(一時帰国最終戦ではアジャとのタッグに嬉しそうな顔を見せた)
5月から6月にかけて、日本のインディーマットで“見もの”になっていたのが入江茂弘の存在だ。元DDTの入江は現在フリー。以前から頻繁に海外遠征を行なっており、昨年DDTを退団すると北米、ヨーロッパでの活動をより本格化させた。イギリスではサイスサイド・ヘビー級王座を獲得。ドイツwXwのトーナメントで優勝を果たしてもいる。
今回、日本に一時帰国した入江は、まず古巣のDDTにフリーの立場で参戦(5.28大阪大会)。初参戦のJ STAGE(6月3日、新木場1st RING)では大谷譲二、ガンバレ☆プロレス王子大会(6月16日)では岩崎孝樹を相手にサイスサイド王座の防衛に成功している。
大谷はプロレス界入りする前、入江のファンで「入江さんからチケットを買ってました」という。岩崎は同じDDTグループで「入江さんには昔からお世話になってきた」。そういう選手との感慨深いタイトルマッチが実現したのも、フリーだからこそだろう。
(DDT時代のタッグパートナー、親友でもある石井慧介ともタッグで対戦。死角から飛び込む「交通事故タックル」を決めた)
入場曲は以前と同じ、筋肉少女帯から贈られた「T-2(タチムカウver.2)」。体ごと叩き込むビーストボンバー(ラリアット)をはじめとするパワフルなファイトも変わらない。ただ、ロープにもたれた反動を使ってのボディプレスなど技が増えているのも印象的だった。トペ・スイシーダから客席の相手めがけて放つセントーンという連続攻撃も。
入江が見せたのは序盤戦から観客にインパクトを与える闘いだ。以前と比べて変化したところはどこかと入江に聞くと、こう答えてくれた。
「自分のことを誰も知らないような場所で試合をしてきたので、ハートは強くなりましたね。日本のリングはお客さんが僕のことを知っててくれるので嬉しいです(笑)」
(J STAGEでの大谷戦で王座防衛に成功。試合後は両者とも感慨深げな表情を見せた)
ただ勝つだけではなく、観客を沸かせなければ次のオファーはない。入江はフリーレスラーとして、そういう環境で闘ってきた。入江が今回、日本のインディー戦線で見せたのは、いわば“世界各国のリングで生き残ってきた人間のプロレス”ではないか。
日本最終戦、6月17日のチェリー15周年記念興行(新木場)ではアジャ・コングとタッグを結成。対戦相手は親友・石井慧介と米山香織のコンビだった。その翌日にヨーロッパへと戻っていったが、6月20日のOWE新宿FACE大会では、映像でCIMA率いる人気ユニット「#STRONGHEARTS」加入が発表された。
CIMAたちと入江の出会いはヨーロッパでの試合。彼らの動きは、アメリカでの「ALL IN」開催からAEW旗揚げ、イギリスでの高いプロレス熱といった“プロレス世界地図”に連なるものだ。マット界でもとりわけ現代性のあるレスラーと言っていい入江は、日本の小規模な興行に“世界の風”を吹き込んだのである。
文・橋本宗洋