
(前哨戦で宮原を下したが、それでもなお警戒すると語ったヨシタツ)
“令和のエース”を名乗る全日本プロレスの三冠ヘビー級王者・宮原健斗が6月30日の後楽園ホール大会で防衛戦を行なう。挑戦者は、フリーとして全日本マットを主戦場にしているヨシタツだ。ヨシタツは新日本プロレスでキャリアをスタートし、WWEで活動していた時代も。そこから新日本復帰を経て、現在は全日本に定着している。
こう書くと華麗なキャリアだが、実際は苦闘の連続でもあった。帰国後に首の負傷で長期欠場。全日本でも、なかなか観客に受け入れられなかった。最初の三冠挑戦も、大きなインパクトを残せていない。試合ぶりもマイクアピールも独特のリズムとクセがあるヨシタツ。しかし宮原との「ヨシケン」タッグでの世界最強タッグ決定リーグ戦出場などを経て、その独特さが“クセになる味”になってきた。
「宮原政権はマンネリ。俺が新しい風を吹き込む」というヨシタツはGAORA TVチャンピオンシップ、コロナ・プレミア・インターコンチネンタルと2つのベルトを巻いており、三冠戦に勝てばシングル五冠の偉業達成となる。ヨシタツ曰く「アイム・ヒストリーメイカー」。このワードセンスが、つまりヨシタツだ。

(全日本の新たな“顔”として確実にファン層を拡大している宮原。たっぷり時間をかけた入場も見どころ)
宮原は今回が5度目の防衛戦。これまで4回、戴冠しており、三冠=宮原というイメージも強くなってきた。今年の春はシングルリーグ戦チャンピオン・カーニバルにも優勝。前回の防衛戦では石川修司を下している。ジェイク・リー、野村直矢といった若い世代の台頭を喜びつつ「彼らは新時代。俺は宮原時代」と差別化する宮原。高みに達したがゆえに、他の選手とは気持ちを共有せず、日々「プロレスの神様」と対話しているという。“老舗復興”の立役者もまた、独自の世界の持ち主なのだ。
誰にも似ていないからこそ、宮原は強い。しかし宮原に劣らぬ“クセ”がヨシタツにはある。ヨシタツは後楽園での前哨戦でレフェリーストップ勝利を収めてもいる。数々の強豪相手に防衛してきた王者にとって、今回の防衛戦は“鬼門”になるかもしれない。
文・橋本宗洋
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