭の女流演出家だけに、笑いを誘いながらも恋に仕事に頑張る女性たちが思わず共感してしまいそうなシーンや、胸キュン要素もたっぷり。そんな作品で、異色のカップルを演じたよしこと速水もこみちにインタビュー。芸人らしく笑いを取りボケるよしこと、そんな彼女に絶妙なフォローを見せる速水。2人ならではの撮影の裏話を明かしてくれた。
よしこ、速水もこみちとのラブストーリーに「運を使い過ぎた」

--今回のオファーが来た時、どんな気持ちでしたか?
よしこ:私は演技自体が初めてだったし、“ブス”という役だと聞いたので、 どう役作りしたらいいのかちょっと不安でした。普段はそうじゃないんで…(笑)。でも、キャストのみなさんも監督もスタッフの方たちもとてもいい方たちで、演技が未熟な私に付き合って、教えて下さったんですよ。本当にすごくいいチームでした。
速水 :撮影は1カ月ちょっとでしたよね。その前から準備やリハーサルもあって、僕とよしこさんは、なんだかんだで2カ月ぐらい一緒にいたと思います。
よしこ:そうでしたね。
速水:僕はお話をいただいた時に、素直に面白い話だと思ったんです。普通、“ブス”ってネガティブなイメージがあるけれど、この作品ではそうじゃない。むしろ、すごくボジティブな感じに捉えている。それに、僕が演じる久世と、よしこさん演じる香澄の関係性にはコミカルな部分もあるんだけど、2人のラブストーリーはとても純粋なんです。それで、ぜひやってみたいなと思いました。
--共演する前はお互い、どんなイメージを持っていたんですか?
速水:そのまんまのイメージですよね。よしこさんをテレビで見ない日はありませんし。僕はもう料理人ですし(笑)。
よしこ:えっ、速水さんは料理人なんですか!? 料理もやってらっしゃるなとは思いましたけど、私は速水さんと言えば、やはりイケメン俳優というイメージで。昔から女性に人気だった。そんな方と共演できるなんて、めちゃくちゃ嬉しくて。幸せ過ぎて、この後、不幸なことがあるんじゃないかってぐらい。これで運を使い過ぎたかもしれませんね。
速水:現場には大野拓朗さんもいて、僕と香澄をめぐって三角関係みたいな感じになりますからね。よしこさんにとっては、ちょっと贅沢な感じだったんじゃないですか?(笑)
よしこ:めちゃくちゃ贅沢ですよ。フフフフフ♡ こんなイケメン2人に取り合われるなんて、普通に生きていたらなかなかないことなので、撮影中、私は本当に恋してましたね。後で引きずるぐらいに…。

速水:大野さんが演じる武内は久世よりも、もっと近しい役どころで。よしこさんと気心も知れている。それがとてもナチュラルだから、観ていてちょっと妬けちゃうぐらいでした(笑)。
よしこ:ホ、ホントですか♡ 速水もこみちさんに嫉妬される女ってなかなかいないですよね(笑)。
速水:ですけど、昨年の4月に沖縄で開催された沖縄国際映画祭ではよしこさんは他の役者さんをずっと見てたんですよ。
--それはどういう状況だったんですか?
よしこ:映画祭でレッドカーペットを歩いていたら俳優さんがたくさんいて……。皆さんすごいカッコ良くて。もちろん、もこみちさんもすごくカッコイイんですけど。
速水:よしこさんを真ん中にして大野さんと僕とで両脇で腕を組んで、3人で歩いてたんです。その時、どこ向いてるんだろうなと思ったら、よしこさんは後ろにいた俳優さんを見てました(笑)。
よしこ:女って罪ですよね、たくさんの人を愛せるというか。イケメンなら、全員愛せますから。
速水:(笑)
ドキドキしすぎてほぼドキュメンタリー 監督からも「恋してるでしょ?」と指摘

