衆院解散、そして衆参ダブル選挙の風が永田町に吹き始めている。
17日の会見で「(不信任案の提出が)総選挙を行う大義になるかどうか」と尋ねられた菅官房長官が「それは当然なるのではないか」と回答。また、自民党の二階幹事長は22日の講演会で「総理が決断すれば自民党はいつでも準備、用意はあるというのは幹事長として申し上げておく」とコメント。「消費増税、憲法改正、日朝問題は解散の大義にはならない」としながらも、「心配なく。大義は1日あったら作りますよ」とも述べていた。
24日、国民民主党の玉木代表に「消費増税を延期するならば解散総選挙を行うのか」と質問された安倍総理は「基本的には信を問うということは考えていない。その時の状況等によるので一概にはお答えできない」と答弁している。
18、19日にANNが実施した世論調査では、「ダブル選挙を行ってもよいと思う」が50%、「思わない」が30%という結果だった。AbemaTV『AbemaPrime』では、解散の"大義"、与党の勝算、そして選挙スケジュールについて、"安倍総理になったつもり"でシナリオを考えてもらった。
■解散の大義は?自公政権の勝算は?
衆参ダブル選挙が行われたのは過去に2回だけ。一度目は1980年、大平総理が内閣不信任案決議を受け衆院を解散("ハプニング解散")。直後に大平総理が死去したことから"弔い合戦"の様相となり、自民党は衆参共に議席数を伸ばし圧勝した。また、二度目は1986年、中曽根総理による"死んだふり解散"による選挙だった。自民党は衆議院で300議席以上を獲得するなど、この時も圧勝している。
政治ジャーナリストの細川隆三氏は、「平成になって選挙制度が変わり、自公連立政権になって以降は公明党の力が大きい。今年は亥年選挙で統一地方選挙があった上にダブル選挙となると、公明党は嫌がる。自民党としても公明党が頑張ってくれなければマイナスになってしまうので、2016年の時のように、ダブル選挙の可能性が指摘されながらも行われることはなかった。ただ、今回は可能性があると思う」と話す。
「内閣不信任案が大義になると言われているが、自分たちが勝てると思ったらやる。衆議院議員は選挙が生き死に、に関わるので皆が頑張る。こう言っては失礼だが、参議院議員の人たちは日頃の運動をしていない人も結構いるので、衆院選に乗っかろうという思惑もあると思う。また、安倍総理の気持ちになって考えてみると、何事もなければ自分の総裁任期が2021年9月で、衆議院の任期が10月。ということは、それまでにどこかで解散を打つ必要がある。タイミングとしては、景気が思わしくなくなるといったことが考えられるが、いま言われているのは東京オリンピック・パラリンピックの直後。総裁の任期を1年残し、4年間のビジョンを訴える。そうすれば、"安倍4選"という話にもなってくる。今年の夏に選挙を行うなら、場合によってはもう一回解散したったっていい。それはさすがに解散のし過ぎだが。ただ、野党は候補者調整をもたもたやっている場合ではない。何とか参議院の方はうまく調整できつつあるが、衆議院はまだまだだ」。
ジャーナリストの長谷川幸洋氏も「私もダブルの可能性が高いと思う」と話す。
「もしここでやらないと、10月には即位礼正殿の儀があり、195か国の元首が日本に来る。その後は予算編成があり、来年には東京オリンピック・パラリンピックがある。解散のタイミングが後になればなるほど、"追い込まれ解散"みたいな状況になりかねない。しかも、これから景気が落ち込むのはほぼ確実だ。中国やヨーロッパの情勢を考えると、景気がそこそこ残っているうちに、というのはあるだろう。勝つか負けるかは解散の大義によるが、可能性が高いのは消費増税の延期だ。ただ、"増税はやる。解散はする。大義はなんだ?"という疑問に口ごもる感じがあると、人々は増税が嫌いなので負ける可能性もある。内幕の話をすると、前の選挙で自民党が勝ちすぎているので、普通にやったら参院選は負けるのがほぼ確実と言われている。加えて参議院議員は衆議院議員の後援会に乗っかっているところがあるので、自民党の参議院議員としては衆院選に便乗したほうが勝ちやすい」。
元経産官僚の宇佐美典也氏は「安倍総理は憲法を改正したいと言ってきた。しばらく選挙がない状況を作るという意味ではダブル選挙は必要なことだと思う。今が3期目なので、総理のうちに憲法改正することを考えるなら、このタイミングしかない。大義としては、北方領土の話がある。4島返還ではない限り、どこかで信を問う必要がある。今まさに協議が進んでいるところなので、その辺を問うてくると納得感も出ると思う」との考えを示した。
■予想されるスケジュールは?
まず、衆院解散の引き金になるのではとの見方が浮上しているのが、6月26日の会期末を前に、19日に行われる可能性のある党首討論だ。
細川隆三氏は「立憲民主党の枝野さんが党首討論で内閣不信任案を出すと言うかどうか。もし出すと言えば、安倍さんは電光石火のごとく"伝家の宝刀"を抜くかもしれない」と話す。
「一番美しいのは、党首討論で内閣不信任案に言及した場合、たとえば2日後の21日解散。1日延長して、6月27日までに解散すれば、もともと予定されていた参議院選挙の7月21日になるので、ダブル選挙になる。さらに会期が延長され6月28日~7月4日の間に解散する場合は7月28日。7月5日以降、11日までに解散した場合は8月4日。おそらく、この3つのうちどれかだ」。
長谷川幸洋氏は「菅官房長官が言わなくてもいいことを一度ならず二度も言ったということは、明らかに野党、とりわけ立憲民主党を挑発して、わざと風を起こそうとしているんだと思う。野田政権の時の党首討論で2日後に解散すると言った例がある。今回も会期延長がなければ、党首討論の数日後に解散するということは十分にある」との見方を示し、「衆議院は解散から40日以内、参院は任期満了の30日前というルールから考えると、自動的にかねてから言われていた7月21日になるが、会期延長になった場合は8月まで可能性に入ってくる。たら、8月4日を過ぎるとお盆に近づいてくるので、あまり考えにくい。やはり8月4日がギリギリだ」と指摘した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)