間もなく放送開始から3周年を迎えるAbemaTV『AbemaPrime』。4月1日からは小川彩佳アナウンサーの後任となる3代目の司会進行として、テレビ朝日アナウンサーの平石直之アナウンサーが担当する。1997年の入社以来、一貫して報道・情報系番組を担当。同僚アナたちからの評価は「誠実で真面目」。入社23年目、ベテランの域に達しつつある平石アナが『AbemaPrime』にかける意気込みを語った。
■新聞記者志望だった学生時代
子どもの頃からニュースが好きで、学生時代は新聞記者になりたかった。「でも、作文はあまり上手くなかったようで(笑)。大学時代、テニスコーチのアルバイトを4年間やっていて、喋ることの方が得意だったようです。テレビ局の入社試験の方が早かったので、アナウンサーになりました」。
入社後まもなく担当した『スーパーモーニング』の「熱血!噂のニューリーダー」というコーナーでは、多くの企業経営者に密着した。上場企業からベンチャー企業まで、様々なタイプの経営者の"カバン持ち"取材は貴重な経験になったと振り返る。その後、平日の帯番組や土日も含め、テレビ朝日が放送するほとんどの報道・情報系番組で仕事をしてきた。「『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』『ニュースステーション』と、憧れていた番組がテレビ朝日には多かったですし、結果的にはやりたかったことが叶ったということですよね。出ていないのは"朝生"くらいかもしれませんね」。
アナウンサーとして全国47都道府県の全てを取材。数多くの海外取材もこなしてきた。2010年に韓国で起きた延坪島砲撃事件では、初めて身の危険も感じた。
「避難する人々を迎えに行く最終の船に乗って島に向かいました。これから島に入るという人はほとんどいない状況です。航行中、北朝鮮が二次砲撃を行うかもしれないというニュースが流れ、船の中が愕然とした雰囲気になりました。上陸し、急いで取材をしたのですが、ある民家で、皮を剥きかけたミカンが置いてあるのに気が付きました。食べようとしている、まさにその時に砲弾が飛んできたのでしょうね。そのミカンの瑞々しさに、非常な生々しさを感じました。怖かったですね」。
現場取材ならではの経験として特に印象に残っていることを尋ねると、「アメリカ大統領選」という答えが返ってきた。
「選挙戦最終盤の3週間を現地で取材したのですが、ニューヨークなどでは、トランプ候補のことをどこか小馬鹿にしているような雰囲気さえありました。一方で、ラストベルトの支持者たちの熱気に触れると、トランプ候補の言葉が彼らの心に刺さっているということが実感できました。あの選挙で、彼がなぜ勝てたのか、その理由がわかるような気がしました」。
■「現場」と「数字」のわかるアナウンサーに
アナウンサーがスタジオでの仕事と現場での仕事を行き来するのは珍しいことではないというが、平石アナの場合、22年間のアナウンサー生活のうち、ほぼ半分の時間を現場で過ごしてきたことが強み。会見場で手を挙げ、質問する平石アナの姿を見たことがある視聴者も多いのではないだろうか。
「普通はスタジオで過ごす方が長くなりますから、僕のような経歴のアナウンサーはあまりいないのかもしれません。『サンデー・フロントライン』『報道ステーションSUNDAY』を担当していた頃は、週に一度の番組で放送する企画のために数日間、外に出ていることもありました。一つのテーマを追いかけるというよりは、その時々の関心度の高いもの、象徴的な場面を押さえるタイプの取材ではありますが、やはりスタジオでVTRを見ているだけではわからない、現場の空気というものに触れてきた自負はあります。片方の意見を聞いただけ、誰かがまとめたものを見ただけで発言するのは危険だということも常に意識しています」。
もう一つ、平石アナが意識しているのが"数字"を見る目だ。1年間のニューヨーク支局勤務を終えて帰国した2005年から、簿記3級、2級を相次いで取得した。
