
精巣がんであることを公表し、現在闘病する日々をブログにつづっているNosuke。ブログ開設・病気公表から3ヶ月。病気発覚までを赤裸々に振り返るほか、抜ける髪を剃ってもらう途中の“落ち武者”ヘアーをさらけ出したり、点滴のアラーム音に合わせてセッションしてみたり、大好きなラーメンのことばかりを考えていたり……。そこには、病気と向き合いながら日々を過ごす等身大のNosukeの姿があった。Nosukeはなぜここまで赤裸々に、そして明るく自らの闘病生活を発信することができるのか。そして妻・misonoの支えとは。今回、AbemaTIMESはNosukeにインタビューを実施。なお、インタビューにはマネージャーとしてmisonoも同席している。
misonoとの大喧嘩から始まった闘病ブログ

――ブログ開設1週間で総合1位にランクインと、凄まじい注目度です。おめでとうございます!開設は、misonoさんにすすめられたとのこと。その時のmisonoさんとのやり取りを覚えていますか。
Nosuke:実は、昨年12月時点で、僕はまだ受け止めきれていなかったので何かを発信する心の準備もできていなかったんです。もう少し治療が落ち着いてからでもいいんじゃないかって……。でもmisonoは真逆の意見。性格も正反対なので、まだいいという僕の意見と、とにかく早くっていうmisonoとの意見とがぶつかって。
misono:Nosukeはマメな人でもないので、これまでSNSでのそういった(私生活の)発信はせず、ネットでの反応とかも見ないし気にしない。でも、“Nosukeの場所”で、Nosukeに向けてくる声に Nosukeも救われることがあるかもしれないし、Nosukeのブログで何処かの誰かを救えることがあるかもしれないし……と。病気で落ち込むことも、書けなくなることもあるかもしれない。でも、そういったリアルを出すことで、もし今同じ病気で闘っている人がいるとしたらリアルタイムで一緒に頑張れるし、皆で支え合えたり励まし合えたりするかなと。誤報ばっかりなので、情報交換とかもしてほしいと思いました。
――意見の相違があるなかで、結局開設に至ったきっかけは何だったのでしょう。
Nosuke:納得したほうが、その話が終わると思ったんで(笑)。
――misonoさんから何かアドバイスはあったのでしょうか?
misono:まわりからは、絶対お前は口出しすんなって言われました(笑)。ただ、最初は自分なりの経験で、こうした方がいいんじゃないか?これはしない方がいいんじゃないか?と話しました。でも、だんだん周囲がNosukeのブログは本当に面白い、読みやすいなんて言ってくれるようになってからは、黙っとこうってなりました。
Nosuke:(何か)言われるんだろうなとは思っていましたけどね(笑)。病気じゃない人も読めるような、後からでもふと読み返したくなるものっていうのは意識しようと思っていました。あと、僕はネガティブな文章って読むのが苦手なので、少しでもクスッと笑えるように。
――発信することに一歩踏み出した今、何か心境の変化はありましたか。
Nosuke:(これまで、ブログとは)自己満足のようなことを発信するもの、としか図れていなかったんです。
けど、結局こういう状況になって、僕が発信したことに対するコメントに…本当に助けられたなって。ブログを読んでくれる人たちは、結構積極的に僕の話に“入って”きてくれる。実際に参考になる情報もあるし、乗り越えた人の励ましの言葉もある。かと思えば、まだ診察に行けていないという不安な人もいる。あ、なんか今、自分は「まんなか」にいるっていう感じでいます。だから、強がらなくてもいいし、弱がらなくてもいいのかなと。
――それこそ「ありのまま」。
Nosuke:そうですね。僕の言うことに対して、人が気を配ってくれるところが素敵だなと思いました。声高に自分の主張をするのではなくて、ここには結構心のきれいな人が集まるな、と。やさしい人たちを見たというか……。で、ちょっと感動しちゃって。僕が一方的に発信するつもりだったけど、こんなにもレスポンスがあるなんて思ってもいなかったので、驚きました。
20代~30代の若い世代に多い精巣がん「少しでも誰かの助けになれば」

Nosuke:僕は見つかるのが遅かったんですが、ネットで(腰痛などといった)症状だけを検索しても、「精巣がん」とか「胚細胞腫瘍」っていうワードは出てこず、一体この体調の悪さは何だろうってずっと思っていました。精巣がんは、希少がんです。でも、実は20代~30代の若い世代に多いがんということはあまり知られていません。……もしかして、僕がネットで検索したときに、何か腫瘍やがんの可能性を示唆する内容がヒットしていたら、もっと早く病院に行こうと思ったかもしれない。もちろん、認めたくないと思ったかもしれない。けど、今僕が体験したことをネット上に書いておけば、誰かが僕のブログにいきついて、とりあえず診察してみるかもしれない。少しでもそのきっかけに、また少しでも誰かの助けになれば、と思っています。
misonoへの想い

――闘病生活になり、夫婦関係に変化はありましたか?
Nosuke:(misonoさんの方を向いて)丸くなったよね?(笑)
育ってきた環境とかが違うから、大事にしているものも違うし、生活も違う。(misonoは)そういうものが一緒のほうがいい人だけど、俺は別に違っていてもいい。そういった部分でこれまでに何度もバチバチすることがあったんです。それが、明らかに丸くなりました。
misono:(笑)ストレスがいちばんの敵っていうかから、家族がストレスを与えたらいけないな、と。言う量とか内容は変わらないけど、ちょっと笑いながら言うとか、言葉づかいや言まわしは、意識するようになったかもしれません。あと、Nosukeのブログを通して、絵がこんなに上手だったんだ、とか文章力がこんなにあるんだっていう新発見ができたのは大きかったですし、嬉しかったです。
――絶対的な信頼関係があるから、バチバチできるということでもありますよね。結婚してよかったことは、何ですか?
Nosuke:僕は自分の家庭環境があんまりよくない時期があったので、結婚に対する魅力がわからない反面、絶対いいものだと信じている部分もあった。一生を共にすることに向き合える人と出会えたので、良かったです。ブログに「乗っかればいつも想像以上に最高な結果になることに気づいた」と書いたんですが、misonoは本当に全然、別の次元に連れていってくれる。乗るか乗らないかっていうのはあるけど、絶対僕が悪い方向に行くような道は用意していないので。
完全復帰したら、最初にやりたいこと

――復帰したら、まず最初にやりたいことを教えてください。
Nosuke:ブログ以外でも発信していきたいと思っています。今までは、音楽を通して伝えることがあればいいっていう感じだったんですけど、僕自身に伝えていきたいことができたので。どういう形かはまだわかりませんが、僕が何かをすることで元気になれる人がいるなら、発信し続けていきたいなと思います。
Nosukeは、抗がん剤の副作用で髪が抜けることを受け、misonoと仲間の手で坊主にしてもらったというエピソードをブログにて紹介。真ん中から剃り上げたのは、自身の発案だったという。どんな状況でも面白がる姿勢を見せる姿はさまざまなメディアで大きく取り上げられ、今自分の身に起こっていることを受け止める強さとユーモアを忘れない心は、広く人の心を打った。
そんなNosukeは、最後に「後ろ向きな考えは、もったいない。心の余裕が少し大きくなるだけで、ものごとの捉え方は変わるんです。やりもしないのに諦める姿勢とか、決められた人生でいくのが正解とされるような殻を破って、その人が秘めている何かを出す力になれたら良いなと思います」と話してくれた。

テキスト:吉河未布
写真:野原誠治
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