乾電池とモーターで走るシンプルなマシン、「ミニ四駆」。発売から今年で37年目を迎え、これまでに1億8000万台以上を売り上げている。“世界最小のモータースポーツ”とも呼ばれ、今では国際大会が開かれるほど大人気に。
そんな中、先日都内で開催された“日本初”のミニ四駆の大会をAbemaTV『AbemaMorning』は取材した。
大盛り上がりのレース、コースがあるのはなんと居酒屋の大広間。この大会は有名居酒屋チェーン店・つぼ八が主催したもので、その名も「つぼ八杯(カップ)」。銀座にある本店を貸し切りにして、およそ50人の参加者によるトーナメントレースが行われた。
“居酒屋×ミニ四駆”という異色の組み合わせ。そのきっかけは、ひとつのツイートだった。
「発砲スチロールで #ミニ四駆 コースを作ってみたんです」(一部抜粋)。去年11月、静岡県にある鋳造メーカー・木村鋳造所が公式Twitterでつぶやいたこの一言。これに対して、ミニ四駆の発売元であるタミヤが「発泡スチロールによるオリジナルコースに興味津々です!」と反応。すると、ミニ四駆に関心を持つ企業の広報担当者が自社のTwitterで次々とフォローする展開に。業種の垣根を超えた“SNSの交流”が始まった。
その後、数社の広報担当者が実際に集まり、「オフ会」と呼ばれる懇親会を実施。その場で、異業種対抗のミニ四駆大会の開催が決まったという。
主催者となったつぼ八の社内の反応について、斉藤滋常務は「どんどん話が大きくなって日程まで決めたということで、えーという感じでしたけど、色々な企業とコミュニケーションをとるのはいいことなので『ゴー』を出したと。正直言うともう少し規模は小さいと思っていたが、印象の二倍から三倍ほどの大きさだったので、盛り上がっていていいのではないか」と話す。
大会に参加した企業は、精密機械メーカーや家電量販店、カレーチェーン店など計22社。番組ではそのうち、東京・神田にある老舗画材店・文房堂の広報・鍋田明子さんに密着した。
「ミニ四駆が熱いということと、模型の世界と画材の世界はリンクしている部分があるんだということがわかった。あと個人的に(タミヤ本社がある)静岡生まれなのでミニ四駆を盛り上げたいと思いました」
もともと、ミニ四駆に興味を持っていた鍋田さん。SNS上での盛り上がりを偶然目にし、すぐにTwitterをフォロー。「オフ会」にも参加し、大会に向けてレース用のマシンを初めて制作した。特にこだわったのは、マシンの塗装。画材店のPRを狙ったデザインに仕上げたという。
そんな鍋田さんの熱意に対し、「『それ広報の仕事だから行っておいで』と(上司から)言われた。(上司が)車が好きなので、普段のインスタ映えとか写真映えとかよりも全然食いつきがよかったですね」と職場も後押ししてくれたそうだ。
そして、迎えた大会当日。ミニ四駆歴わずか3カ月の“初心者レーサー”が、老舗画材店の名を背負って初レースに挑んだ。「不安もあったんですけど、他の参加者と走らせてだんだん楽しくなってきたので、今は楽しもうと思っています。わくわくしています」と意気込むた鍋田さん。
ルールは、1周76メートルのコースを計3周走り、そのタイムを競うもの。鍋田さんの初戦の相手は、同じ“老舗”の共通点を持つ有名和菓子店。果たして、勝負の行方は…。
スタートからわずか3秒後、鍋田さんのマシンはまさかのコースアウト。無念の初戦敗退となった。
「これがミニ四駆なのでいいと思います。もうちょっと勉強して、どんなコースも走らせられるようにできたら」
そう笑った鍋田さん。しかし、レースのほかにもうひとつ“負けられない戦い”があった。それは、広報担当としてのPR活動。画材店の仕事ではなかなか接点を持つことができない、異業種の広報担当者と交流を深めた。
ミニ四駆が繋いだ縁は、趣味の枠を超えて新たな可能性を秘めているのかもしれない。
(AbemaTV/『AbemaMorning』より)