映像化不可能といわれた平山夢明の小説が蜷川実花によって映画化。『Diner ダイナー』として7月5日(金)より公開される。藤原竜也演じる主人公・天才シェフのボンベロをはじめ、登場人物はほぼ“殺し屋”。正義やモラルが通用しない狂った殺し屋たちの中でも強烈な個性を放つのは、本郷奏多演じる全身整形とホルモン注射で子供の姿に自身を変えた殺し屋・キッドだ。本郷奏多はこの個性的な役にどのように挑んだのか。話を聞いてきた。
顔は本郷奏多で体は子供 “キッド”の撮影方法は?
ーーキッド役のオファーが来たときはどのように感じましたか?
キャラクターがすごく面白いと思いました。最初「見た目は子供の役で…」と言われて、どういうこと?と思いましたが、よく聞いたら「殺しをやるにあたって子供の見た目の方が便利だから、全身整形をしてその姿を維持している」ということでした。めちゃくちゃ魅力的なキャラクターだなと思いましたし、実際どんな風にできあがるか興味が湧きました。蜷川実花さんとはご一緒したことがなかったのですが、いつかお仕事をさせて頂きたい監督さんだったのでそこも楽しみでした。
ーー実際に演じてみられてどうでした?
僕が膝立ちでお芝居をするというときもありましたし、現場に小学4、5年生くらいの男の子がキッドの格好をしていて、その子に動いてもらって、首から上だけ僕の頭をはめているというのもありました。いろんな方法を使って撮影したので、撮影中は出来上がりを全く想像できませんでしたが、皆さんを信じてやっていました。その男の子と一緒に作り上げたなという感じです。
ーーではその子とコミュニケーションをとりながら?
仲良くなりました!お芝居をしたことがないという子でしたが、素直で礼儀正しく、何よりもアクションがすごく得意な子で、自分が伝えたこと以上に素敵な動きをしてくれました。
子供なので照れがあったようです。ちょっとぎこちなかったりするところもあったのですが、言葉だけで伝えるのは難しいので、途中から監督とも話し合いました。最終的にしっくりきたやり方が、僕がカメラの外側で声だけお芝居をして、それに合わせて動くという形です。そうするとテンションが上がって楽しく演じていました。やってみないとわからない事ばかりの現場だったので、楽しかったです。
念願叶った藤原竜也&窪田正孝との共演
ーー藤原竜也さんと玉城ティナさんと共演するシーンが多かったと思います。お二人はいかがでしたか?
藤原さんは今まで一度もご一緒したことがなかったのですが、出演された作品は全部見ているくらい好きな俳優さんで、今回、藤原さんが主演と聞いたのも出演を決めた一つの理由でした。藤原さんはすごくクリエイティブな方で、監督やスタッフの方と一緒に「このシーンどうしようか」とよくディスカッションをしていたのが印象的でした。すごく素敵な姿を見させていただきました。 玉城さんはカナコというキャラクターに合っていて、いじめられている姿が似合うというか、怯えた表情も素敵で、輝かしいものを持ってらっしゃる女優さんという印象を持ちました。
ーーセットや小道具も面白かったですよね。
初めてセットに入ったときは感動し、まるで遊園地に来たような感覚でした。大きいスタジオ内にメインのホールと、それぞれキャラクターの個室も用意されていていました。どこも細かく色鮮やかに作られていて刺激的なセットでした。また劇中の食べ物も見たことないような色彩で面白かったですね。
ーー本郷さんは「ハンバーグが苦手」とバラエティでおっしゃっていましたけど、劇中に出てくるハンバーガーはいかがですか?
あの真っ黒なバンズのハンバーガーは気になります(笑)。どんな味がするか一度食べてみたいです。美味しそうと思う心はありますね。(笑)
ーーやっていて楽しかったシーンは?
ボンベロに「そいつの死体の処理はお前がやっとけ!」って言われて、そのあと「やったー!」って喜んで一人ではさみをいじってはしゃぐシーンがあるのですが、セリフとかもなくて「好きなようにやって」って言われて、「どうしたらいいんだろう」と思いましたが、本番になると無限にフレーズが湧いてきて、自分の中に眠るサイコな部分が垣間見えて怖かったです(笑)。
ーーそのほか、本郷さんオススメのシーンはありますか?
僕、窪田正孝さんも大好きなんです。実はお会いしてみたかった役者さんが2人いて、それが藤原竜也さんと窪田正孝さんだったので、それが一度に叶ってうれしかったです。窪田さんが演じた「スキン」のビジュアルがめちゃくちゃカッコ良く、さらにファンになってしまいました。スキンがプチンと切れて暴走するシーンがおすすめです!
悪役続く本郷奏多 やられるときは「100%全力で
ーー原作モノということで、意識したことはありますか?
この映画に関しては蜷川さんの世界観にシフトしていった方がいいかなと思いました。ボンベロももっとクールなキャラクターだと思いますが、藤原さんの考えで藤原さんのボンベロを作っていっていたと思います。なので、自分も今回に関しましてはそういう方向性にしました。
ーー『キングダム』の成蟜と今回のキッド、印象的な悪役が続いていますが、今後やってみたい悪役はありますか?
悪役ってやるのが楽しくて、バランスをあまり考えずに振り切ってやれるのが好きですね。僕はどんな役をやらせていただいても、戦闘能力が著しく低いんです。今回に関してもそんなに強くないですし……強い敵とかやってみたいです(笑)。
ーーやられっぷりに美学のようなものはありますか?
『キングダム』でもそうですけど、自分(悪役)がやられるシーンには倒す方がかっこよく見えなければいけないという役割があると思うんです。なので、より情けなくというか、しっかりやられた方がいいと思っています。作品全体を考えるとそういう意味があると思うので、100%全力でやられています。
ーー演じるときに自分らしさというようなものは意識しますか?
今回は少し異例でしたが、特に原作モノでしたら、そのイメージ通り演じることを心がけています。あまり自分を出すということは考えたことはないです。
ーー役者としてのご自身の強みはどういうところだと思いますか?
バランス力かなと思います。器用貧乏なタイプで、現場でも常にバランスを考えてやっています。意見を言うタイプの役者さんだったら「この台本のこのセリフは引っかかるんだろうな…」と思ったりしますが、揉めるくらいだったら「僕が代わりに言います」とか思ってしまいます(笑)。皆さんが良きように。誰か機嫌が悪い方がいたら潤滑油になりたいですし。とにかく自分が早く帰りたいっていうのもあるんですけど(笑)。
ーー楽しいお話ありがとうございました!
テキスト:堤茜子
写真:You Ishii