群雄割拠のアイドル戦国時代。多くのアイドルが斬新な方向性を打ち出しファンを拡大するなか、一部で「アスリートアイドル」と評されるアップアップガールズ(仮)をご存知だろうか。

アイドルといえば、かわいい歌とダンスが当たり前?そんな時代はもう古い。ももいろクローバーZのように、奇抜な衣装やダンスを取り入れるグループや、東京女子流のように徹底したボイストレーニングを実施し本格的にダンス&ボーカルグループとして打ち出すなど、方向性はさまざま。ブランディングの善し悪しがブレイクに直結しているわけではないが、人々の興味をひく要素として機能していることは確かだ。
そんななか、「アスリートアイドル」と評されるアップアップガールズ(仮)。この呼び名がついた理由は、彼女たちの「アスリート並のストイックさ」にある。そのアイドルらしからぬトピックスを少しではあるが紹介しよう。
・ライブ=決戦
激しいダンスと歌を150分ほぼノンストップで行い、ライブ中にファンが倒れてしまうこともある彼女たちのライブ。本人たちいわく「ライブ=決戦」だそうだ。どうやら冗談で言っているわけではなさそう、と確信が持てたのは、彼女たちが日々、歌、ダンスの練習と平行して「筋力づくり」を行っていると聞いてから。怪我をしないようにフィジカル・トレーナーをつけるなど、その取り組みは本格的だ。
・落ち込む姿がアスリート
通常、取材陣からアイドルへ、ライブの感想を述べることが多い終演後の関係者挨拶だが、彼女たちの場合は少し違う。毎回、顔を合わせるなり「ライブどうでしたか?」「◯◯の振り、揃ってましたか?」と矢継ぎ早に質問を浴びせるのだ。納得のいかなかった日には、「あそこのポジション移動が上手くいかなかったんです」などと、分かりやすく落ち込む様子もよく見かけたもの。
・富士山頂でライブ
2014年夏には、2日かけて富士山に登り、山頂でライブを決行。SNS上では「なんのために?」という疑問の声も多くささやかれたが、本人たちの回答は至ってシンプル。「日本一を目指したいから」。最近では、自衛隊訓練への参加やホノルル駅伝への出場も経験。これらを終え、「次は武道館でのライブを目指したい」と満足げに語るのはリーダー・仙石みなみ。彼女たちのなかでは、ライブも富士山登山、自衛隊訓練もホノルル駅伝も同じベクトルの上にあるのかもしれない。

彼女たちをここまでストイックに成長させたのは何か。その答えは、過去にさかのぼると見えてくる。
実は彼女たち、元々、ハロー!プロジェクトの研修生としてハロプロエッグに所属していたメンバー。しかし、目標であるデビューを達成できずに研修過程が修了。つまり、「クビ」宣告された者たちによって結成されたグループなのだ。エッグとしての過程を修了した彼女たちを待ち受けていたのは、ハロプロの先輩たちの曲をひたすらにカバーするだけの日々。ダンスの先生もつかず、自分たちで振りを起こし、歌詞を覚え、歌割りやダンスの場位置を決める毎日が1年間続いた。さらに、この頃の会場は、わずか100人規模のライブハウス。エッグ時代、先輩のバックダンサーとして横浜アリーナ規模の大舞台に立っていた彼女たちにとって、まさに天と地の差を目の当たりにしながらのリスタートとなった。
のちに、彼女たちはこのことを「マイナスからのスタート」と語っている。だが、その1年間の下積みによって肉体的にも精神的にも鍛えられたのは確か。それぞれに「はい上がってやる」という強い決意が生まれ、結果として今のようなストイックな環境に身を置く習慣がついたのだろう。
それは決して他のアイドルが真似をしようと思ってもできないもの。大人たちの決めた「方向性」ではなく、彼女たちの経験が結果として彼女たちの魅力に全て繋がっているのだ。敗北を経験したからこそ得たストイック精神を武器に、今日も彼女たちは筋力づくりに励む。
写真/Yusuke Homma・豊永拓万(TOKYO IDOL NET)
アップアップガールズ(仮)は4月5日(木)に両A面ニューシングル『パーリーピーポーエイリアン/セブン☆ピース』をリリース