15日、ニュージーランドのクライストチャーチで、イスラム教のモスク2カ所が襲撃された銃乱射事件。警察は28歳のオースラリア人、ブレントン・タラント容疑者を殺人容疑で逮捕した。単独犯とみられている。
この事件で、これまでに50人が死亡しけが人も50人にのぼっている。被害者はサウジアラビアやアフガニスタンなど中東地域からの移民や難民だった。ニュージーランドのアダン首相は16日、「ニュージーランドでもオーストラリアでも、容疑者は要注意人物リストには載っていなかった」とコメント。さらに、事件の9分前に74ページに及ぶ犯行声明を首相を含むおよそ30人以上に送っていたこともわかっている。
16日、裁判所に出廷するも沈黙を貫いたタラント容疑者。しかし、欧米メディアは容疑者のある仕草に注目している。容疑者は3本の指を立て「W」、親指と人差し指で丸を作り「P」を象ったが、これは「White Power」と白人の力を誇示する意味として白人至上主義者の間で使われているサインだという。
今回、タラント容疑者は銃撃の様子を頭につけたカメラで中継。使われたアカウントはFacebookによって削除されたが、その動画は瞬く間に拡散された。Facebookは24時間で150万件を削除したというが、動画はいまだ拡散し続けている。
毎日新聞によると、タラント容疑者は2010年、父親ががんで死去したことをきっかけに欧州を旅行。犯行声明には「フランスではどこにいっても侵略者（移民）がいた」などの記述があり、欧州旅行を通じて排他的な思想を強めていったとみられている。祖母も「海外旅行をしてからあの子はすっかり変わってしまった」と話しているということだ。
今回の事件について、テレビ朝日元アメリカ総局長の名村晃一氏は「ヨーロッパ、特にフランスは移民が多く、極右の人たちが意見を強く主張するようになっていった。米CBSによれば欧州の極右による暴力的な犯罪は増えていて、2017年は前年比で43％増。加速度的に事件が増えている中で容疑者は影響を受けたのだと思う」との見方を示す。
イスラム教徒への憎悪から引き起こされた事件の余波は、隣国オーストラリアにも広がっている。銃乱射事件の原因について「狂信的なイスラム教徒が入国できる移民政策だ」と発言したアニング議員。記者のインタビューに答えている途中、その後頭部にいきなり少年が生卵をぶつける。激昂したアニング議員は少年に平手打ちで応戦。少年は取り押さえられ逮捕されたが、すでに釈放されている。
この少年は複数人によって過剰に押さえつけられたが、名村氏は「ここにあるのは暴力の連鎖。これがまさに人種差別やヘイトクライムの恐ろしさで、議員に卵をぶつける、平手打ちで応酬するというのはそれが凝縮されたような出来事」と指摘。また、銃乱射事件も踏まえ「やられたらやり返すということが瞬間的に起こり、それが憎しみに変わる恐ろしさがある」と述べた。
さらに、影響はアメリカのトランプ大統領にも降りかかっているといい、「タラント容疑者の犯行声明に『トランプ大統領は白人の新たなシンボルだ』と書かれていて、トランプ大統領の移民排斥の考えにつながるような部分がある。しかし、トランプ大統領は世界中に起こる白人至上主義という脅威を軽くみるような発言をしていて、民主党やマスコミは厳しく追求している。ホワイトハウスは火消しに精一杯で、アメリカが“発信地”のように言われている」と懸念を示した。
一方で、憎しみに立ち向かう人もいる。銃乱射事件で妻のフスナさんが犠牲になったファリド・アフマドさん。AFP通信によると、タラント容疑者を許せるかとの問いに「もちろん。最善なことは、許し、寛容であり、愛情と思いやりを持ち、前を向くことだから」「一人の人間として愛すると彼に伝えたい」「人類を破壊するのではなく救う人になれる大きな可能性が、彼自身の中にあると伝えたい。いつの日か、彼が素晴らしい市民となれるよう望み、そう祈っている」と話しているという。
名村氏は「我々からすると理解が難しい感情だが、恐らくこうした事件はどこかで歯止めをかけないと、憎しみ合い・殺し合いが続いてしまうという考えなんだと思う。これ以上の暴力は自分のところで止めたいという気持ちからこれらの言葉になったのでは」と述べた。
（AbemaTV／『けやきヒルズ』より）
▶︎【映像】生卵をぶつけられ平手打ちで応戦する豪議員
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