3月9日の女子格闘技イベントDEEP JEWELS後楽園ホール大会に、浅倉カンナが出場する。一昨年大晦日、RENAを下してRIZIN女子GPを制し、リマッチでも勝利。しかし昨年の大晦日は世界で活躍してきた浜崎朱加とのタイトルマッチで完敗を喫した。今回は出直しの舞台だが、相手はJEWELS王者の前澤智。厳しいマッチメイクなのは間違いない。試練の一戦に臨む浅倉が、率直な心境を語ってくれた。(聞き手・橋本宗洋)
――今回は大晦日以来の試合ですから2カ月ちょっとの試合間隔になります。これは短いほうですよね。
浅倉 負けた試合の後なので、逆に早く決まってよかったと思います。気持ちを切り替えることができたので。負けた後は、早く次に向かいたいんですよ。
――GP優勝以降、RIZIN女子のトップとして闘ってきた中で、タイトルマッチでは敗戦。今はどんな心境ですか?
浅倉 悔しい気持ちもありますし、重圧から解放されて「これからだ」っていう気持ちもあります。RENAさんに勝ってGPで優勝した時も、もっと上がいるっていうのは自分では分かってました。でもチャンピオンとも呼ばれるし、複雑な感じで。大晦日に浜崎さんに負けて、だいぶ差は感じてしまったんですけど。一本負けも初めてで。それで悔しいのと少し楽になったのと、両方ですね。
――それだけ浜崎選手が強かったと。
浅倉 トータルで敵わなかったです。経験の差も感じました。浜崎さんは海外でも闘ってきた選手ですし。2年前に練習した時も、本当にボコボコにされたんですよ(笑)。「こんなに強い人がいるのか」と思って、そこから2年経って、やっぱり経験の差はまだ大きいなって。
――ただ「練習で敵わない」から「タイトルマッチで対戦」という変化はありました。
浅倉 そうですね。練習した時は、試合で闘うようになれるなんて全然思わなかったので。年末にベルトをかけて浜崎さんと試合ができたのは凄く嬉しかったです。今やれたというのもよかった。
――差とか課題を感じて、その上でチャレンジャーとして再出発できますよね。
浅倉 気持ちが新たになってきました。一昨年、RENAさんに勝ってから「あの時みたいに」と思ってた部分があるんですけど、それじゃあ成長したことにならないので。悩みながらやるより楽しんだほうがいいとも思います。海外に練習に行ったのも刺激になりましたね。
――今回の舞台となるDEEP JEWELSでは、浅倉選手の節目の試合をしていますよね。RIZIN女子GP出場者決定戦もJEWELSのリングでした。
浅倉 RIZINより緊張する部分もありますね(笑)。それだけ大事な時に試合を組んでもらっているので。気持ちが入るというか、今回も2連敗は絶対にできないので。前回のJEWELSは石岡(沙織)さんとの試合だったんですけど。
――GP出場者決定戦ですね。
浅倉 はい、あの試合が、自分の中で一番楽しかった試合なんです。気持ちが入ってたから楽しかったんだなって思いますね。そういう特別な感じがあります、JEWELSは。
――復帰戦で、相手がそのイベントのチャンピオンというのも凄いシチュエーションですよね。
浅倉 強い選手なのでスイッチが入りますね。
――前澤選手もRIZIN参戦を望んでるようですし「食ってやろう」という気持ちがあると思います。
浅倉 そうだと思います。でも楽してたら上には行けないので。こういう試合を組んでもらえて感謝してますね。相手も気持ちが入ってるでしょうし、たぶん向こうのほうがスイッチ入れやすいとも思います。それに負けないためには、自分が上からいこうって思わないことが大事ですね。
――RIZINファイターとして「受けて立つ」ではないと。
浅倉 はい、そういう気持ちでいると食われちゃうでしょうね。相手はチャンピオンですし、挑戦者として立ち向かう気持ちです。
――RIZINの女子トップ戦線で活躍する選手とJEWELSのチャンピオン。比較されることもあると思います。
浅倉 それはあるでしょうね。実力が分かりやすいというか。
――浜崎選手は前JEWELS王者の黒部(三奈)選手に圧勝して、浅倉選手にも勝って。現JEWELS王者の前澤選手は黒部選手に接戦で勝っている。そういう状況で浅倉選手と前澤選手がやったらどうなるか、という。
浅倉 私の強さがどれくらいなんだっていうことですよね。それはみんな疑問に思ってるでしょうね。「浅倉カンナは実際、どれくらい強いんだ?」って。
――そういう見られ方は本人からするとどうですか。意識しないようにするのか、あえて受け止めるのか。
浅倉 今回は意識して、プレッシャーにするようにしてます。何も気にしないより、何かに追われてたほうが焦りが出るので。その焦りを練習にぶつけて。プレッシャーを感じないというもの無理なので(笑)。そのプレッシャーをいい方向に持っていけばって感じですね。
――課題にしている動き、理想の勝ち方はありますか。
浅倉 やっぱり一本狙っていきたいですね。今回は厳しい試合ですけど、実力を見せ、ファンの疑問に答えるチャンスでもあるので。
――会場は“格闘技の聖地”後楽園ホールです。
浅倉 久しぶりですね、修斗で試合して以来。その時もケージで、今回もケージなのでそれも久しぶりです。後楽園は試合を見るのも自分が出るのも好きです。選手とお客さんの距離が近くて、熱がこもってる感じがして。
――ケージでの対戦というのもポイントになってきそうです。
浅倉 テイクダウンを狙うにはケージだと有利かもしれないですね。でも打撃もちょっとずつやってるので、見せられたらいいと思ってます。トータルで成長してるなって思ってもらえる試合にしたいですね。
――今年のテーマは何か決めていますか?
浅倉 毎年、全勝が目標なんですよ。ただ去年はそういう目標を決めてなくて「ゴールはどこなんだろう」みたいな感じで。そういう年の最後、大晦日にタイトルマッチで負けてしまったので、今年はベルトに近づくことがテーマですね。
――それは「打倒・浜崎綾朱加」に近づくということでもありますね。
浅倉 はい。正直まだ勝てないと思います。でもそこに近づいていかないと。
――試合から話はそれますけど、前にツイッターで得意料理を「ゆでたまごです」と書いてましたよね。
浅倉 それは料理じゃないだろっていう。しかも、それもたまに失敗しちゃうんですけど(笑)。あとたまごかけご飯も作ります。いま一人暮らしなんですけど、凝った料理を作るなら休む時間にあてたいっていう感じで。本当にシンプルなものしか作らないんですよ。「何か味ついてれば美味しい」っていう感覚なので(笑)。
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