役者・早乙女太一が5月24日に公開されるTRIGGER制作のオリジナル劇場アニメーション映画『プロメア』にて松山ケンイチとW主演を務め、炎を操る人種「マッドバーニッシュ」のリーダーであるリオ・フォーティアを演じる。
本作では人気アニメシリーズ「天元突破グレンラガン」、「キルラキル」を手がけた監督・今石洋之と脚本・中島かずきが再タッグを結成。早乙女は、中島が作家を務める「劇団☆新感線」の作品に多数出演しており、中島から直接オファーを受け二つ返事でこれを承諾。その裏には中島や松山への信頼感が大きかったという。果たして早乙女はどのようにリオに声を吹き込んでいったのか。大声対決になったというアフレコ現場の思い出や、“超炭酸”と表現する本作の見どころについて語ってもらった。
中島かずきに見出された“何かを背負ったキャラクター”
ーーオファーが来たときはどのように感じましたか?
もともと(中島)かずきさんの「劇団☆新感線」には何度も参加させていただいて、ちょうど『髑髏城の七人』の公演のときに声をかけていただきました。もともと声優というお仕事に興味があってチャレンジしてみたかったので、喜んでお受けしました。また、松山さんとは「劇団☆新感線」の作品(「蒼の乱」で初共演させていただいて、WOWOWの『ふたがしら』というドラマでご一緒させていただいて、そのときの脚本も全部かずきさんだったので、松山さんとのコンビ感というのも理解していただいていますし、不安が一切なく、マイナスなところがなかったです。楽しさ、やりたい、という気持ちが強かったです。
ーー声優さんのお仕事に興味を持たれたきっかけはあったのでしょうか?
アニメの世界に入ると自分が絶対にできないことができる。(リオが)炎を出すのもそうですし、人間を超えたというか、そういったことができるキャラクターに子供の頃からの憧れもありました。単純に「かめはめ波出してみたいな」とか(笑)。
ーー実際に演じてみて、難しかったところはありますか?
普段やっている表現は全身を使ってしているんだなということに改めて気づきました。目の動きだったり首の動きだったり、ちょっとした動きで表現している。声だけで細かいニュアンスの表現をするというのは、やはり今まで以上に声への集中が高まりました。何ぶん経験がなく、引き出しがないので、苦戦しました。
ーーリオの声から少年っぽさを感じました。どんなキャラクターをイメージしてアフレコにのぞみましたか?
最初にキャラクターを見たときは意外でした。女の子みたいだったので。なので、このキャラクターにあった声をと、普段の自分よりも若さが出るように。そして、彼の持っている何か背負っているもの、悲しみだったり、憎しみだったり、そういうものを背負っている人の声を意識しました。
ーー悲しいバックボーンを背負ったキャラクターでこのビジュアル。すごく人気が出そうですよね。
そうなんですか?やった!(笑)そこまで客観視できていなかったです。自分がどうすべきかということばかり考えていて。
ーー女子ウケばっちしだと思います!彼のキャラクターで共感する部分はありましたか?
僕がかずきさんに書いていただく役って、何かを背負っているというキャラクターが多いんです。何かしら闇だったり、悲しみだったりを背負っている。僕自身はそんなに意識していなかったんですけど、それはかずきさんが僕に感じてくれているもので。多分、僕の場合は子供の頃から舞台に出て、自分の劇団があって、それをずっと背負ってやってきているので、そういう部分を見抜かれたというか、見出してくれたんだと思います。 いい方向に引き出していただけてありがたいです。
過去の共演で培った松山ケンイチとの阿吽の呼吸
ーー今回のアフレコでは、実際に松山さんと対面されて?
はい。ずっと一緒です。
ーー難しかったシーンはありますか?
後半にかけて、最後の戦いがどこまでヒートアップしていくんだというくらい盛り上がっていくので、そこが難しかったです。後半は堺さんも合流して撮っていたんですけど、まず松山さんは最初から最後までひたすらフルパワーだったから、さらにそこに堺さんのど迫力のやつが来て、ブースで誰が一番大きい声出るか対決みたいになりました(笑)。
あと、声入れしているときはまだ絵コンテだったので、どのくらいの迫力になるか想像しなければいけなかったので、それが難しかったです。最初は調整しないとって思っていたんですけど、最初から熱いし激しい。調整して映像の迫力に負けてもダメだと思いました。
ーー想像していたものと実際に見られると違いましたか?