--映画では、お笑い芸人としてのよしこさんの時には見られない表情や姿がありました。演技をしてみてどうでしたか?
よしこ:「月9のヒロインみたいに」って監督さんからも言われたので、その気になって演じてました。それに、香澄ちゃんはとてもまっすぐな女の子で、芯もしっかりしていたので、少しでも素敵に演じたいと思いました。
速水:監督も本当によしこさんのことが大好きだったみたいで、現場でもじっくりと話し合って役を仕上げていったところもありますよね。
よしこ:並木監督が一生懸命、演技指導をしてくださったんです。すごくきれいで女優さんみたいな監督さんで。カメラが回る前に、演技の見本を見せてくれるんです。その演技がとても綺麗だから、その後、私が何回やってもしっくりこない。なんか正解と違うみたいな感じで(笑)。もこみちさんとも撮影の合間に、読み合わせしてもらいました。現場はとてもあたたかい人たちが集まっていて、楽しかったというイメージしかないですね。
--速水さんから見て、演技をしているよしこさんをどう感じましたか?
速水:もともとよしこさんはベースに明るいよしこさんがいると思うんですけど、演じている時はお笑いの時の表情とは全く違っていました。今回は演技が初めてなので、最初は緊張されていたと思うんですけど、撮影の合間にずっと一人でセリフを何度も練習していたり。走ってきた後という設定のシーンがあって、ずっと走って息の上がった状態を維持してました。
よしこ:私が休憩中も走っているので、もこみちさんが「そんなに走ったら疲れちゃいますよ」って心配してくださったのに、それを振り切ってやっていたんです。そしたら、その後の撮影が眠くなり、後悔したことがありました。
速水:でも、よしこさんの一生懸命な姿を見て、現場も「よしこさんのために一生懸命やろう」って心が動いたんですよ。

--久世課長が香澄に壁ドンやあごクイをしたり。ドキドキするシーンがいろいろありましたが、二人でどんな打ち合わせをしたのですか?
よしこ:私はもこみちさんに身を任せるというか、普通にドキドキしていたら良かったので。私としては、“ごほうびタイム”ぐらいに思ってました。本当にキュンとして、それが顔にも出ちゃて。監督には「今、キュンとしてましたね。ちょっと恋してるでしょ?」ってバレバレ。まるでドキュメンタリーのように、リアルな私の恋を映してもらっているような感じでした。
速水:壁ドンもあごクイも、僕の世代にはなかったシチュエーションなんです。だから、慣れてなくて。
よしこ:えー、本当ですか、意外ですね。
速水:いや、とんでもない。初めてでしたよ。
よしこ:でも、お上手でしたよ。初めてのあごクイ♡
速水:ただ、ちょっとよしこさんの素敵な脂で、手がつるっと滑っちゃって(笑)。
よしこ:(笑)私、5分に1回、メイク直ししないと顔に脂が出ちゃって。とくに、すごかったですよね、あの時は。
速水:(笑)
速水もこみちは撮影合間も料理の話ばかり?

――作品の中ではよしこさんのコメディタッチのお芝居もありましたが、お笑いとコメディなお芝居には違いがありましたか?
よしこ:いつものコントみたいに、「ボケます」みたいな感じでやらないようにしていました。というか、私、恋をするとボケられなくなるんです。芸人としては最悪なんですけど(笑)。今回の現場ではイケメンに囲まれて、普通に恋を楽しんでいる感じになっちゃって。だから、コメディタッチに演じなくてはいけないところも恥ずかしくなったり、つい忘れてしまったり。監督さんが指導してくださったおかげで、うまくやれたんじゃないかと思います。
速水:いやいや、そう言うけど、よしこさんは自然に笑いを取ってしまうんです。そこはスゴイ! 改めていろんな意味で刺激も受けましたよ、さすがだなーって。
よしこ:嬉しいです♡
――よしこさんから見て、速水さんのコメディのセンスはいかがでしたか?
よしこ:とてもあると思いました。試写会場の雰囲気を見たとき、みなさんは香澄ちゃんより久世課長で笑ってるんじゃないかなという印象があるぐらいです。役柄の設定もありますけど、もこみちさん自身もイケメンなのに気取ってない。ちょっと変わってるところもあって…。
速水:えっ、僕、変わってる?
よしこ:変わってますよ。話していても、なんか面白い。
速水:お互い演技しているのに、撮影の合間に話すことは料理だったりとか?(笑)
よしこ:そうなんですよ。自分のことを料理人って言い張って。ロケバスでも聞こえてくる話も料理ばかり。最初の頃、もこみちさんと何を話していいのかわからなかったんです。
俳優さんと芸人じゃ、共通の話題を探すのも難しいし。でも、もこみちさんとは料理の話があった。それで、「朝、何を作るんですか?」と聞いてみたり。そのうち、普段、どんな生活をしてるんだろうとか思っちゃって。一度、夜中の1時ぐらいまで撮影があって。そのときに「いつもはこの時間、僕はもう寝てるから」というので、ますますどんな生活しているのかなと、いろいろと掘りたくなるところがある。そういうのって、芸人さんにも通じるところがあるというか。面白くて魅力がいっぱいある方なんです。
――速水さんから見て、よしこさんの女優としての可能性はどうでしょう?
速水:よしこさんは自身でイタコと仰ってますよね。いろいろな女優さんが降りてくる。バラエティ番組でもよく披露されてますけど、いろんな顔というか表情が作れるから、映画だけでなくドラマなど今後いろんな面を見てみたいですね。
「内面から出て来るものに女の人も男の人も惹かれる」大切なのは前向きでいること

