10日、アメリカを訪れポンペオ国務長官らと会談を行った菅官房長官。拉致問題担当大臣としての訪米だと強調するが、危機管理を担当する官房長官が外遊に出るのは極めて異例で、自民党内からはこの"外交デビュー"について、次期総理を見据えた足場作りだと見る向きもあるようだ。
新元号の発表で知名度がアップ、"ポスト安倍"に急浮上した菅氏に、これまで距離を置いていた二階幹事長も「この難しい時代に官房長官として立派にやっておられる。それは素直に評価に値する」(『文藝春秋』5月号)との認識を示している。しかし権力への野望をおくびにも出さないスタイルを貫いてきた菅氏は、記者からの「二階幹事長が次期総裁候補について、"菅さんはそういうことに堪える人材だとも思っている"と発言している。率直な感想を聞かせてほしい」との問いにも「全く考えていない」とまんざらでもないような笑顔を見せていた(先月18日の定例会見)。
"ポスト安倍の最右翼"と言われるのは岸田文雄政調会長だが、その岸田派の古賀誠名誉会長も先月、BSの番組で「岸田氏は必ずしもポスト安倍でなければいけないということではない。菅氏が"ポスト安倍"の1人であることは間違いない」と言及。さらに3日付の産経新聞は、菅氏の盟友ともいわれる橋下徹氏が「(菅氏の急浮上は)大阪にとって大ハッピーな話。引き続き大阪のために力を貸してもらえると思う」とコメント。永田町で出回っているという菅内閣の閣僚名簿には、"目玉閣僚"として橋下氏の名前があると取り沙汰されている。
11日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した、閣僚経験者でもある舛添要一・前東京都知事は「官房長官は危機管理担当だから基本的には国内にいないといけないが、菅さんは拉致担当大臣との兼職。会合が国連であるので行く理由もある。アメリカ側も菅さんの地位がナンバー2で、どれだけ大事な人かを分かっているので、同じくナンバー2である副大統領が会った」と説明。「菅さんは今まで"担ぐ方"だったが、安倍さん以外に人材がいなさ過ぎる。だから脚光を浴びる。私はそこそこちゃんと総理をやれる人だと思うし、役人をコントロールしているので、役人からするとやりやすい…いや、やりにくいかな(笑)」とコメントした。
■有馬晴海氏「ピンチヒッターという形はあるかもしれない」
また、自民党の松川るい参議院議員は「アメリカが厚遇しているのは間違いないし、重要なポジションにいることをしっかりと理解している。二階幹事長などがコメントされているように、非常に重要なポストを長らく務めてこられた方だ」と話す。
政治評論家の有馬晴海氏は「菅官房長官が初当選の時から親しくさせて頂いているので、全体像は何となく分かる。名官房長官が必ずしも名総理になるというわけではないが、そういうこともある。総理の補完、総理ができないことをきちんと忠実にやられている。安倍総理がうまくやっているのも、長官のおかげかなというところが相当見られる。谷垣禎一さんが総裁をやっていた時期に聞いたのは、"私は安倍さんの考え方がいい"というお話。"この国をこうするんだ"という大きな目標よりも、"安倍さんの考えを押し進めたい"という思いがあったと思う」と振り返る。
さらに有馬氏は菅官房長官が主導した政策について「閣僚らの不祥事対応、外国人労働者受け入れ拡大法への対応は手堅い。言質を取られないことが官房長官に一番必要な資質だと思うが、2つはそのような感じだった。入国審査の基準を低くしようとした菅さんに、警察庁や法務省は"犯罪が起こる"と意見を言ったが、"それを取り締まるのがお前たちだ"と一蹴した。それで今の外国人訪日客3000万人がいる。携帯電話料金引き下げの話もそうだが、総理が立ち入らないようなところをきちんと地ならしをする。ふるさと納税についても、"自分は秋田の出身だが、優秀な人がみんな東京に出てくるので秋田に人がいなくなってお金が足りなくなるから"と。そういうアイデアもお持ちの方だ」と説明。
そして「万が一、安倍さんが選挙で大負けして代われ、という話になったら、菅さんがピンチヒッターという形はあるかもしれない。ただ、菅さん自身が"俺を総理にしろ"と出てくることはないと思う。また、"安倍4選もあるぞ"と言った真意を二階さんに聞きに行ったら、"ぼやぼやしてたらまた安倍さんがやるぞ。若い者が出てこい"という意味もあったとおっしゃっていた」と明かした。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)