![ニーズ”あり”! ぽっちゃり女子プロレス、超満員の旗揚げ戦でまなせゆうなが覚醒](https://times-abema.ismcdn.jp/mwimgs/1/4/724w/img_142de0eef718afaff915d21d68c84c29702914.jpg)
(オープニングで今成を踏みつけるまなせ。チアガールのユニフォームを脱ぎ捨て、今の自分で勝負した)
このところ新たな盛り上がりを見せつつある女子プロレス界で、異色の団体が旗揚げした。4月14日、王子ベースメント・モンスターで大会を開催したのは、その名も「ぽっちゃり女子プロレス」。略称は「ぽちゃじょ」である。
これはDDTグループの団体ガンバレ☆プロレスからさらに派生したもので、自他ともに認めるぽっちゃり好き、今成夢人(DDT映像斑兼レスラー)が発案。ぽっちゃり女性についてのドキュメンタリーを自主制作したこともある今成は、自身のプロデュース興行で己の性癖を全面的に解放したわけだ。
「ルェベルが違うデブ専」を自称する今成が、ぽちゃじょのエース候補に指名したのはまなせゆうなだった。グラビアの世界からプロレスに挑戦、スターダム、アクトレスガールズを経て、現在はフリーとして東京女子プロレスを主戦場としている。
“グラレスラー”として期待されながら、ここまで大きな実績のないまなせを、今成は「尻切れで終わってる。お前はエースになれなかった女なんだよ!」と指摘。一方、まなせは「ぽっちゃり」という言葉に抵抗があり「私が目指しているのは大きくて強くてカッコいいグランデレスラー」だと主張したが、今成は「俺はドトールしか行かないから知らん!」と取り合わない。
今成の強烈なアピールに、まなせは今成とのシングルマッチを要求。まなせにとって初となる、男子選手とのシングルマッチが実現することになった。大会オープニングでは「鈴木ゆうな」時代のイメージDVDを再現するチアダンスを披露した(させられた)まなせ。しかしその直後、今成を踏みつけると「今の私はまなせゆうなだ! 今までやってきたことを証明するために踏み台になってもらう!」と宣戦布告してみせた。
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(試合と試合の間も、三苫うみのダンスなど大会はひたすらぽっちゃりづくし)
試合の間のライブショーも含め、ぽっちゃり女性を全面的にフィーチャーした「ぽちゃじょ」旗揚げ戦、そのメインで今成とまなせは対戦した。女子選手としては大型のまなせだが、やはりフィジカルでは今成に負けてしまう。まなせはエルボーや得意の顔面蹴りをひたすら連打することでパワーの違いに対抗。今成の攻撃に記憶を飛ばしながらの闘いとなったが、だからこそ無我夢中、必死になる姿が印象に残った。結果として今成の必殺技である「ぽっちゃりへのヒザ蹴り」で3カウントを聞いたまなせだったが、キャリア屈指の激闘を残したことは間違いない。
試合に敗れ「この体型も、自分もどう愛していいか分かんない」とまなせ。しかし「自分が大好きすぎて、30すぎて自分の可能性に気づいた」という今成は「今のまなせさんが一番魅力的だよね? ありのままに生きてくしかないんだよ!」と訴える。ここで場内に『アナと雪の女王』の主題歌『Let it go』が流れ、マイクを渡されたまなせが熱唱。今成はなぜかオラフの写真を掲げ、そこから電気グルーヴの『Shangri-la』大合唱でエンディングとなった。
ありのままの自分を徹底的に肯定する。そんなメッセージを残したこの大会について、今成はこう語っている。
「やる前はみんなに需要があるのかって言われたんですけど、テーマは“自分を愛せるかどうか”になってくると絶対思ってたので。女子選手が男子とシングルでやることに拒否反応を示す人もいたかもしれないけど、そういうことじゃなくて。それを上回るテーマを持ち込むつもりでいたので」
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(エンディングは紙吹雪が舞う大団円。歌って踊って闘って、まなせはすべてで自分を出し切った)
試合後のまなせは男子との対戦に「タックル一発にしても痛かったですけど、それで興奮した自分もいて。思い切りぶつかっていくのは気持ちいいなって」。また「通用しないとも思ってないので。男子とももっと闘えるようになりたい。ぽっちゃり女子プロレスを盛り上げていけたら」とも語っている。
会見からマッチメイク、試合にマイク、使用する音楽まで。「レスラー=演者にして映像スタッフ=レスラー」の魅力を伝える者であり、そこに女性の好み=個人の強烈な思い入れが乗っかった今成のプロデュースは、プロレスの興行であると同時に“まなせゆうなの覚醒”という一つの作品に仕上がっていた。
当初はお笑い系泡沫企画と思われながら、いざフタをあけてみれば小会場とはいえ超満員札止め(150人)。WEB中継の視聴数も上々で、DDTの“大社長”高木三四郎はより大きな新木場1st RINGでのぽちゃじょ開催、さらにそれが成功した場合は後楽園ホール進出という可能性を示唆している。ぽっちゃり好きが手がけた、ぽっちゃり女子の自己肯定。そこに需要はあったのである。プロレスの多様性はここまできた。
文・橋本宗洋
写真・DDTプロレスリング/宮木和佳子
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