中国、過度なネット規制の末路 専門家は“2022北京冬季五輪”で「羽生結弦選手の演技後」に注目
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 1989年6月4日、中国で軍による市民への武力行使が行われた天安門事件が起こった。改革派だった胡耀邦元総書記の死去をきっかけに民主化を求める学生らが天安門広場に集結したことを受け、中国政府は北京市内に戒厳令を発動。解放軍を投入してデモの鎮圧を強行した。中国政府はこのデモによる死者を319人と発表しているが、当時、現場で取材していたテレビ朝日コメンテーターの川村晃司氏は「私が現場で見ていた限りでも319人という数字は少なすぎる。自分の周辺だけでも100人近くの人が亡くなっていた。少なく見積もっても2000人程度の学生、あるいは市民が亡くなっている」と指摘している。

 あれから30年が経過した。中国外務省の陸慷報道局長は先月20日、「中国政府が現在までに把握している当時の死傷者数は?」という報道の問いに対して「今さらそんな質問をするのか。中国政府は1989年の政治事件についてとっくに結論を出しているので勉強して欲しい」と不快感を露わにした。共産党独裁という独自の政治体制を敷き、今日ではアメリカと肩を並べる経済大国に発展した中国は今、厳しい言論統制や関係者の逮捕などを通じて、天安門事件の記憶すら消し去ろうとしている。

 監視体制の強化は、北京市内の大学構内でも確認することができる。構内にある無数の防犯カメラは、政府批判や天安門事件に関する授業が行われていないか当局が監視するためのもので、現場を訪れたANNの取材クルーは“車を降りて数分”で私服警官に取り囲まれた。「誰にインタビューを?」「どんな形式で?」「内容は何か?」と矢継ぎ早に繰り出される質問に取材クルーは、それから1時間ほど現場を立ち去ることが許されなかった。

 その他にも、中国国内で温泉開発の調査を行っていた日本人が、スパイ容疑で中国当局に拘束され「中国の国家機密を摂取し、国外に違法に提供した」という罪で懲役15年に加え、個人財産没収の実刑判決が下された事例まで報告されている。

 8日にAbemaTV『Abema的ニュースショー』に出演した江沢民の取材を行ったこともあり中国事情に詳しい国際ジャーナリストの高橋浩祐氏は「憲法改正により、習近平による独裁体制を強化しており、個人の発言、言論の自由を締めつけている。その一方、市民は『自由ではない』ことに慣れているため、『生活が豊かであればいい』という満足感すらある」と中国国内の世論について説明すると、日本では許されても、中国では許されないという、“意外と知られていない”中国国内のNG規制について解説を行った。

■2022年の北京冬季五輪、羽生結弦の演技後に何が起こる?

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 中国国内においてGoogle、Twitter、Instagram、Facebookなど欧米企業が提供するSNSが使用できないことは広く知られている。月額およそ1000円のVPN(ヴァーチャル・プライベート・ネットワーク)を利用することでアクセスは可能だったが、最近になりVPNもアクセスの制限対象になり始めている。ウォールストリートジャーナルの北京支局では、VPNに頼らない独自のネットワークを構築するなどの対策を講じているという。

 またネットワークはもちろん、検索キーワードに関しても規制は及んでおり、天安門事件が発生した6月4日を想起させる「64」が規制対象となることはもちろん、「65-1」「63+1」などもブロックされる。同事件を指す隠語として使われた、本来は「今日、本日」などの意味を持つ中国語「今天(ジンテンと発音)」も同様だ。さらに中国共産党に対する民主化運動や人権活動でノーベル平和賞を受賞するも当局による身柄拘束時に獄中死を遂げた劉暁波さんに至っては、ノーベル賞授賞式を欠席時に本来座るはずであった椅子が“空席状態”で映像に写し出されたことを受け、中国国内のネットでは“誰も座っていない椅子”も検索制限対象となっているらしい。

「ディズニー」という単語も、「くまのプーさん」が、その容姿が熊に似ているとされる習近平の見た目を茶化す可能性があるため検索禁止になっている。こうして違反などで閲覧禁止になったウェブサイトは、今年の上半期だけでおよそ3000を数えるという。

 「そこで一つ気になることが……」と高橋氏が言及したのは、2022年に北京で行われる冬季オリンピック。日本はもちろん、世界のフィギュアファンから愛されている羽生結弦選手の演技終了後には、リンク上に無数の“くまのプーさん”がファンによって投げ入れられることが恒例となっており、北京冬季オリンピックも例外ではないと予想される。

 過去に中国で放送されたフィギュア中継のケースでは、“遠めの映像”処理が奏功して「黄色い“何か”が大量に放り込まれており、リンクが黄色くなっている」といった程度だったが、その様子を面白がった視聴者によって、拡散された経緯もある。

 行き過ぎたネット規制がどのような結末を生むのか。羽生結弦選手の演技や当局の対応とともに注目だ。

(C)AbemaTV

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