"サブスク"と呼ばれる定額制（サブスクリプションモデル）サービスが、音楽配信や動画配信の領域から、飲食や家具、美容などのジャンルにまで拡大している。
トヨタもレクサスが利用でき、６か月ごとに新車に乗り換えが可能な自動車のサブスクリプションを開始。月額18万円で、自動車税や保険なども込だ。ダイソンは月2500円で新機種のクリーナーをメンテナンス付きで提供している。
国内14店舗、海外５店舗を展開する「野郎ラーメン」では、2017年11月から月額8600円（税抜き）で「豚骨野郎」「汁なし野郎」「味噌野郎」といった看板商品の中から、１日１杯ラーメンを食べることができる。株式会社フードリヴァンプ営業統括の保科武見氏は「計算上では12日来ていただければ元が取れるようになっている。学生が多く入会している。食費が浮くのだろう」と話す。「野郎ラーメン生活4thシーズン1日目」などと、日課のように野郎ラーメン通いをする様子をSNSにアップするユーザーも多く、これが拡散されることで来店社の増加にもつながっているという。
去年９月に始まったランチのテイクアウトサービス「POTLUCK」。渋谷を中心に加盟する145店の中からランチを楽しめる（１日１食のみ）。ユーザーはホームページ上でメニューを選び、受取時間を予約、あとはお店に取りに行くだけだ。チケット枚数ごとに料金プランが変わり、最もお得なものだと１食あたり400円になる計算。株式会社RYM&CO.代表取締役の谷合竜馬氏は、「テイクアウトをやるにしても、お客が何人くらい来るかが分からないから在庫を抱えなければならないところがある。こちらは事前予約制なので、まず段取りが組みやすく、原価を抑えながらプラスアルファの売り上げを出せるというところがメリット」と、ユーザーだけでなくお店側にも大きなメリットがあると説明。効率よく売り上げを上乗せできるとした。
シャンプーやブローに特化した、定額サービス「MEZON」は、利用日時などで月額プランは異なるものの都内を中心に150以上の美容院に通い放題。運営会社代表の鈴木みずほさんは「多い方だと本当に週に２、３回は通われている方もいる。お客様との接点が増えることによって、お客様のライフスタイルだったり、あとは服装の好みだとか、そういうことをスタイリストさんが非常に把握しやすくなるので、新しい集客のあり方とも言われている」と話した。
一方、商品を購入せず、定額で気軽にお試しできるサービスもある。日本初の家具のサブスク「subsclife」は、去年９月から椅子やベッド、タンスなど40ブランド、25000点以上の家具を取り扱っている。最も安い利用料は月額500円からで、利用期間に応じて交換・購入などが可能だ。
法人の契約も増えているといい、アパレル関連の什器等を製造・販売する株式会社日本コパックも、オフィス改装のタイミングで椅子やロッカーなどを取り寄せた。今回、日本コパックがサブスクで導入したのは椅子やデスクなどおよそ100個。月の利用料はおよそ20万円になる。年間だとトータル240万円にのぼるが、購入するとしたらおよそ290万円。つまり会社として50万円の節約になるという。
サブスクライフ代表取締役の町野健さんは、「口コミ＋サブスクの波に乗って非常に大きい反響をいただいている。月額になることで企業としてはキャッシュフローが改善されるので、その意味でも非常にメリットがあると感じていただいているようだ」。
町野氏は、さらに家具を提供する側のメーカー側の追い風になるも話す。「家具メーカーさんも競争が熾烈だ。いいものを作っているんだけども、ちょっと高いメーカーさんは非常に苦労している。いいもので安いものが出てくるので、なかなか勝負がしづらいというふうになるが、いいものをサブスクならお得に使い始められる。あえてここでさらにいいもの勝負ができるというか、そういう意味では業界が活性化するんじゃないかと思っている」と語った。
■メンバーシップ・優越感がポイント
兵庫県立大学教授の川上昌直氏は「今こうしている間もサブスクの会議がどこかで行われている状態だろう。そもそも予約購入ということなので、NHKの受信料もそうだが、定期券やテーマパークの年間パスポート、コストコの入場料などもサブスクで、皆さんの生活に既に入っているものもたくさんある。予約ということは、ある意味でお客さんと企業が相思相愛ということを表明している状態だといえる。だからこそ企業も売って終わりではなく、ちゃんとフォローする。お客さんも喜んで、お付き合いが長くなる」と話す。
「2008年の金融危機以降、"買わない"というスタイルが出てきた。同時にiPhoneやAndroidが日本に入ってきたので、デジタルと掛け合わさって新しい消費スタイルになった。なおかつミレニアル世代はデジタルネイティブ。気が付いた時には家にパソコンがあり、ネットにも繋がっていた世代だ。また、ミニマリストの流れもある」。
コンタクトレンズなど、月々に37000円分のサービスを利用、"サブスク利用者のプロ"だというスマートニュース社の松浦シゲキ氏は所有欲はないのか、との問いに「車も持っていたし、CDも書籍もたくさん持っていた。ただ、所有するにもコストがかかる。掃除に時間がどんどん吸い取られていく。そういう維持・メンテのコストを考えたら、持たない方がいい」と主張。
一方、ロシア人コラムニストの小原ブラスは「お勧めする機能によって、"選ばされている"という感じがする。あんまり考えなくても満足してしまって、選ぶ力や買う・買わないで悩む力はどんどんなくなっていくと思う」、堀潤氏が「サブスクのモデルに移行しないといいものが手に入らないという、囲い込み戦略が過熱してきている印象も持っている」と指摘。
川上氏は「ミレニアル世代は選ぶ力があまりないので、そういう中では提案された方がいい。やっぱりサブスクリプションの良いところは、入るとずっとデータが溜まっていくので、お勧めのものを出してくれる。そう意味でも楽だ。自分が必要最低限でいいというものはサブスクに変えていくことをやりながら、欲しいものを買う。例えば今で言うとZ世代という20代の初めくらいの子たちは、格安スマホを持ちながら、高いブランドのスニ―カーを買っている。そういう消費がまた出始めている。全部が標準化していくという訳ではなくて、選択と集中がものすごくされていく状態だ」」、松浦氏も「ストレスがかからない。ただ、服は選ぶのが好きだから、サブスクは使っていない。使い分けの世界だと思う」と説明した。
その上で川上氏は「基本的にはメンバーシップ・優越感がポイントだ。元が取れるというよりも、ファンクラブに入ったような感じがしたり、行列をすっ飛ばせるとか。そういう感覚が必要だ。また、辛らつな意見だが、物のサブスクは伸びないと思っている。サブスクというのはあくまでも課金の仕方であって、お客さんとの関係性がある上でサブスクを使えばうまく長く付き合える。また、音楽や動画はクラウド上に上がっているものをダウンロードさせる仕組みなので、コストはかからない。しかし品物になると物流費がかかったり、変動費もかかるので、アメリカでやると大変なことになる。そこは国土が狭い日本独特な感じがする」との考えを示した。（AbemaTV／『AbemaPrime』より）
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