アジア最大級の格闘技イベント・ONE Championshipの女子戦線をリードするのが、アトム級王者のアンジェラ・リーだ。V.V Meiとの2度の激闘でも知られる22歳。3月31日の日本発上陸となる今大会(両国国技館)では、ストロー級王者ション・ジンナンに挑み2階級制覇を狙う。試合を控えたリーにインタビューすると、その言葉からは“アジアの女子ファイター”としての自負や責任感が強く感じられた。
――今回はONE初の日本大会です。元UFC王者のデメトリアス・ジョンソンやエディ・アルバレスも出場する豪華カード。ONEが大きな発展を遂げると予想してましたか?
リー じつはしてました(笑)。今の状況は選手、団体がやってきたことの積み重ねの結果で、まだ成長中ですね。これから日本だけじゃなくオーストラリア、アメリカにも伸びていくと思います。
――ONEのどの部分に可能性を感じますか。
リー ファイターをとても大事にしてくれるので、私たちとしてもより「頑張ろう」という気持ちになりますね。しっかりコミュニケーションが取れて、選手と団体が同じ方向を向いている。それは団体が伸びるにあたって凄く大事なことだと思います。
――ONEとの関係の中で、印象に残っているエピソードは?
リー 私が住んでいるハワイに映像を撮りにきてくれて、自分のストーリーを深く取材してくれたんです。団体側が選手のイメージを作るのではなく、本来の自分を掘り下げてくれた。それは嬉しかったですね。
――今回は日本での初めての試合です。
リー 嬉しいですね。アジア各国で試合をしてきましたけど、日本は試合してみたい国リストのトップだったので。私の試合でONEの新しいファンが増えたらいいなって。2階級制覇も大事なことです。現役を終えたら、選手としての実績は置いていかなければいけない。次の人生に持っていくことはできないんです。だからこそ、現役の時にやれるだけのことをやりたい。
――アンジェラさんはカナダ出身で、その後ハワイへ。アジアの大会であるONE参戦を決めた理由はどこにあったんですか。
リー プロのファイターとしてやっていくにあたって、どこに出場するか。父といろいろ考えている時に、ONEに魅力を感じました。父親がシンガポール出身なので、ONEの拠点がシンガポールというのも大きかったですし、ONEがシンガポールの格闘技カルチャーを変えたというのも凄いと思いました。私が子供のころに行ったシンガポールでは、MMAなんて全然普及してなかったですから。ONEが、MMAという新しいスポーツをシンガポールに持ち込んだんです。
――女子に関して言えば、アンジェラさんの影響力も大きいんじゃないですか。
リー そう思ってもらえると、とても嬉しいです。私がONEで闘い始めたのは、アメリカで女子MMAが注目されてきた頃。でもアジアでの注目度はアメリカほどではありませんでした。だからONEでの私の試合、スキルを評価してもらえるのは本当に光栄です。私がONEで闘うこと、成功することは、プロを目指すたくさんの女性へのメッセージにもなると思うので。「自分が好きなことをやって、こういう様な成功できるんだよ」って。
――アンジェラさんを見て格闘技を始めた女性も多いでしょうね。
リー そういうメッセージをもらうこともあって嬉しいですね。直接、言ってくれる人もいました。女性が格闘技を始めるということは、それだけ格闘技をいい形でプロモーションできているということなのかと思います。「バイオレンス」、「乱暴」ではないイメージを与えることができているのかなって。親が子供に格闘技を習わせたいと思うようになるというのが、とても大事だと思ってます。
――アンジェラさんのご両親も格闘家ですよね。
リー なので、私は生活の一部、遊びのような感じで格闘技に接していました。「格闘技を習う」という感じでもなくて。それがよかったのかなとも思います。格闘技は、誰かにやらされることではないので。私もそうなんです。親が格闘技をやっていても「やらされた」ことは一度もないので。
――ご両親はテコンドーの選手でしたよね。
リー ナショナルレベルのテコンドーの選手でした。競技を終えた後は指導者になって、セルフディフェンスのための格闘技を教えていたんです。いろんな格闘技を融合させた、カナダ版のMMAみたいな感じですね。25年前の話です。その頃のカナダはジムも少なかったし、MMAは普及してなかったと思うんですけど。
――じゃあ、リー家がカナダのMMAのオリジンの一つというか。
リー そう、それは凄く誇りに思ってます。両親がどれだけ努力してきたかっていうのも知ってますし。私にとって、ONEで活躍することは親に恩返しができるっていうことでもあるんです。
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