チームエンブレム。そこには誇り、絆、プライドなど様々な思いが込められている。それだけ大事にしているものだからこそ、クラブの創設時から大きく変わることはない。
しかし例外もあり、最近ではセリエAのユヴェントスが2017年に「ユヴェントスの未来を指し示すため」新たなエンブレムを採用した。ところがこの変更はオールドファンから批判が集中。受け入れられるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。
逆に、一度変更したエンブレムを戻したことで、チーム、サポーターの一体感が増したチームがある。それが湘南ベルマーレフットサルクラブだ。
オールベルマーレで臨む大事なシーズン
Fリーグが開幕した2007年にサッカーの湘南ベルマーレと同じエンブレムをつけて戦っていたフットサルクラブ。しかしJリーグ側から共通のエンブレム使用を禁止されてしまったことで、2年目からはオリジナルのエンブレムで戦うことになった。
当時は現役でプレーしていた奥村敬人監督は、「正直に言って『なんでだよ』って気持ちが強かったです。ベルマーレというクラブを考えるとあれ(サッカークラブがつけているエンブレム)こそが本当のエンブレムです」と悔しい思いをした。
幼い頃からサッカーチームのサポーターとして、ベンチ裏で選手たちにチャントを歌い続けてきたフットサルクラブの鍛代元気は「フットサルクラブのエンブレムもこの10年間で築き上げてきたものがある」という。しかしサッカークラブがつける「あのエンブレムこそがベルマーレ」という思いは消えなかった。
そんな中、今シーズンから湘南ベルマーレはサッカー、フットサルだけでなく、ビーチバレー、トライアスロン、サイクリング、ラグビーセブンズなど様々なチームのエンブレムを統一することを発表。フットサルクラブとしては、12年ぶりに“本来”のエンブレムに戻ることとなった。
今季からフットサルクラブでキャプテンを任された鍛代は湘南ベルマーレ全体で大事なシーズンになると考える。
「(エンブレムが戻ったことは)ポジティブな意味で言葉にするのが難しい感情。そういった“オールベルマーレ”となった大事なシーズンに、自分がキャプテンを任され、とても大きなチャレンジになる。あのエンブレムはサッカークラブが何十年とかけて築いてきた歴史があって、それをまた背負って戦えるという意味で大事なシーズンです」
そうした大事なシーズンに向けて、フットサルクラブはヴォスクオーレ仙台を退団したブラジル人FPマルロンを獲得。これまで1対1の局面で力を発揮する選手が多かったチームに、守備で体を張れて、バランスを取れて、ボールをさばけるチームの歯車となるマルロンという新たなピースを埋め込んだ。
大きな期待を背負って迎えたシーズンだが、ここまでは苦しい戦いが続く。エースのロドリゴ、キャプテンの鍛代、サッカーのU-16日本代表候補の経験がある期待の若手・高橋広大らが次々に負傷離脱。開幕から3試合未勝利と大きくつまづいた。
それでもチームに悲壮感はなく、鍛代が負傷離脱中に腕章を巻いた日本代表FP植松晃都は「まだまだこれから。今は苦しい状況でもきっと良くなる」と結果は出ないながらもチームの戦い振りに手応えを感じていた。実際に、負傷者が戻ってきた第4節のバルドラール浦安戦で今季初勝利を飾る。奥村監督は「ここからが本当のスタート」というように、続く仙台戦はリードしては追いつかれる苦しい展開ながらも勝ち切るなど勝負強さも出てきた。
状態が上がってきた中で迎える名古屋セントラル。現在首位に立つバサジィ大分、“境川決戦”と呼ばれるFリーグ界で大きな注目を集めるペスカドーラ町田とのダービーマッチなど、この2連戦は間違いなく前半戦の山場となるだろう。
サッカークラブは現在J1リーグで15位と残留争いを強いられている。ベルマーレファミリーとしてフットサルクラブから湘南ベルマーレを盛り上げていきたい。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
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