こんにちは、青木真也です。
先日、6月15日に中国・上海で開催されたONE Championship「ONE: LEGENDARY QUEST」。その解説をAbemaTVで担当しました。その中でも、「秋山成勲vsアギラン・タニ」の一戦について感じたことを。
秋山成勲、43歳。
僕と秋山選手は2008年に僕が対戦要求をしたことで、会っても挨拶をするものの微妙な空気が流れる関係性です。その当時を知るファンにとっては「青木真也が秋山成勲の解説をする」ことに興味が湧くだろうし、僕自身も「どうやって喋るんだろう」と興味がありました。
試合に関しては4年ぶりの試合、さらに43歳の格闘技選手として、“作り込んでこれるのか”が気になっていました。僕は“とりあえずの金稼ぎ”で試合をする選手を嫌うし、格闘技選手として認めなくなります。出来がどうこうでなく、必死で作ってきたかどうかは、同業者である僕にはすぐにわかります。
試合が始まると秋山選手の試合に賭ける思いがすぐに伝わりました。作ってきた。それも必死に。
年齢なのか、ブランクなのか距離感が最初は合わなかったり、昔だったら平気なレベルのダメージでも動きが分断され、自らの動きがぎこちなくなってきます。これは秋山選手と同学年の宇野薫選手のセコンドについたときにも同じことを感じたのですが、“年齢からくる衰え”はどんなに努力をしていてもやってくるのです。
23歳のフレッシュな若手選手の攻撃に必死に耐えて、勝機を伺います。1Rの相手のローブローによる休憩も時間いっぱい休憩をもらうし、2Rにリング外に出たときも少しでも時間をもらって、スタミナを回復させようとしているように見えました。
(試合直後、敗戦のショックから泣きじゃくる愛娘を抱き寄せる秋山)
あの秋山成勲がここまでして勝ちたい。勝敗を超えた試合なんてない。勝敗に徹底的にこだわるからこそ、観客が勝敗を超えて感動する。秋山成勲の徹底的に勝負にこだわる姿勢に僕は解説の仕事をほっぽり投げて解説席から応援していた。
「いけ! 秋山!」
「感情を揺さぶった幅がコンテンツの価値」だと友人のあるクリエイティブ・ディレクターが僕に言っていたけれども、まさにその通りの試合を秋山成勲はやってのけた。
秋山成勲は20歳下の若者に敗戦したが、秋山成勲のやってきたことは伝わった。
地位も名誉もカネもある43歳の成功者が闘う理由なんて「格闘技選手だから」以外にないだろう。彼は格闘技選手であったし、相手を選ばず、リスクを省みずに現実と闘った。彼は格闘技が好きなんだと思います。同じ格闘技選手としてそう感じました。
秋山は“いいヤツ”だな。過去に色々あって、未だに色々というヤツもいるけどさ。あの試合を見たら分かると思います。「いいヤツ」であるということが。もしも試合を見てなかったら、今からでも見てほしいのです。いいヤツだから。
オレたちはファミリーだ。また秋山成勲の試合が見たい。
◆文/青木真也(格闘家)
【見逃し視聴】
激闘! 魂のONEデビュー戦 「秋山 成勲 vs アギラン・タニ」前編