3月31日に両国国技館で開催されるONE CHAMPIONSHIP初の日本大会「ONE:NEW ERA」。注目カード目白押しの大会となるが、世界対日本というイシューにこだわるのであれば、それに相応しいのが日本人選手、若松佑弥、和田竜光、仙三の3人がエントリーされ、この日開幕するONEフライ級トーナメントだろう。UFCフライ級絶対王者として君臨したデメトリアス・ジョンソンのONE移籍初戦としても、世界中の格闘技ファンが注目しているのがこのトーナメントだ。
デメトリアス・ジョンソン(DJ)の参戦は、世界の格闘技シーンにおけるONEフライ級の価値を一気に世界基準へと引き上げるほどの画期的な出来事といえる。元UFC世界フライ級王者としてタイトルマッチの勝利数12というジョルジュ・サンピエールに次ぐレコードを持ち、2018年ヘンリー・セフードとのタイトルマッチに判定負けするまで、6年間で13連勝という記録を打ち立てている。異なる階級の選手を比較する「パウンド・フォー・パウンド」では常にDJが最強という高い評価を得ながらもUFCでは強すぎるがゆえに敵なし。また軽量級のコンテンダーの不足などで、徐々に存在感を失っていたのも事実だ。
前述のセフード戦でのタイトル陥落というきっかけもありフライ級の強豪ひしめくアジアをDJが選んだことは「セカンドキャリア」という表現よりは、より強い競争相手との刺激ある戦いの舞台への栄転、およびMMA軽量級の底上げや地位向上などポジティブな要素に溢れている。しかも32歳と脂が乗りきり、さらに磨きがかかる時期にDJの戦いがアメリカではなく、日本やアジア各国で観ることができる。格闘ファンにとって、幸福以外の何ものでもない。
いち早く発表された通り、デメトリアス・ジョンソン(DJ)の対戦相手はパンクラスのランカーで日本気鋭のフライ級選手・若松佑弥だ。パンクラスで新人の登竜門、ネオブラッド・トーナメントを勝ち抜き8連勝、瞬く間にランキングを上げた王者・仙三に挑むも敗戦、しかし次戦では元王者マモルとの壮絶な打撃戦に勝利し、持ち味の真っ向打ち合う魅力をいかんなく発揮した。世界に目を向けONE初戦に臨んだダニー・キンガド戦でも敗れたものの、序盤から積極的なファイトスタイルでONEでの可能性も示した。当然ながら若松のキャリアにおいてDJは最強の相手となるが、鼻っ柱の強い打ち合い必至の戦いに挑むのか、または秘策とともに世界に挑むのか興味は尽きない。
一方、もう一つのカード・和田竜光 対イヴァニルド・デルフィーノが、東京大会から消滅した。イヴァニルドの負傷欠場が原因とされており近日中に別大会で行われる予定だということが、3月27日になって和田本人のアナウンスで明らかになっている。前回のダニー・キンガド戦では後半での減点が響き判定負けとなってしまがったが、DEEPフライ級王者という実績とともに、昨年からONEに参戦し評価されている実力者。近日中に発表されるであろう新たなスケジュールに注目したい。
もう一つのブロックは、カイラット・アクメトフ(カザフスタン)対リース・マクラーレン(オーストラリア)とダニー・キンガド(フィリピン)に駆け込みでパンクラス王者の仙三がエントリーされることになった。
2代目のONE世界王者・カイラット・アクメトフは、ゲヘ・エウスタキーオとアドリアーノ・モラエスの3人でこれまでONEのフライ級を牽引してきた象徴的な選手の一人。この1年で様変わりした同階級での本当の意味での生き残りをかけたトーナメントへの参戦となる。対するリース・マクラーレンもONEでの2敗はバンタム級時代の、ビビアーノ・フェルナンデスとケビン・ベリンゴンと2人の王者相手の敗戦のみ、フライ級では前回の試合で和田を下している。
■8分の3の確率で日本人選手にもチャンスが…
トーナメントの組み合わせが発表された当初、若松佑弥と和田竜光が同じブロックで潰し合いになるという論調も少なからずあったが、先日アンドリュー・レオーネの怪我による欠場発表とともに、当初リザーブ候補にもなかったパンクラス王者・仙三がダニー・キンガドの対戦相手となることが発表された。このことで両ブロックに日本人選手が並ぶことになり、日本の格闘ファンにとっては一層トーナメントが楽しみなものとなったのも確かだ。冒頭で触れた「世界対日本」という切り口はあくまでも日本の観戦者目線。国境や過去の実績も関係なく、東京で総合格闘技のフライ級世界一を決める熱い戦いの幕が切って落とされる。
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