「データに基づかない情報発信を避けるためにも、数字を見る目が必要だと感じる場面が増えていました。テキストと過去問を買って、1日2時間くらいずつ勉強して、合格できました。おかげで数字の切り取り方がおかしいとか、なぜこんなグラフになっているのか、といった疑問が浮かぶようになりました。何かの製品を見る時にも、どうやってこの値段が決まったのか、ビジネスモデルとしてどうなっているのか、ということを自然と考えます。同じ物事を前にした時でも、数字をみることで他の人には見えていないことが見えるようになったのです」。
■炎上覚悟の「Twitterアナウンサー」に
『AbemaPrime』への起用が決まった際には、「やりたい方向性にぴったりだ」とも感じたという。
「報道系の番組を長年やってきて、ここらで何か違うことを経験しないと、自分自身"頭打ち"になってしまうような気がしていました。その意味で、いいチャンスが巡ってきたなと。もともと突き詰めて考えるのが好きなタイプで、1分1秒の速さを争うよりも、一体なぜそうなったのか、背景や意味をみんなで考え、探りたい。朝生に憧れていたのも、ニュースステーションが好きだったのも、スタジオでのトークが好きだったからです。『AbemaPrime』はまさにそういう番組だと思っていました。地上波のニュース番組では"入り口"で終わってしまうことも多いと思うのですが、一味も二味も深い議論をたっぷりとしています。当事者の方々をお招きし、じっくりお話を聞く機会も多いですから、スタジオがまさに"現場"なんですよね」。
1日の出演開始に合わせ、"休眠状態"だったTwitterを再開、フル活用する考えも明かした。
「初代の小松アナも二代目の小川アナもキャラが立っていますし、私が彼らと同じようにやるのは違うと思います。すでに番組としても完成されているので、三代目として飛び込んでいく私としては、さらに番組を知ってもらって、見てもらって、そして参加してもらって、という部分での橋渡し役ができればいいなと。そこでTwitterをしっかりやっていこうかと。実は今までも一応やってはいましたが、超"安全運転"だったので(笑)。小松アナも小川アナもコメント欄などで色々なご意見を浴びていましたし、必ず私もそうなるはずですが(笑)、批判も含め、オープンにしていく役割を担っていきたいなと。"放送"って、読んで字のごとく、送りっぱなしというか、一方通行になっている面もあって、“エスタブリッシュメント”とか“オールドメディア”と言われるものほど、“私たち”と“向こう側”のように感じさせてしまっているようにも見えます。そうならないよう、視聴者のみなさんと一緒に番組を作っていく感じにしていけたらいいなと思っています。放送後の反省会も視聴者の方々を交えてやっている感覚というか。私に決定権はないけれど、言えることは言えると思いますし、番組の窓口として様々なリクエストにもお答えしていきたいですね」。
4月以降の当面の間は、平石アナのツイッターアカウント(@naohiraishi)にメンションを付けて意見や質問をツイートすると、放送前後に本人がリプライするキャンペーンを実施する予定だ。
周りのアナウンサーたちの評価どおり、非常に真面目で仕事熱心さを感じさせる平石アナ。プライベートでの息抜きや趣味について質問すると、「昔はテニスだったんですけどね。最近は機会が減って…。代わりにYouTubeを見ています。討論とか、講演とか、プレゼンテーションを…。面白いんですよ」と回答。「それ、ほとんど仕事じゃないですか」と突っ込まれると、「そうかもしれませんね」と笑っていた。
■プロフィール
ひらいし・なおゆき
1974年生まれ
大阪府出身、佐賀県立鹿島高等学校から早稲田大学政治経済学部卒業。97年4月にテレビ朝日入社後は一貫して報道・情報番組を担当する。「スーパーJチャンネル」リポーターを皮切りに、2004年にはニューヨーク支局特派員として、アメリカ大統領選挙なども取材。2011年から2年間は「やじうまテレビ!(現:グッドモーニング)」のメインキャスター。2016年10月からは「報道ステーション」のフィールドキャスターとして全国各地、海外を飛びまわり取材。「印象でものは言わない」がモットー。誠実・硬派な性格と粘り強い取材姿勢に定評の一方、甘いもの好きスイーツ男子の一面も。
▶平石アナの初登場回は4月1日夜9時から生放送!
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