「テーマによっては逆に大連立を組むとか、それぐらいの思い切ったことをやっていかないと、なかなか憲法議論に着手できないのではないか」「それぐらいの大技を使わないと憲法改正は難しいのではないか」。
3日に自民党の下村博文憲法改正推進本部長が示した、驚くべき構想。憲法改正を加速するためには日本維新の会など憲法改正に前向きな野党との前向きな大連立を模索する必要があるというのだ。
しかし自衛隊明記に慎重な立場を崩していない公明党の山口那津男代表は4日「衆議院、参議院の憲法審査会でその点についての議論の深まりもないし、まして合意の形成もない現状だと思う」と指摘、「下村さんの発言を私は聞いていないし、連立という重要な課題について自民党の幹部から何か話を聞いたということは全くない」と不快感を表明している。
一方、産経新聞によると、維新の創設者・橋下徹氏は「改憲を阻んでいるのは公明党。安倍さんに負けないくらいの改憲論者である松井さんは公明党を潰しにいくことを考えていると思う。維新は安倍さんが実現したいと強く願っている憲法改正に協力するための行動を起こすべきだ」と主張。
また、先月の憲法記念日に開催された改憲派集会に下村氏と並んで日本維新の会の足立康史幹事長代理が出席。「我々日本維新の会が憲法改正に正面から向き合い、自民党と手を携えて憲法9条改正を含めて前に進めるべきことは明らかだ」と述べ、9条改正でも共闘すると決意表明した。
■自民・葉梨氏「下村さんの発言を聞いてびっくりした」
8日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に出演した自民党の葉梨康弘衆議院議員は「私も下村さんの発言を聞いてびっくりした1人だ。連立には色んなレベル、段階があり、自公連立政権というのは同じ内閣を作るという意味。それ以外にも閣外協力や、テーマ別に協力するといった意味がある。憲法審査会が全く動かない状況の中、他の党ともテーマを絞り、憲法審査会とは別の場で話し合いができないか、その可能性も模索しなければならない、というような文脈でおっしゃられたものだと解釈している」と話す。
そんな自民党の憲法改正4項目には「9条に自衛隊明記」「緊急事態条項創設」「参議院の合区解消」「教育の充実」というものがある。葉梨氏は「この4点だけではなく、新しい人権をどうするか、形の上では禁止になっている私学助成をどうするかなど、色々ある。平成19年にできた国民投票法も12年間ほったらかしで、CM規制など細かな部分を直さないといけないというのもある」とし、「安倍政権だから冷静な議論ができないとか、強行採決されてしまうというが、しっかりとした議論を国民に提示しないまま憲法発議してしまえば必ず否決されてしまう。以前、枝野さんに政権を取ろうとする政党はそれぞれ意見を出すべきだと言ったら、それは一考に値するという発言を聞いたことがある」と主張、与党に議論のテーブルに着くよう促した。
■維新・足立氏「公明党への牽制と、国民民主党へのメッセージだ」
足立議員は「丸山穂高議員の件では旧島民の皆さまに大変不快な思いをさせたと思う。改めて心からお詫びを申し上げたい」と謝罪した上で、「戦後70年あまり、国民が憲法制定権力を行使していないという事自体、大変に異常な事態だということを皆さんにご理解いただきたい。政党たるもの、日本国憲法がどうあるべきか、今のままでいいのか、9条を変えるのか、教育無償化をどうするのか、それぞれの意見を出すべきだというのが僕らの意見だ。ところが今、意見を出しているのは自民党と日本維新の会だけ。国会での議論を国民に見て頂く機会が少ないことも大変不幸なこと。その観点で言えば、自民党もちょっとだらしない。憲法審査会というのは自民党、公明党、維新などで過半数、あるいは3分の2持っている。単に休んでいるだけの人は置いておいて前に進めることはできるのに」と主張。
「本来の憲法の議論ではなく、政局の議論にかき消されてしまって、結局まともな議論にならなかったのも自民党の責任だと思う。しかし安倍総理は2年前の5月3日の集会で自衛隊の明記を初めておっしゃった。一石を投じたリーダーシップには心から敬意を表する。その上で、下村さんの言う"連立"の相手は維新ではないと思っている。なぜなら、維新の会は初めから憲法改正推進派だからだ。あの発言には公明党を牽制しつつ、国民民主党を食べてしまおうという意図が絶対にあると思う。国民民主党、こっちに来たらどうだと言って、野党共闘に楔を打ち込むということだ」。
4月15日、安倍総理と石原慎太郎氏、亀井静香氏が会食、「改憲に前向きな議員が多い国民民主党の玉木代表を政権入りさせ、改憲勢力に巻き込めばいい」との話が出たとされている。足立氏は「国民民主党が立憲民主党と共産党の方に行くのか、それとも自民党と維新の会の方に来るのか。これが憲法の未来のみならず政治全体の動きが変わってくる」と指摘した。
■国民・奥野氏「安倍政権下では冷静な議論はできない」
ただ、そもそも憲法改正の具体的議論が全く進まなくなったのは去年秋の「率直な議論さえしないのは国会議員の職場放棄ではないか。高い歳費をもらって職場放棄をしてもいいのか」という下村氏の発言がきっかけだった。
国民民主党の奥野総一郎衆議院議員は足立氏の発言を受け「そう簡単に楔は打ち込まれない。僕らが心配しているのは、議論が尽くされずに安倍さんの案がすばらしいといって採決して通ってしまうことだ。国民に判断して頂くためには憲法審査会できちんと議論をしないといけないが、下村さんの発言があったりして、なかなか信頼関係ができていない。我々は国民投票法の対案を出して、審議しようと言っている。議論に入って審議を尽くさずに打ち切られたら国民は判断できない。今の政権下ではなかなか冷静な議論はできないし、自民党の方々もちゃんと物が言えるのかといったら言えないと思う」と主張した。
また、共産党副委員長の田村智子参議院議員は「足立さんが国民が憲法を決めると言ったのはその通りだ。そうであれば、国民の中で憲法変えてもらわないと困るという議論が起きているのか、という話だ」と指摘した。
改正憲法の2020年の施行を目指すためには、夏の参院選で維新を含む改憲勢力で発議に必要な3分の2以上の議席を確保する必要がある。しかし6年前の参院選では自民党が圧勝しているため、党内には"反動"による議席減を危惧する声も強く、選挙戦を有利に進めるための"衆参ダブル選挙"の可能性も取り沙汰されている。
また、秋の臨時国会で本格的な審議を始め、来年の通常国会で改憲案を発議。さらに60~180日以内に国民投票を行う必要があるため、安倍総理が目指す"2020年施行"は非常にタイトなスケジュールとなってきた。大連立が起死回生のウルトラCとなるのだろうか。
足立氏は「衆参ダブルであれ、参院選であれ、憲法改正は一つのテーマ。議論したらいい」、葉梨氏は「衆参ダブルがあるかどうかは、まさに"総理のみぞ知る"だ。憲法審査会がここまで動かない状況だということは皆さんも初めて知ったと思う。理由は安倍政権下では話ができないとか、2020年までと期限を区切ったからだとか、平和安全法制の説明がうまくいかないからだと言う。それが議論をしない理由に本当になるのか」と話していた。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)