電通ダイバーシティ・ラボが全国6万人を対象とした調査で、LGBTの割合は全体の8.9%、11人に1人、また、78.4%が同性婚の合法化に賛成との結果を公表した。
しかし日本では憲法24条「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」の"両性"が男性と女性を指すとして違憲だとされている。こうした状況に対し、今年2月には全国の13組の同性カップルが、同性婚を認めないのは「すべて国民は法の下に平等であって差別されない」とする憲法14条に違反するとして、国に損害賠償を求める集団提訴に踏み切った。
中心メンバーの一人、相場謙治さんは「この訴訟を通じて、全国の多くの方々にセクシャルマイノリティが抱える苦難や困難を知って欲しい」、相場さんのパートナーである古積健さんも「この裁判は私たち及びここにいないたくさんの仲間たちの尊厳を取り戻す長い旅だと思う」と指摘した。
法的に結婚できないことで、配偶者としての権利を行使できず、様々な不利益も生じている。原告の一人、ドイツ人のバウマン・クリスティナさんと一緒に暮らす中島愛さんは今年1月、婚姻届を提出したが「不適法であるから受理することはできない」とされた。「配偶者ビザが取れないし、もしかしたらドイツに帰らなければいけない状況になるんじゃないか」と危機感を募らせる。また、小野春さんは「乳がんが見つかって病院で告知を受ける時も、半年間にわたる抗がん剤治療や全摘手術をした時も、"家族のみ"と言われ、手術の同意書のサインができるのかと立ち止まり、死んでも死にきれない思いだ」と訴える。
先月開かれた第1回口頭弁論で原告側は「私たちの日常は男女の夫婦と何一つ変わらない」「私たちのような家族は特別ではない。知られていないのは目立たないように暮らしているからだ。いないものにしないでほしい」と訴えたという。
4日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』では、改めてこの問題について考えた。
まず、ゲイであることをカミングアウトしている元民進党参議院議員の松浦大悟氏「実は訴訟の中心メンバーとして出てきた相場さんと古積さんは離脱をした。彼らは反対派にも同性婚を理解してもらいたいと主張し続けていたが、弁護団がそんな人たちに認めてもらう必要はないとして却下した。左翼運動の変形のような形で進められる同性婚訴訟にはついていけないということだろう。ここが同性婚訴訟の問題点で、我々LBGTの当事者としては大変残念な出来事だ。あるいはTwitterでLGBT活動家の方たちが"これは家族を壊す、結婚を壊す第1歩"だ"この先には複数婚があるということも覚えておいてください"というようなことも主張している。こういうところから保守の人たちの間にも誤解が広まっている」と指摘。
「保守派の人たちに共感を得られず理解されないまま同性婚をやってしまえば、社会が分断されてしまう。アメリカを見てほしい。連邦裁判所でも5対4という、薄氷を踏むような僅差だった。反対した保守派の判事は"これはエリート9人で決めるような話ではない。民主主義に任せるべきだ"と言っている。クロアチア、オーストラリア、アイルランドなど、国民投票で同性婚の是非について決めている国はたくさんある。一部の憲法学者は"人権を多数決で決めるのか"と言うが、そういうプロセスを踏むことが立憲主義と民主主義をアップデートさせていくと思う。私も同性婚を一日も早く実現させたいと思っているが、だから解釈改憲での同性婚には反対だ。立憲民主党の山尾志桜里議員や批評家の東浩紀さん、学者の中島岳志さんもそうおっしゃっている。なぜ解釈改憲がダメなのかといえば、どう考えても憲法24条が同性婚を想定していない、つまり国民の意思が反映されていないからだ。国民投票ということになれば、1、2年かけてファシリテーターが全国各地を回り、ワークショップでいい面、悪い面を両方出して議論をすることになる。改憲という作業を通して、我々国民が同性婚のできる社会を選び取ろうではないか」。
レズビアンであることをカミングアウトしている立憲民主党の尾辻かな子衆議院議員は「松浦さんはかなり極端な話をされていると思う。私も国会で質問させてもらったが、憲法24条は同性婚を想定していない、と言っているだけで、同性婚を違法としているというわけではない。役所に婚姻届を持っていくと不適法による不受理と言われるが、それは法律がないということなので、民法や戸籍法を変えることで婚姻の平等を達成できる。いま、立憲民主党では山尾志桜里さんとプロジェクトチームを作って、その準備をしている。だから松浦さんがおっしゃったことはちょっと違う」と反論した。
他方、同性婚に反対の立場を取る憲法学者の八木秀次氏は「民法には"夫は、妻は"と書いてある。夫は男性、妻は女性、つまり婚姻制度そのものが戸籍上の男女が結びつき、子どもをもうけるというのが元々の婚姻制度の趣旨だ。民法の教科書にもそう書いてある。もちろん子どもを生まない夫婦も、子どもができない夫婦もいるが、民法の制度自体は、その中で子どもを生み育てるものとして夫婦の関係を強化し、簡単に別れられないようにしたり、子どもを保護したりするようなものになっている。そこを皆さんは誤解されている」と説明。
「もし婚姻制度の中に同性カップルが入ってくると、元々の制度の趣旨そのものが変わってくるし、民法や家族制度の体系を大きく変えていく必要があるので、ここは相当大きな議論が必要だ。だから私は婚姻制度は守りつつ、同性カップルの契約関係を法的に保証する制度を別に設けるという考え方でいいと思っている。同性カップルに認められていない権利を言い換えると、保護されているのは結婚した男女。つまり、同じ男女であっても法律上の結婚をしていなければこういう権利は得られない」。
さらに八木氏が「電通ダイバーシティ・ラボの数字と、自治体による調査などでは数字がバラバラだ。11人に1人なのであれば社会で考えなければならない大きなテーマになるが、1%以下ということになれば社会の受け止め、行政の対応も違ってくる」と指摘、松浦氏も「電通の調査は企業秘密だといってアンケートの設計も明らかにされておらず、当初から"眉唾"だと言われている。最も反対している60~70代は最初から母数に入っていない。なぜ18~59歳で区切ったのか」と疑問を呈すると、尾辻氏は「モニター調査であったり、LGBTに対する偏見があったりして、なかなか答えられないということもあるので、数字に踊らされるべきではないし、少なければ認めなくていいとか、そういう話ではない」とコメントしていた。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)