憲法改正の問題について、20日放送のAbemaTV『NewsBAR橋下』に出演した橋下徹氏とゲストの田原総一朗氏が語り合った。田原氏は安倍総理に憲法改正の意欲がないと指摘、橋下氏は衆参ダブル選挙で本気を示すべきだとの見方を示した。
田原:安倍さんは憲法改正と言っているけれど、彼にはできないと思う。
橋下:今回の参院選で勝って3分の2を取ったら、憲法調査会を動かしたらいいと思う。
田原:実は安倍さんは、本音では憲法改正する気がない。
橋下:そうなんですか?
田原:もっと言えば、2014年、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をした後の衆院選で自民党と公明党は3分の2を取った。僕が「いよいよ安倍さん、憲法改正だね」と言った。そしたら安倍さんは「田原さん、大きな声じゃ言えないんだけど、憲法改正する必要は全くない」と言った。
橋下:ホントですか、それ(笑)。
田原:集団的自衛権の行使容認が決まるまでは、アメリカが「このままじゃ日米同盟は維持できない、とんでもない」とやいのやいのうるさかった。それが満足して何も言ってこなくなったから。
橋下:9条の改正は必要なくなったと思っているかもしれないが、その前段階のところで、憲法改正そのものにはチャレンジしたいという思いはあると思う。
田原:ない。憲法9条には1項にも2項にも手を付けず、自衛隊を明記するということに対しても、「そんなのインチキだ」と言った。そうしたら「しかし1項2項に手を付けたら公明党が賛成しない。これしかないんだ」と。
橋下:現実的に、いきなり1項2項が無理なのはわかるので、それは将来世代に送りながらも憲法改正に取り組む、その姿を国民に一回見せるということでは…。
田原:安倍さんが言っているのはインチキだから。なんでそれに維新が賛成するのか。
橋下:僕がまとめたものが今も日本維新の会の改正案として使われているが、まずは憲法裁判所を整備しましょうと。集団的自衛権の議論のときに違憲か合憲かで大騒ぎになって、元内閣法制局長官が違憲だと言ったと朝日新聞や毎日新聞が言っていたけれど、彼らはいち学者や現役ではない法制局長官であって、違憲か合憲かを決める人ではない。だから憲法裁判所を作りましょうと。そして道州制。特に僕が打ち出したかったのは教育の無償化。
田原:でも、安倍さんは集団的自衛権の行使を容認するために、反対だった内閣法制局長官を変えた。
橋下:人事権は安倍さんにあるから、組織として変えるのは当たり前。しかも内閣法制局は合憲か違憲かを最終的に決めるところではない。
いろんな解釈があると思うけれど、戦後すぐの日本の政治家たちには戦略があったなと思う。吉田茂などがすごかったのは、一番お金がかかって、若い兵士の命も犠牲にしなければならない安全保障の分野はアメリカに任せて、経済の分野に力を入れたこと。そのおかげで、焼け野原から30年くらいでオリンピックまでやったんだから。例えば平成元年に焼け野原だったとして、今年オリンピックや万博をやるようなもの。このすさまじい回復力。それは安全保障をアメリカに預けた、"腹黒"があった。でも時代が変わって、日本もいよいよ自分たちで安全保障をやらないといけなくなったのに、自衛隊はだめ、軍事力はだめと、吉田茂の時代のようなことを一部の野党は言い続けている。今の政治家はもっと腹黒くないといけないと思う。もう、良い子ちゃんぶった政治家はダメだと。
田原:自民党の歴代総理大臣は、日本人が主体性を持つのに否定的だった。主体性はアメリカが持っているからいい、アメリカに従属しているのが安全だと思っていた。でも、やっぱりここまで来ると日本人が主体性を持たなきゃいけない。
橋下:やっぱり政治家が価値観を示し、国民に説いて、付いて来てもらわないと。そういう若い世代はいないんですか。野党にもそういうグループが出てきて、価値観をぶつけあって切磋琢磨してもらいたい。
田原:安倍は"つなぎ役"だと。小泉進次郎や福田達夫、村井英樹、小林史明たちは考えているけどね。日本人の設計図は今まで20年学び、40年働き、15年年金で良かった。でも100まで生きるならそうじゃない、どうするんだと。この人生の設計図も根本から変えないといけない。今は改正反対派の立憲民主党の枝野だって、2012年には憲法改正すべきだという文章を書いている。
橋下:やっぱり自国の安全保障をどこまでやるかということについて、与野党で議論しないといけないんだけど、野党は反対ばっかりだから。
田原:国民民主は参加してもいいと言っているが、立憲は断っている。
橋下:だから影響力のある田原さんにぜひ言ってもらいたいのは、憲法改正の国民投票を一度やらないといけないということ。日本国憲法って、当時の衆議院と貴族院で決めただけで、国民投票にかけていないんだから。安倍さんが本気でやろうと思えばできる。
田原:だから、全くやる気がない。実は自民党の憲法改正の責任者に「このままだと自民党は改正できないぞ、もし本気なら、全議員が選挙区に帰って、この国がこうなる、生活がこうになると、説得すべきだ」と言った。「でも、僕が見る限り、ほとんどの議員は議論から逃げている。それで国民が賛成するわけがないじゃないか」と向こうは全然返事ができなかった。「僕は護憲派ではないし、自民党が本気で改正する気があるならサポートしてもいい、言ってこい」とも言った。全く言ってこないね。
橋下:もし憲法改正やるんだったら、衆参ダブル選挙にして、ある意味一か八かの勝負をやって民意を引きつけ、そして憲法調査会を動かさないといけないと思う。でも安倍さんたちは"大人の政治"をやっているから、そんなことやらない。僕はそうやって、住民投票で負けた。
田原:安倍さんは選挙になると経済しか言わない。2014年の時も、集団的自衛権のことを言わなかった。
橋下:それが腹黒政治。僕はバカ正直に言って負けちゃったから。良いか悪いかはべつとして、そこが安倍さんの大人の政治で、選挙に勝たないことには政治はできないから。ただ、2000万円の報告書の問題は腹黒すぎる、ちょっとやりすぎだと思う。
田原:あれは腹黒いとかじゃなく、バカだね。(AbemaTV/『NewsBAR橋下』より)