想像の何倍も迫力がありました。しかもカラフルだし、こんなに鮮やかだと想像していなかったので、かっこよかったです。ずっと楽しかった。曲もたくさん使われていて、あまりないタイプの使い方だったので、そこにもすごく興奮しました。
ーー現場での松山さんや堺さんはいかがでしたか?
松山さんは一切手抜きをしない。常に120%みたいな人です。僕たちも不慣れなので、なんとなく掴むために「軽くやりましょ」ってなったんですけど、松山さんは最初からエンジン全開。あれはマネできないし、「(松山演じる)ガロじゃなくてよかった~」と思いました(笑)。舞台で共演していたときから、そのエネルギーは感じていたんですけど驚きました。その姿勢はものすごく尊敬できるし、体当たりでいろんな表現を試していて、迷いもあるんでしょうけど、周りにはそう見えない。
堺さんは、枠に収まりきらないというか枠がない。後半の堺さん、面白いですね。むちゃくちゃ笑いました(笑)。振り幅がすごいです。
ーー現場で相談したりリクエストされたりはありましたか?
全くなかったです。
ガロとリオの関係って、『ふたがしら』や舞台で松山さんと演じたキャラクターの関係と似ているところがあるんです。松山さんはとにかくまっすぐで、僕がツッコミ係。アクセルとブレーキ。とんちんかんなことを言ってツッコむ。そういうやりとりは散々してきているので、そこは話し合うというより、どんどんセリフを言って、息を合わせていきました。
ーーそういうところを期待されてのキャスティングだったんでしょうね。
そうかもしれません。
かずきさんならではの熱さとバカさとスピード感と間の取り方というのは、アニメではないけど舞台ではよくやらせていただいていたので理解しているつもりですし、かずきさんにも評価していただいていました。「劇団☆新感線」自体も元々は漫画とヘビメタと笑いと、ものすごくバカで熱い。通じるものがあるので、話し合うということがなかったんです。最初はそれが怖かったんですけど(笑)。「いつもの感じで~」って言われて、「いやいや、いつもの感じではない!声優だから!」って思いました(笑)。
『プロメア』の“超炭酸”な魅力
ーー『プロメア』は大人向けというかハイセンスな作品だと思うのですが、ご家族から反響はありましたか?
まだ見せていないのですが、僕のところは女の子なので難しいかもしれないです。男の子の方が好きな作品だと思うんですよね。でも、今ってスピード感がすごく上がっているというのを実感していて、YouTuberの人だとかもすごく早いんです。パンパンパンパンと進んでいく編集。子供たちはそのスピードに慣れていると思うので、『プロメア』のスピード感にも驚かないかもしれない。僕たちの世代にはこの感じはなかった。今の若い人にハマると思います。
ーー最後に作品のおすすめポイントをお願いします。
スッキリしたい方に見ていただきたい作品です。超炭酸、スカッとするし喉越しも強いし、パンチも強いし、風呂上がりのビールのような(笑)。とにかく笑えるし痛快なので、何も考えずに楽しめる作品になっていると思います!
ストーリー
世界大炎上――突然変異で誕生した炎を操る人種<バーニッシュ>の炎によって世界の半分が焼失してから30年、一部の攻撃的な面々は<マッドバーニッシュ>を名乗り、再び世界に襲いかかる。彼らが引き起こす火災を鎮火すべく、司政官クレイにより結成された高機動救命消防隊<バーニングレスキュー>の燃える火消し魂を持つ新人隊員ガロは、<マッドバーニッシュ>のリーダーであるリオと出会い、激しくぶつかり合う。 そんな中、リオからバーニッシュをめぐる衝撃の真実を告げられることに。さらにガロたちは地球規模で進められている“ある計画”の存在を知ることになる――。
(C) TRIGGER・中島かずき/XFLAG