――今回、一番印象に残っているシーンはどこでしょう?
速水:僕はほとんどよしこさんとのシーンだったんです。最初、よしこさんが演じていた香澄は、自分のことを「どブス」と言いながら、「好きだ」という久世に対して受け入れ難いというか。「何、この人?」って感じだったと思うんです。それが会う回数が増えるにつれて、よしこさんも、久世に何か計算があるわけでもないことがわかって、久世のことが気になっていく。その流れがうまく出来ていたなと思ってます。久世が「僕はB専なんだ」といったセリフもあるけれど、ベースはピュアなラブストーリーなんです。それがいい形で2人のシーンに出ているので良かったなと思っています。
よしこ:私は、ラストシーンがとっても好きです。ネタバレになっちゃうので、詳しくは言えませんが……。まるで月9のクライマックスみたいにドラマチックで。ただ、そのとてもロマンチックなシーンでイルミネーションがつくんですが、タイミングが合わなくて。何回も撮り直しになって。スタッフの方たちはすごく大変だったと思うんですけど、私はこのまま電気のトラブルでこの瞬間がずっと続かないかなって思うぐらいに幸せだったんです。
速水:確かにあの時は、二人だけのシーンで、特別な時間でしたよね。
よしこ:あら、ホントに。
速水:僕、嘘はつけないので、素直に言ってますから(キッパリ!)。
――最後に、一般的には容姿がいい方が有利なことが多いですよね。劇中でも、自分の容姿を気にして卑屈になる女性も登場します。でも、よしこさんが演じた香澄は前向きでいつも輝いている。そんな風に素敵に生きるにはどうしたらいいと思いますか?
よしこ:私自身もこの見た目一本で、28年間やってきました。でも、親から「美人、美人」と言われて育ったおかげで、「何でこんな見た目に生まれてきたんだろう」と思ったことがないんです。この映画の香澄ちゃんは、内面がすごくきれいな内面美人。すごく素敵な人だから、久世さんみたいに愛してくれる人もいます。いつも前向きに、仕事と恋愛頑張っていれば、絶対に人生も楽しいと思います。
速水:人によって、好みはさまざまですけど、人間は外見だけじゃなくて、一生懸命仕事をしている姿に惹かれる部分がある。まさにそれが、この映画の見どころにもなってると思うんです。香澄は仕事に対して、ひたむきに頑張るところがあって、そこに久世は惹かれる。内面から出て来るものに女の人も男の人も惹かれるんじゃないのかなと思います。


よしこ/ヘアメイク:内藤森(DEXI)、スタイリスト:石井玲子(DEXI)
速水もこみち/ヘアメイク:赤澤洋平、スタイリスト:冬
テキスト:前田かおり
写真:You Ishii
(c)ゆきた志旗/集英社 (c)吉本興業
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