史上初の10連休となったGW。大型連休前のお決まりの光景といえばATMで現金を下ろす人たちの長い行列だったが、今年はQRコード決済の大還元祭が行われるなどことから、なるべくキャッシュレスで済ませようとした人も増えたようだった。
他方、「あんまり使い方が分からず、使っていない」「（現金の方が）自分で管理できているからその方がいいかな」「まだ全然知らないから怖いと思うのかもしれないけど、（キャッシュレス化に）なってきたら私たちは生き辛いかなと思っている」と、クレジットカードはもちろん、電子マネーやデビットカードなどに抵抗感を持つ人も少なくないようだ。
実際に、日本のキャッシュレス決済比率は他の先進国に比べ"置いてけぼり状態"。国もキャッシュレス決済の場合は消費税の増税分（２％）をポイント還元するなどの施策を発表、2025年までに決済比率を40％、将来的には80％を目指すと強気の宣言を行っている。
元NTTドコモで、"おサイフケータイの父"とも呼ばれるドワンゴ社長の夏野剛氏は「僕は海外旅行に行くときは現地の通貨には変換しない。なぜなら交換レートも良くないし、必ず現金が残ってしまうから。だから現金しか使えないと言われたらそのお店はサヨナラ。そういうお店を残しておくことが、経済の不均衡というか、ものすごい悪循環を呼ぶ。そういうお店は基本的に脱税したいからそうしている。これは本当だ。通貨の発行コストは年間で数百億にのぼっている。輸送代だけでなく人件費もかかる。レジで現金決済する場合と、サインレスの電子マネー系で決済する場合はスピードが倍くらい違う。3000円以下の決済が１日に２億回ほど行われているので、それだけで10万人ぐらいの雇用が無駄になっている」。
さらに夏野氏は、日本でキャッシュレス決済が広がらない理由について、皮肉も交えて次のように説明した。
「日本はテクノロジーは揃っていても、現金決済するのが安全な国。昔、海外で１万円以上の現金は持ち歩くなと言われていたが、日本はそういう心配がなく、現金でぬくぬくとやってこられた稀有な国。また、倹約は美徳、消費は敵だという戦前から教育によって、現金の方が使った額もわかるから、という考え方の人が特に高齢の女性の方に多い。これは完全な勘違い。そういう方はこれから20、30年の間にみんな亡くなるので、そこを気にしていても仕方がない。効率的に物事を考えられる人はキャッシュレスに移行しているが、そうではない人たちは取り残されてオレオレ詐欺に遭い、年間400億ぐらいの現金が出ていってしまっている。それでも変えたくないと言うのなら、そんなに遠くないから、もう墓場まで持って行ってもらっちゃったほうがいいんじゃないかな」。
さらに夏野氏は「いわゆる携帯電話での決済は世界で初めて日本が導入した。Apple Payもおサイフケータイと同じインフラに乗っかっているので、おサイフケータイが使えるところはApple Payも使える。日本もインバウンドで入ってくるお客さんが増えたおかげで、地方の観光地でも現金しか使えないというお店はほぼなくなってきている。中国から始まったQRコード決済も簡易な決済方法として広がってきているが、まだまだ少ない。ただQRコードは偽造リスクも大きく、今ではiPadやスマホに挿すだけでクレジットカード決済ができるようなものが出てきているので、QRコード決済の方が優位というわけでもない。一方、クレジットカードの場合、未成年や信用がない人でも使いやすいという利点があるが、中国の場合はアリペイも含めてほとんどがデビットカード決済なので、本人しかリスクを負わない。また、アリペイは本人の同意なく自動的に銀行口座に紐づくが、日本の場合はほとんどが銀行口座に紐づいてない。それは皆が登録を嫌がるからだ。やはり中国のように政府が後押しをするという普及のさせ方をしないとダメだ。韓国では1997年の経済危機をきっかけに、クレジットカードを税制で優遇し、その結果キャッシュレス決済が90％近くにまでなった。国が本腰を入れればいくらでもキャッシュレス社会なんて作れる。10%への増税後は１円玉の流通が減り、現金主義が横行すると思うが、次に13％などになった時には"キャッシュレスにしておけば"後悔することになる。僕は随分前から現金決済だけを消費税10％にしろ言ってきたが、変なポイント還元のようになってしまって残念だ。電子マネーの最大のライバルは政府発行通貨。だから日銀は円を電子マネー化すべきだ」と強く訴えた。
一方、住宅事業ブロガーで、"現金派"を自称するザク男爵さんは「私は法人もやっていて、そちらの会計はキャッシュレス。だけど個人で使う分にはキャッシュレスのメリットよりもデメリットのほうが大きいように感じる。1番大きいと感じるのは"浪費リスク"。だからスーパーとかコンビニとかちょっとした買い物とかそういうときに使うお金はほぼ現金だ。私としてはそれが当たり前だったので、むしろ日本で18.4％もの方がキャッシュレスで払っているというのが驚きだ。もちろん現金の支払いは手間だし、小銭を持ち歩くのはデメリットでもある」と話していた。（AbemaTV／『AbemaPrime』より）
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